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▽戦う審神者の言行録(tukn→OP)
 複数の刀剣と共に異世界に飛ばされた審神者が戦いながら散らばった刀を集める話。

・刀剣→海賊のトリップ夢
・途中から本丸と行き来が可能に
・主要刀剣は書いてる人の好み
・しかも物語前半は物言わぬ刀のまま
・夢主が悪魔の実の能力者になる
・最強主人公ではない
・オリジナル多めの原作沿い
・基本書きたいとこだけで、色々端折る
・既存キャラの活躍を平気で奪う
・使い捨てのオリキャラ有り(敵など)
・途中他の審神者の友情出演有り
・色々とやりたい放題
・もしかしたら刀剣とのBLDになるかも?
・完全なる自己満足
・何でも許せる人向け




▽夢主設定
 戦う審神者。ライダーズゴーグルと防毒マスクを着用しているため見た目的には謎多き男。顔を隠しているのかと思いきや単なる花粉症対策だったりする。顔はそれなりに良い方だと思われる。
 服装は作業着(ツナギ)を下半身だけ着て、袖を腰に巻いて縛っている。上半身は黒Tシャツ。
 25歳。身長180cmくらい。蛍丸を片手で振るえるくらいにはしっかりとした筋肉がある。
 顔が見えないため警戒されやすくクールだと思われがちだが実はそこそこお馬鹿な楽天家。でもやる時はやる、根は結構真面目。間延びした口調が特徴。
 海賊世界での愛刀は大太刀「蛍丸」と太刀「獅子王」短刀「今剣」。背中に蛍丸、腰に獅子王と今剣。
 初期刀兼近侍は山姥切国広。初鍛刀は今剣。

 後に超人(パラミシア)系悪魔の実、オモオモの実を食べて重力自在人間となる。大まかに分けると「自身の重力」「対象(触れたもの)の重力」「任意の範囲の重力」の三つを自由に変化させることが出来る。
 ネーミングセンスがないのを自覚しているので特に技名は付けていない。
 ※藤虎と被っている可能性大ですがやりたい放題なので気にしない気にしない!笑


年齢:24(ローと同い年、ルフィと7歳差)
性別:男

趣味:晩酌、
特技:掃除、
好き:酒、掃除、可愛い子、日課の稽古
嫌い:花粉、、孤独

振るう刀の種類によって装備出来る刀装も変わるため全種装備可能。お守りは装備可能だが発動はしない。
イメージCV:島崎信長
ログイン(読み込み中):とーらぶ。
ログイン(読み込み完了):刀剣乱舞、始めよっかー。
ログイン(ゲームスタート):さーて、今日もやるかな!
入手:俺は名前。この本丸の審神者だけど戦うから、そのつもりでな。…いや、刀が戦ってるのに主である俺が戦わないのは何か嫌なんだよ。それにさ、審神者は戦っちゃいけないなんて言われてねーもん。
本丸:ん、撫でてほしいのか? ほら来い。よーしよしよし。/わーお、こんだけいい天気だと眠くなってくるな。/このゴーグルとマスクか? 大した理由なんてなくてさ、ただの花粉症対策なんだなー。
本丸(放置):暇だなー…あー、いや、仕事は終わってないけどさ…。
本丸(負傷時):俺も手入れで回復できたらなー。
結成(入替):よーし、今日は俺も戦うぞー。
結成(隊長):今日は俺が隊長でーす。よろしくな!
装備:わーお、なかなか。/一番いいのを頼む…なんてな。/おっし、いい感じ。
出陣:そんじゃ、行ってきまーす。
資源発見:わーお、良いもん見っけ。
ボス到達:わーお、禍々しいオーラ漂ってるじゃん。
索敵:このゴーグル、何の機能も付いてないからなー…。
開戦(出陣):そんじゃ、いっちょやってやるか。
開戦(演練):本番じゃねーからって気は抜くなよ。
攻撃:ほらよ!/くたばれ!
会心の一撃:これでどーよ!
軽傷:いって。/わーお、やるじゃん。
中傷/重傷:なかなかやるじゃねーか…!
真剣必殺:人間だからってナメてんじゃねーよ。
一騎打ち:人間の底力見せてやるぜ。
勝利MVP:やっぱ刀は人が振るってなんぼだよな。
ランクアップ:わーお、俺にもそういうのあるんだな…。
任務(完了時):おっし、任務終わったみたいだな。
内番(馬当番):よーしよし、良い子だ。
内番(馬当番終了)ほんとこいつら可愛いよな。
内番(畑当番):美味しく育てよー。
内番(畑当番終了):たまには畑仕事も良いな。
内番(手合せ):そいじゃ、よろしくお願いしまーす。
内番(手合せ終了):刀によって戦い方が違うもんなー。うん、参考になった。ありがとな。
遠征:たまには遠出も良いもんだよなー。行ってきまーす。
遠征帰還(隊長):ただいまー。なかなか楽しかったぜ。
遠征帰還(近侍):お、遠征部隊が帰ってきたな。
鍛刀:わーお、新入りが来たみたいだな!
手入(軽傷以下):これくらい舐めときゃ治るって。
手入(中傷以上):ちょっと真面目に入院してくる。
錬結:(出来ないため無し)
戦績:俺の戦績見ちゃう見ちゃう?
万屋:何買おっかなー。
破壊(反転):わーお…ま、俺が死んでも代わりはいるから、そんな顔すんなよ…。




