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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▽元鬼殺隊士は無個性(kmt→mha)
※ただしフィジカルエリート

 風柱の継子だった女が最終戦で鬼舞辻に殺され転生したら超常世界(mha)だった。無個性だけど呼吸が使えるフィジカルエリートが雄英に入る。

「……なんて平和な世界」




 両親は“個性”を持っていない代わりにと、様々な習い事をさせた。もしかしたら“個性”が発現するかもしれないという希望を込めてのことだ。
 最初に古武術の道場に入って一ヶ月で師範を負かした時、ようやく“個性”が発現したのだと浮足立った両親に病院へ連れられて何度目か分からない無個性の診断結果を受け取り、次の習い事でも同じようなことになった。
 前世の時点で要領の良かった私は両親が勝手に決めた習い事を次々と熟していった。柔道は二週間、合気道は十二日、空手は十日、格闘技は一週間、居合と剣道は三日。大体そのくらいの期間で師範を超えてしまいもう教えることはないと免許皆伝を頂いてしまっていた。最後の二つに至っては久々に柄を握ったこともあって試しに風の呼吸の型を出してみたらあっさり使えてしまい道場を壊しかけた。
 が、やはり無個性であることに変わりはなく、両親にとっては、というよりこの世界においては“運動能力や学力”よりも“個性”の有無の方が重要らしい。例え役に立たないようなものであっても“個性”であればそれだけで人として一つ上の階級であると言わんばかりだった。
 金に物を言わせて個性因子の有無を見抜く“個性”を持つ人を探し出し、今度こそ正真正銘の無個性であることを明かされた両親の仲は次第に険悪になっていき、私は習い事を全て辞めた。
 ある日両親はどこから聞きつけたのか“個性”を与える者がいるという噂を信じてその人物を躍起になって探し始めたのだ。いつの間にか両親は世間体を酷く気にする人になってしまっていた。否、最初から彼らは世間体しか見ていなかった。

 前世の、鬼に殺されてしまった両親が恋しいと何度思ったか。生まれ変わった今度こそ家族と穏やかに暮らしていけたらと願って、鬼のいない世に生まれたというのに。

「私は“個性”が欲しいなんて一言も言ってない」

「“個性”でしか人を見れない人間に成り下がってしまうのなら“個性”なんて必要ない」




「ヒーローの資質って“個性”の強弱で決まるもの?」


「“個性”を持ってないのに“個性”の使用許可取りに行く必要ないのでは?」
「一理あるな……」




『弟子の癖に師範を庇ってんじゃねェ……!』

 体が動いてしまっていたのだから仕方ないでしょう。でも、護りたがっていた弟さんが無事で良かった。

『ちゃんと……仲直り……しな、さい……よ……』

 不器用な兄弟だった。
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