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▽イタチ憑き主(フルバ)
 デフォ名:草摩さく

 十二支の物語で十三番目に到着したイタチの物の怪憑きの女の子。故に毎月一日には本家へ赴き慊人へ感謝の意を延べることを強要されている。
 髪の色は薄い茶髪で瞳も同色。全てを諦めた目をしている。
 実際全てを諦めている。自分の将来のことや十二支の呪い、人間関係についても全て。イタチ憑きというだけで自分の存在意義を否定され続けていたが故。イタチなんていてもいなくても同じ、神の温情で存在を許されているのだと幼少より刷り込まれてきた。
 全てを諦めていたからこそ見えているものがあった。慊人が女性であることも気付いている。

 イタチ憑きは二百年に一人の確率で生まれるため他の十二支憑きより珍しく、鼠憑き同様生んだ者には恩赦があるとかないとか。しかし物の怪憑きとしては十二支との絆は薄く神様からの情けで存在しているため、立ち場は猫と同じくらいに低い。故に本家では奇異の眼で見られることが多い。
 正月の宴会には出席出来ず、しかし毎月一日には神様への挨拶を欠かせない為宴会場の外で宴会が終わるのを待つのが決まりとなっている。

 他の十二支に対して過度な干渉は避け常に壁を作っているため、唯一親しい物の怪憑きは実兄のはとりのみ。といっても顔を合わせればそれなりに会話をするという程度の意味合い。




「毎月一日をイタチの日と定めて下さりありがとうございます。神様の温情により私の矮小な自尊心が保たれております。今日という日に、神様の慈悲深さに感謝の念は堪えません。本当にありがとうございます」

 定型文となっているそれを、畳に額が付きそうな程の土下座をしながら一字一句間違えずに、支えることなく言い切る。それが毎月一日に行われる、十三番目に到着したのろまで我儘なイタチへ仕方なく情けを掛けてくれた神様への謝意の儀。
 耳触りは良いかもしれないが単に名前が気に食わないという理由で毎月本家へ訪れ行うよう強要しているのである。慊人の機嫌が良ければそのまま五体満足で帰れるのだが、悪い時は感情が籠もっていないだのと適当な理由を付け折檻される。
 それが当たり前なのは神様の言う通りだから。遅れてやって来て日付を知らされてなかったと我儘を言って年に十二日も自分の日を賜ったのだから感謝して然る。

 こんなことがもう十数年続いている。

「……顔を上げていいよ」
「……」
イタチお前なんていてもいなくても同じなんだから。の温情で年に十二日もお前のための日があるんだ。猫よりも中途半端なお前が存在を許されているのは僕のお陰なんだよ。分かってる?」
「……はい。感謝しています」
「……」

 諦めてしまえば楽になる。求めるから得られない。望むから叶わない。それならば最初から何も求めず、何も望まない。


「紫呉は野心家ね」
「君には分からないだろうね」

「何かを求めるなんて、どういうことかもう忘れたわ」




・一月一日生まれ

 一月一日は名前の生まれた日。名前が存在を否定され続ける日。


「名前は自分の誕生日を祝ってもらったことが無いんだよ」


 日付が変わる前から宴会が終わるまて部屋の外で待機し、いつ出てくるとも分からない神様を寝ずに待ちつづけ、宴会が終わった瞬間から神様へこの日の感謝を述べ、そして生まれてきたことを謝罪し続ける。生まれた時より絶え間なく続く習慣である。


「開いているお店が無くて有り合わせの材料で作ったので小さいですけど……お誕生日おめでとうございますっ!」
「え……」
「あのっ、今度ちゃんととしたのをお作りしますので!」
「私の誕生日を、祝う……何故?」


「私は名前さんと出会えて嬉しいです! もっと名前さんと仲良くなりたいと思っていますっ」
「……変な人」


 というようなイタチ憑き主の原作沿い由希落ちが書きたかった。
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