▽経歴
 大学卒業後、大手清掃会社に就職し一人暮らしをしていたところを審神者としてスカウトされ、現在に至る。
 大学在学中に両親が離婚、そのまま両人とも再婚し新しい家庭を持った。大学卒業までの学費と生活費少々は保証されていたが卒業してからは連絡すら取り合っていない。
 現在の身寄りはほぼ無し。故に刀剣男士が唯一無二の家族。

 子供の頃剣術を習っていた事もあり審神者の任に着くと本人もやる気満々で刀を持って前線に。しかし初陣で名前を庇った山姥切が重傷を負ってしまい、泣きながら強くなることを誓う。
 それから必死こいて兵法を学び、稽古を重ねてめきめきと実力をつけ戦績がぐんと良くなる。刀剣もほぼ全振り集めている。




▽トリップに至った経緯
 ある日いつも通り出陣しようとしたら時空間移動用の門が暴発、近くにいた名前と刀剣男士数十名を吸い込んで海賊世界に吐き出した。
 東の海(イーストブルー)の有人島に辿り着き、この世界の知識を仕入れる。この時悪魔の実と知らずに食べてしまい、後で悪魔の実の存在を知る。
 夢主の手元には蛍丸と今剣しかなく、しかもこの世界では刀剣男士を顕現させる能力が使えず、言葉すら聞こえない。刀のままの二振りを装備し、刀集めの旅をすることに。
 本丸には何人か男士が残っているから政府に事情を説明してくれるだろうと見込んで、本人は刀集めを始める。
 刀剣男士の気配を察することは出来るので気配を辿って海軍基地の町「シェルズタウン」に着き、そこでルフィらと出会う。
 何やかんやあって刀集め優先で麦わら海賊団副船長になる。「お前仲間になれ!」「んー、副船長やらせてくれるならいいよー」「んじゃそれで!」的な軽いノリで。

 空島あたりで名前が海に投げ出され、気づいたら蛇衣の審神者の本丸の池から出てくる。(くまに飛ばされるでもいい)
 早速自分の本丸に戻って門の暴走の原因を知り、様々な情報を整理。残っていた刀剣の数人も名前を追いかけて門に入っちゃったらしくそれも回収することに。
 異世界に投げ出された刀剣を全員集める&異世界の調査の名目のもと再び海賊世界へ。
 試作品の腕時計型時空間転移装置(時計の時刻は本丸時間)を装備し本丸と行き来出来るようになったので審神者の仕事もサボらず熟しながらの刀集めとなる。
 今度は正式な手順で異世界に入ったので霊力が普通に使える。ただし特別な条件下の時以外は刀のまんま。その代わり刀剣たちの声は常に聞こえる(刀の姿だから普段より余り喋らない、お喋りすぎると誰が誰だが分からなくなるための措置です)。
 特別な条件はまだ決めてない。でも人の姿いっぱい出したい。




