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 料理も出来て勉強もそこそこできる上頼りがいも一応あり誠実で誰にでも優しいのが三国くんのスペックだ。これだけ聞けば優良旦那さんになること間違いなし世の女性憧れの男性像だが、私には不満だった。
 成績は私のほうが上だけど彼の家庭の事情上勉強できる時間が限られているので天秤にかけることは出来ないと考えていい。そうなると家事能力だ。
 主婦に成る身として家事能力では彼に勝っておきたい。幸い私は全ての家事を一通りこなすことは出来る。料理だって家族や友人にも絶賛されたくらいだけれど肝心なのは彼と彼のお義母様の口に合うかだ。
 天馬くんに聞いた情報によれば向こうはプリンまでも自作するレベルに達している。それならばと私はマカロンを作ってみた。本場の職人でも表面を滑らかに焼くのは難しいと言うので完璧に仕上がるまで数回作った。正直面倒だった。ついでにシュークリームも作ってみたが如何せん大量に出来上がってしまったため処理に困りサッカー部の奴らに食わせることにした。

 次の日の放課後三国君が委員会で部活に遅れるのを利用してサッカー部に遊びに行くことに、料理部部長の職権を乱用して使用した調理室の冷蔵庫からお菓子が入った包みを持ってミーティングルームへ行けばさすがと言うべきか天城くんが私が抱えているものを食べ物であると言い当てたのだ。まあ私がこの部に顔を出すときはたいていお菓子を差し入れるので当然と言えば当然かもしれない。
 肯定して包みを開ければ感嘆の声が上がる。若干失敗作とはいえ形はいいと思う。中でも結構上手に出来たと思えるものは率先してマネージャーの子達と音無先生にあげて、他のは部員と監督さんたちで分けてもらうことにした。

「それにしてもいいのか? こんなに大量の差し入れ」
「どうぞどうぞ。家族はもう食べ飽きているので」

 飽きるほどマカロンとシュークリームを作ったわけではないがほぼ毎日何かしらのお菓子を作っては家族に食べさせているので甘い物好きな一家とはいえ飽きてきているのでここで処理してもらえるとありがたい。
 監督さんではなくコーチさんが気にかけているところがなんだかこの部らしくて面白い。当の監督さんはシュークリームにかぶりついて、よく見れば剣城くんなんかも若干顔が綻んでいる。なんだか微笑ましいものを見た。

「あ、それここにいる人たちで全部分けちゃってください」
「えっ、でも三国さんの分は……?」
「三国くんの分はいいの」

 困惑する神童くんにすっぱり言い切ってやれば戸惑いながらも三国くんを除く人数分にきっちりと分けている。さすがキャプテンくん。
 音無先生が煎れてくれた紅茶を飲みながらまったりと談笑していたらミーティングルームの扉が開いて委員会で遅れていた三国くんが現れた。
 みんな三国くんの分まで食べてしまったと勘違いしているからかしどろもどろに弁解をしようと必死だ。その様子を遠巻きに見ながら私がくすくすと笑いはじめたのをみんなで注目する。
 皆の視線を受けながら三国くんを手招きし私のいるテーブルまで呼ぶ。素直に私の元に来た三国くんに別に用意しておいた二つの包みを手渡す。
 昨日作った中で一番上手く出来たやつだ。一つは今すぐ食べられるようにしたものともう一つはお持ち帰り出来るよう袋に入れた大きめの包み。

「三国くんの分はこれね。あとこっちは保冷剤が入ってるから帰ってからお義母様と食後にでも食べて」

 部活終わるまでは冷蔵庫に入れといたほうがいいかも、一気に言ってやれば呆気に取られてように口をぽかんと開いていたが数秒後にいつもの笑顔に戻った。

「ああ、いつもありがとな!」
「いえいえ」

「……何だ、お前ら付き合ってるのか!」
「か、監督!」

 空気を読めないのか読んでいないのか分からないが監督さんが口を開いた。別にデリカシーが無いとかそういうことは感じなかった。
 別に隠しているわけではないのでいつの間にか暗黙の了解みたいになっているのが分からない。だって事実だし。

「そうだ、今日は俺が夕飯当番なんだ。食べていかないか?」
「うん、行く」



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