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 予約しておいた本が取り寄せられたとの連絡を受け、池袋へ行くために上着を羽織りポケットに財布を突っ込んで玄関へ向かう。途中風介にどこか行くのかと聞かれたので池袋とだけ答えておいた。
 玄関でお気に入りのブーツを穿いていると隣にジャケットを着込んだ風介がいて。どこかへ行くのか尋ねたら私について行くとのこと。

「予約してた本取りに行くだけだよ」
「ついでにデートだ」

 最近一緒にお出かけとかしてなかったからついででもデートができるのは嬉しい。むしろ私の本をついでにしてメインをデートにしてしまおうと勝手に考えて風介と手をつないで園を出る。
 電車に揺られて着いた池袋は相変わらず人がゴミのようにごった返している。逸れないよう手の力を強めて目的の本屋へと急いだ。

 無事に本を購入出来た私たちは残りの時間をデートに当てることにした。どうせデートするなら池袋じゃない所に行きたい、ここは何かと危険だ。

「名前、池袋から離れよう」
「うん。ここにいたら面倒なことになりそうだし」

 風介も私もあいつに会いたくないから池袋駅へと急ごうすれば私たちの肩を誰かが掴む。誰かなんて分かりきっている。

「やあ、ガゼルくんにナマエちゃんじゃないか」
「……その名前で呼ぶの止めてください」
「名前そんな奴相手にするな、行こう」

 ファーコートを着込んで胡散臭い笑顔を浮かべる男、この折原臨也という情報屋はどうも苦手だ。
 私たちの情報をどこから仕入れたのか。エイリア時代の名前で私たちを呼んでいるこの男と出会ったのは例のチャットだった。
 最初は興味本位で入ったチャットだったのだがエイリアネームをハンドルネームにしたのが間違いだったらしい。いつものように池袋へデートに来た私たちの前に現れたのがこの男だったのだ。
 そのときもこんな感じで絡まれてエイリア時代のことを根掘り葉掘りつつかれ、嫌気が差してきたころに静雄さんが助けてくれたのだ。

 私の手を掴んで駅へと急ぐ風介に歩幅を合わせて、二人で折原を無視するのだが勧誘の如くしつこい。さすがの風介もいらいらしているようで空いた手で髪の毛を力強く梳いた。

「風介髪の毛ひっぱったら駄目だよ」
「そうだよガゼルくん。その若さで禿げちゃうよ?」
「……貴様は何がしたいんだ」
「俺? 俺はただリア充を冷やかしにきただけだよ」

 相変わらず気持ちの悪い笑みを浮かべている折原の顔面を蹴り飛ばそうと風介が足を振り上げるも寸でのところで避けられてしまう。
 とうとう堪忍袋の緒が切れた風介は折原を睨みつける。放って置こうと風介に言っても怒りで聞こえていない様子。だめだこりゃ。
 というかこの男もただの冷やかしなんかで毎回毎回私たちの邪魔をするはずがない。本当に何がしたいんだ。

 私がため息をつくのとほぼ同時、自動販売機が真横に飛んできてうざったらしい男を吹き飛ばしてくれた。
 自販機の飛んできた方へと視線をずらせばバーテン服を着た金髪のお兄さん、平和島静雄さんがこめかみに青筋を浮かべて立っていた。

「いっざやくーん。何で池袋にいるのかな、ああ?」
「あ、静雄さん」
「助かりました」
「おお、風介に名前じゃねえか」
「ええ、名前とデートのために池袋に立ち寄ったらこの害虫が煩くて困っていたんです」
「あーっと、デートだったのか。邪魔したな」

 いえ、と返事をしたところで折原が立ち上がって静雄さんに文句を言ったのでまたもやケンカ勃発。初めて会ったときに静雄さんはケンカが好きじゃないと言っていたのに折原との場合は本気だ。静雄さんも本当に折原が嫌いなんだろう。
 風介が私の手を引っ張ってこの隙に行こうと言ってきたので二人で静雄さんに挨拶をして池袋駅の中へ急いだ。



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