 くまに蛇衣の審神者の下(2012年)へ飛ばされる。夢主(三月の審神者)はそこから少し先の未来、2022年頃の審神者。
 自分の本丸に戻ってもやはり刀剣たちは居らず、こんのすけを介して政府から詳しい事情を聞き、正式に刀剣集めの任に着く。

 初期刀は山姥切国広、初鍛刀は今剣。

 アラバスタ編ではゴーグル姿しかバロックワークスにバレていないので、仲間のために花粉症を我慢してゴーグルを外す。最初は仲間も夢主とは分からない。海楼石の檻を蛍丸で切る。
 能力でビビを時計台の上までぶん投げる

 その後広場の重力を強くして騒ぎを収める。
「骨折れてたらすまん。でも“死ななきゃ安い”だろ?」




「うぃーす。俺の刀、ここにあるよな?」
「なっ……その出で立ちは、“刀狩り”!」

 この世界に来てから随分と有名になってしまったようで、太閤秀吉的な二つ名が付けられてしまった。
 秀吉公が刀狩りの際は海上賊船禁止令も布告されているのでそういった意味では矛盾極まりないのだが、まぁここは俺の住んでいる世界ではないので問題なし。
 本丸に帰って一期らに言ったらどんな反応するのか今から楽しみだ。

 ノリで始めた副船長だったけど案外悪くない。

「あったあった……」

 そいつを手に取った刹那、背後から振り下ろされる軍刀。流れるようにそいつを鞘から抜き軍刀を受け止める。
 長さといい握り心地といい、全てが俺の手に馴染む。

「ん、やっぱりお前が一番しっくりくるわ」

 同田貫正国。俺が一番振るってきた刀だ。

『来んのが遅ぇよ』
「悪い悪い。この世界海だらけなもんで」




 辿り着いたのは海軍基地の町、シェルズタウン。ここから刀剣の気配がする。


 磔にされている男が一人。

「おいお前。ちょっとその刀貸せ」
「嫌だ」
「はぁ!? いいから貸せって!」
「ぜってー嫌だ」

 これは俺の刀だ。




「そうだ、お前も仲間になってくれよ。剣士だとゾロと被るけどまぁいいや」
「いや、俺は剣士じゃなくて審神者……ってそうじゃねーや。仲間にならないから」
「何でだよー、いいじゃねぇか」

 駄々を捏ねるルフィに肩をすくめる。

「俺にはやらなきゃいけないことがあるんだよ」
「やらなきゃいけないこと?」
「俺の所有してる刀十数振りがちょっとした事情で色んな所に散らばっちまったから、それを集めないといけねーんだ」

 先ほどヘルメッポの部屋に在った獅子王のように、この世界に散らばった刀剣たちを集めなければがいけない。彼らと海賊ごっこをしている暇なんてないのだ。
 所有する刀剣の気配が海の先々にあるのだ。誰かが拾って折ってしまう前に全てを回収しなければいけない。

「そうか……だったら海賊やりながら集めりゃいいだろ」
「えー。……あー、それも有りか?」
「な! だから海賊やろうぜ!」
「……その代わり俺は刀集めを最優先するからな」
「それでいいよ」
「あ、そーだ。どうせなら副船長やらせてくれよ」
「おう! いいぞ!」

「そんな軽いノリで良いんですか!?」


「俺か? 俺は……名前だ。よろしくな」

 背中と腰の二振りに聞かれてしまったらという考えが過ぎり一瞬躊躇してしまったが、結局言ってしまった。
 今は物言わぬ刀のままだがイコール俺の言葉が聞こえていないという訳ではないだろう。真名を知られてはならないと政府から耳にタコが出来るほど通達され、わざわざ通り名まであるのに。
 時々自分の楽観加減にうんざりする反面、自分という存在が消えても困る人間は居ないのだという事実にほっとする。

