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 名前さんとデートがしたくて明日どこかへ行かないかと誘ってみれば見事に断られてしまった。心をえぐられながら理由を尋ねれば弟の試合を見に行くとかなんだか。
 彼氏なのにまだ会ったことの無い弟くんに負けてしまったという事実に打ちのめされていて詳しいことは聞けていなかったが名前さんの次の言葉に俺は気合を入れ直さざるを得なかった。

「そうだ、秀くんも来る?」
「行く。超行く!」

 放課後にマックでお喋りとかそんなんばっかりで実質デートらしいデートは数回しかしたことが無かったのでスポーツ観戦はれっきとしたデートなのでは、とその日は終始テンションが高かった。高すぎてみんなに五月蝿いと怒られたくらいだ。

 次の日、スポーツ観戦であまり浮かないようなでもおしゃれな服を選んで待ち合わせ場所に行けば少し遅れて名前さんが到着する。
 長すぎず短すぎない絶妙な丈のスカートにそれにぴったりなトップ、頭には帽子とスポーツ観戦デートには良い感じの服装だった、何より超絶可愛い。
 今日の試合は弟くんの通っている学校とは別の学校で行われるらしく手を繋いでその中学校までの道のりを歩く。
 その間名前さんに色々なことを聞いた。今日観に行く試合は中学サッカーで、名前さんの弟はサッカーでは結構有名な学校に通っているらしい。
 それと名前さんと同じく弟も銀髪のようだ。結構銀髪は珍しくて俺たちの仲間内でも重宝されている、戦隊物ごっこをするときなんかも片桐シルバーなんて言って結構ノリノリだったりする。
 緑と銀色が仲良く歩いていると試合の行われる中学校に到着した。雷門中学校って確か中学サッカーの大会で優勝したところじゃなかったっけ、そんなところと試合をするくらいだから弟くんの学校も相当強いのだろう。
 生憎ここには観客席なんてものが存在しないようで芝生に名前さんが持ってきたレジャーシートを敷いて座り込んだ。保護者やら他校の生徒やらと先客も結構な人数が揃っている。

『これより雷門中と帝国学園の試合を始めます!』

 角刈りの男の子の実況で試合が始まり名前さんも試合を夢中で見て、たまに今の何々がすごいだとか素人の俺にも分かりやすく説明してくれた。サッカーの試合を間近で見るのは初めてだったが結構楽しめた。
 そう言えば名前さんの弟くんが何番か聞き忘れていたがそんな心配は杞憂だった。グラウンドを必死に駆ける銀色は一人しかいなかったのだから。
 名前さんと同じ綺麗な銀髪を揺らしている男の子は10番のユニフォーム着ていてそれがエースナンバーだと教えてもらった。弟くんが凄い選手だということは分かったがなぜ右目に眼帯をつけているのかは不明だった、最近の中学生わかんないうら。

 ホイッスルと共に試合は終わりを告げ結果は僅差で帝国学園の勝利だった。各々が休憩を取っている中銀髪の弟くんだけがきょろきょろと誰かを探している、きっと名前さんを探しているのだろう。
 名前さんを見つけた弟くんが嬉しそうにこちらに向かってくる。初対面だと思うと柄にもなく少し緊張してしまう。

「姉さん来てくれたんだ! ってその人は……?」
「次郎お疲れさま」
「俺は名前さんの恋人の井浦秀です」
「姉さんの、恋人?」

 自分の姉に恋人がいたことを知らなかったらしく一瞬眼を丸くしたと思えばものすごい形相で睨まれる。どんだけシスコンなんだこの子は。
 ほら次郎も挨拶して、と名前さんに促され舌打ちを一つしてから渋々といった風に自己紹介をしてくれた。なんだか堀さんみたいな子だ。

「佐久間次郎です。俺認めませんから」

 休憩時間が決まっているからかそれだけ言い残して踵を返していった、名前さんは弟くんの態度が悪かったことを謝っていたが別に名前さんに非は無いので謝る必要はないと返した
 どうやらこのあとは合同練習に移るらしく観客たちもちまちまと帰っている。このままいても仕方ないので俺たちもどこかへ移動することにしてどこへ行くか話し合おうしていた時、携帯を取り出して名前さんが時間を確認して頬を染めながら口を開いた。

「ねえ秀くん、この後暇?」
「うん、超ひまだよ」
「だったらね。この後私の家、来る?」
「行く。何があっても行く」

 今まで俺の家でデートしたことはあっても名前さんの家に行くのは今日が初めてなので若干興奮する。聞けば今日親は帰ってこないらしいので夕飯も食べていって欲しいとのこと、そんなの食べるに決まってるっしょ。
 どきどきと鼓動を高めながら名前さんに見詰めれば俺と同じくらい顔が赤かった。そんな俺たちの様子を弟くんが恨めしそうに見ていることなんて露知らず名前さんの手を握って中学校を出た、手汗大丈夫かな。

 夕方ごろ名前さんをムード良くベッドに押し倒してこれはいける、と確信した瞬間に、まるで計ったかのように弟くんが帰宅してきたのはまた別の話。



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