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- ナノ -

 何故か俺はプロデューサーとしてアイドルをプロデュースすることになってもうて、なんやかんや今ではBランクアイドルにまで上り詰めていた。
 そんで今日は彼女のセカンドアルバムに書き下ろしで収録する曲を作ることになったのだが作曲が趣味だった俺に丸々一曲を任せるという、何ともいい加減な話。
 まあレコード会社の奴らも素人が作曲するゆうてそんな期待しとらんやろうから、本気見せて度肝抜かしたる。せやから全力出して良い曲作らなあかん。
 名前は歌唱力もあるのでチャレンジを兼ねて今までとは違った感じの曲を歌わせたいと曲の構想まで練ってはみたが、やっぱりアルバムのテーマに乗っ取った感じの曲にした方がええんかな。
 俺がいくら悩んだところで結局歌うんは名前やし本人に直接聞いた方が手っ取り早いゆうことで目の前で台本を読んでいる名前にどっちがええのか尋ねてみた。

「うーん。どっちでもいいや」
「何やそれ」

 台本に集中しているのもあってか、あまりにも名前らしい言葉に思わず笑けた。
 結局テーマに沿っている方をアルバムに入れ、違うジャンルの曲はシングルとして新たに売り出そうという守銭奴結論に落ち着いた。
 勝手に新しいシングルを作ることを決めてしまったがまあ何とかなるやろ。

「ほんなら先にアルバムに入れる曲作るから、歌詞考えるんは名前の仕事な」
「りょーかい」

 気の抜けた炭酸飲料みたいな返事。ほんまに分かっとるんかこいつは。
 俺が疑いの眼差しで見とるのが分かったのか名前は台本を閉じてカバンを漁り始め、一冊のノートを取り出した。
 このノートは名前がお仕事ノートと称している仕事関係の事柄なんかを書いとるやつや。
 収録で起きたことやどのトーク番組で何の話をしたかとか、この日は何をしてどう感じたなんかを書いてるっていつか聞いたのを覚えてる。まあ日記みたいなもんやな。

「何書いてん?」
「歌詞」

 すらすらとペンを動かす名前を見て作詞の方は大丈夫やなと、一息着きたいのは山々だが音無さんのとこに行かなあかんのを思い出した。

 数十分ほど音無さんと今後のスケジュール確認をして名前のとこに戻れば先程まで自身が座っていたソファーで今度はぐっすり夢の中やった。
 最近忙しいかったから今くらいは寝かせたろ思って星井が忘れていったブランケットを掛けてやる。まあ無いよりましやろ。
 さっきまで座っとった場所に腰を下ろし、テーブルの上に視線を移す。お仕事ノートが開いた状態で置いてあった。
 ノートを手に取り、作詞の状況を確かめてみると順調に進んどるようで、大体のテーマが伺えた。

 いつも側にいるのに私の恋心に気づいてくれない君、的な可愛らしい恋の詩が綴られている。
 名前や俺らくらいの年齢層には共感しやすい良い歌詞やな。特に最近の俺はすごく共感できる。
 ノートから視線を外しすやすやと眠る名前を見やる。俺の気持ちも知らんと安心しきった顔で寝よってからに。
 ふう、雑念を払うために深呼吸をして再び視線をノートに戻すと、ノートの隅に書かれたひらがなに気づいた。

『ひかるくんのどんかん』

 俺は見てはいけないものを見てしまったのだと悟った。焦る気持ちを無理やり落ち着かせ俺が見たとバレないようそっとノートを元通りに置く。
 今俺どんな顔してんねやろ、絶対テニス部の人らには見られたないわ。緩んだ口元と赤い顔を誤魔化すように宙を仰いだ。

 まあ事務所に帰ってきた双子がノートを見つけて、名前と俺の想い人が明らかになるのは、また別の話。

(早く気付いてこの恋心に)



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