「そうか、よろしくな名前!」




 シェルズタウンを出てすぐ、お互いのことをよく知らないということで小舟の上でそれぞれの自己紹介をすることに。

「おれはルフィ。この海賊団の船長で、海賊王になる男だ!」
「確か悪魔の実を食べたんだっけか」
「ああ。ゴムゴムの実を食べたゴム人間だ」

 シェルズタウンでルフィの体が伸びるの見た時は心底驚いたもんだ。
 そんな非常識がこの世界では当たり前なのだ。この世界に飛ばされて情報収集をした際に己の耳を疑ったのを覚えている。
 まぁ、この世界からすれば過去に遡って歴史を修正する行為も、付喪神を顕現させることを、その付喪神を戦わせることも非常識の域だろうが。
 加えて、俺も悪魔の実を食べてしまった身としてはこの世界への順応という意味ではかなり順応出来ている部類に入ると思う。

「そういや名前も悪魔の実の能力者なんだろ?」とゾロ。
「ああ。確か“オモオモの実”? とかいうのを食べた重力自在人間って奴かな」
「悪魔の実の能力者が二人か……」
「じゃあこの船がひっくり返ったら終わりだな!」

「縁起でもねぇこと言うな!!」

 朗らかに笑うルフィに俺とゾロのツッコミが重なる。
 本当にこの船長についてきて正解だったのだろうか。なんか不安だ。

「……俺はロロノア・ゾロ。世界一の大剣豪になる、それだけだ」

 シンプルで分かりやすい自己紹介だった。昔剣術を習っていた俺ですらゾロには及ばないだろうくらいに強かった。そもそも刀三本同時に使うとか無理むり。最後は俺の番だ。

「俺は名前。訳あってこの世界に散らばった自分の刀を集めている。この海賊団では副船長ってことで、よろしくー」

 にこやかに笑ってみせるがゴーグルと防毒マスクのせいで表情は全く見えていないのが現実。

「お前、そのゴーグルとマスク取れよ。それとも何か理由でもあんのか?」
「んー……大した理由なんてなくて、ただの花粉症対策なんだなこれが」
「……」

 あ、ゾロがあからさまにこいつ馬鹿だって顔してる。お前らにとっては下らないことかもしれないが俺にとっては死活問題なんだよ!

「海の上で花粉もクソもねーだろ」
「いや、慣れってやつは恐ろしいもんで、花粉がなくても外したくない」

 あ、また、こいつ馬鹿だって顔してる。何なんだよちくしょーめ。
 そんな俺とゾロのやり取りを見ていたルフィが突然笑い出したのでちょっとびっくり。

「にししっ! 名前っておもしれー奴! なぁなぁ、名前のこともっと教えてくれよ!」
「いいぜ。職業は“審神者”っていうのをしてんだけど……」
「はにわ?」
「ちげーよ! それ土器! 俺が言ってんのは“さ・に・わ”!」
「て、そのサニワってのは何すんだ?」
「“付喪神”っていう、まぁ、大切にされてきた物に宿る魂を顕現させて世話するのが主な仕事内容かなー」

 それからしばらく審神者や付喪神についての説明をしてやったが二人は終始首を傾げていた。

「よく分かんねーけど神様の言葉が分かんのか」
「……もうそういうことでいいや」

 俺は説明するのをやめた。
 こいつらにはいくら説明しても意味がない気がする。そもそもこちらの世界の知識ではないのだから教える必要はなかったのだ。言い損だ。

「神様の言葉が分かるなんてスッゲーなぁ!」
「付喪神限定だけどな」
「つくね?」
「つ・く・も・が・み! 物に宿る神様! さっき説明しただろ!!」

 それでも説明してしまうのは前職での職業病でもある。顧客が納得するまで説明しなくちゃいけないってのは面倒だった。

「はぁ……例えば、ルフィ。お前の麦わら帽子貸してみろ」
「ちゃんと返せよ」
「分かってるって」

 よっぽど大切な物なのだろうと踏んで、ルフィから麦わら帽子を借りて目を閉じて集中すれば帽子から“声”が聞こえて様々なことを教えてくれた。ビンゴだ。
 最近身につけた審神者としての特技の一つだが、非常に強い思い入れがある品でなければ出来ないのが難点だ。

「この帽子、シャンクスって奴から貰ったんだろ?」
「シャンクスを知ってんのか!?」
「知らねーけどこの帽子が教えてくれた」

 そう言って帽子を返せば再び、すげー! と目を輝かせるルフィ。
 その横で信じられないといった表情をするゾロの腰に提げられている白い鞘の刀を指差さす。

「それの声も聞いてやろうか?」

 そうしたら確実に信じるだろうと踏んで声をかけたが、ゾロにとってはその言葉だけで信用に足り得たらしい。口角を上げて遠慮しとく、と一言。
 ちぇ。審神者の本質上、刀の方がよく聞こえるからちょっと楽しみだったりしたのに、あの刀にはゾロの秘密があるらしい。プライバシー侵害、ダメ絶対。
 この声聞きは集中力を要するので普段はあまりやらない。そもそも本丸には思い入れの強い品は刀剣の他には無く、刀剣は刀剣で人の形をとっているからこの技を使う機会など皆無に等しい。
 俺が何を言いたいのかというと、疲れた。

 蛍丸と今剣と獅子王を抱えなおして、俺は少し寝ることにした。




・空島編(空島でメリー号の付喪神と一緒に船を直す所をウソップに見られて、全員に説明、ルフィとゾロ以外が初めて彼が審神者という職業であることを知る)


『起きて……』

『起きて……』
「ん……?」

「お前は……そういうことか」
『船を直したいんだ』
「ん、分かった。力を貸してやるよ」

 メリー号に手を添えて霊力を注ぎ込む。大きさが大きさなだけに相当量必要となるがそこはほら、若さでカバーだ。
 刀剣男士宜しくぼうっと淡い光と共に桜の花を舞わせて現れたのは、レインコートを着た小さな子供。メリー号の付喪神だ。
 レインコートで顔はよく見えないがそんなことはどうでもいい。こいつは、他のクルーが起きてくる前に出来る所までやりたいのだろう。
 俺も手を動かして、おっさんらが付けてくれた鶏みたいな部分も外して、失った部分は補修して。
 ウソップが置いてままにしていた木槌を使って補修を手伝う。


「……とまぁ俺は付喪神を顕現させたり出来るんだよ」
「本当にいたのね」
「ロビン知ってんのか?」

「霊と交信しその意志を伝え、時にその霊に実態を与えんとする者。シャーマン」

「ちょっと違ーう!! 俺憑依合体出来ねぇから!!」

 オーバーソウルとか出来たら格好良いんだろうけど無理なものは無理。




・一旦帰還編

「……はっ。ここは……」
「目が覚めたかい? 名字殿」

 瞼を上げて真っ先に目に入ったのは知っている天井。よくある本丸の天井だ。
 勢いよく起き上がれば優しい笑みを浮かべた審神者友達の蛇衣ちゃんがいた。

「あ、蛇衣ちゃん」

 どうやらここは蛇衣ちゃんこと蛇衣の審神者の本丸のようだ。
 蛇衣ちゃんとは派遣元の年代が近いということもあって審神者会議などでも世間話をする機会が多く、仲が良いと自負している。

「窒息してはいけないと思ってゴーグルとマスクを外させてもらったんだけど」
「ど、道理で鼻詰まりが……くしゅっ!」
「花粉症だったんだね。それは悪いことを……」
「いやいや、蛇衣ちゃんの気遣いすげー嬉しい。ありがと」



 俺の本丸IDとパスワードを入力して俺の本丸に繋ぐ。やはり、この世界に戻ってきてからは霊力のコントロールが上手くいく。
 門の向こうに自分の本丸が見えたことを確認して、お世話になった蛇衣ちゃんにお礼を言って門を潜った。

「蛇衣ちゃん本当にありがとな! このお礼は必ず!」
「ふふ、気にしなくていいよ。足元には気をつけて」

 今度菓子折り持ってちゃんと礼しに行かないとな。




 優秀な審神者だったのと、異世界に飛ばされていない刀が何振りか残っていたお陰で本丸はそのまま残っていることを聞いて胸を撫でおろす。この時ばかりは兵法に真面目であった自分を褒めた。
 しかしまだ回収できていない刀剣がいる。それらを見捨てるなんてこと、絶対にしない。

「政府の技術班が調べたところ通常、過去と繋いだ門の通過許可は刀剣男士のみに設定されているのですが、ここ数年それ以外の者が許可なく出入りしていたようで、それが元でプログラムに何らかの齟齬が発生し蓄積された結果起きた“予期せぬエラー”だそうです」

 刀剣男士以外の何者かが頻繁に通った……あっ。

「もしかしたら遡行軍の者が忍び込んでいるやもしれないとのことで、現在精鋭調査中です!」
「あー、ごめん。通ってたの俺だわ」
「ですので審神者様も十二分に注意してくだ……って貴方ですか!! でも何故過去に……ま、まさか……」
「うん。俺も前線で戦ってたんだ」
「なんと!……そうと分かれば早速上に報告させて頂きます」

 こんのすけは政府が用意した式である。故にどこに居ようと政府と通信が出来、審神者とコミュニケーションを取りながらもその情報を即座政府に伝達する機能を有する。従って、報告すると言いつつ既にその情報は政府の知るところとなっているのだろう。
 政府からの返事を待つ場合においてこんのすけは全ての動作を停止させるので分かり易い。
 数秒後、動き出したこんのすけに俺は聞く。

「んで、お偉いさんたちは何だって?」
「本来ならば規律違反で罰せられるのですが、ここの戦績は群を抜いて良いのでお咎めは無し、だそうです」
「わーお。やっりぃ」
「で・す・が! 審神者様が直接遡行軍と相敵するなど前代未聞です! 非常識です! ありえませーん!!!」

 ちゃんと反省はして下さいねっ、と飛び跳ねるこんのすけに、俺はうんざりといった表情を浮かべる。

「審神者様が戦場で直接指揮を取っていたのならばあの戦績の良さも頷けます。ですので今後前線に出たい場合はその都度の結果報告を義務化するとのことです」
「えー。めんどくさい……」
「何をおっしゃいますか! 刀剣男士とは違い貴方は生身の人間なのですよ! 致命傷を受ければ死は免れませんし何より危険です!」

 もし歴史修正主義者に捕らえられでもしたらこちらの情報を引き出すために死よりも辛いことをされる可能性だってあるのです。そうこんのすけは力説するが政府は審神者が死のうと何とも痛くも痒くもないと知っている。
 審神者候補者はそう多くはなく人員という意味では多少の痛手はあるが致命的かと言われれば否。新たに充てがえば良いだけの話なので政府が本当に危惧しているのはこちらの情報が歴史修正主義者側に渡ることだ。
 嘘も方便とはよく言ったものだ。
 こんのすけに個体差があるのかは分からないがこの本丸に派遣されたこんのすけは一応俺の身の心配をしてくれているようだ。

「他の審神者様に知られると非常に拙いので貴方が前線で戦っていることはくれぐれもご内密に!」

 表向きはシステムトラブルとして、各本丸の門をメンテナンスついでに通行規制を強化するらしい。審神者は決して表舞台に出てはならないのだ。

「それと、確認したいことが御座いますので少々お時間を頂けますか?」

 断らせる気など全くないくせに。

 顕現されることのない二振り目以降の刀剣を保管している蔵に向かうとそこから適当に刀を一振り銜えてくる。
 これを顕現してみてくれと渡された刀は山姥切国広。俺の初期刀と同じ刀だ。

 各本丸において現行で顕現されている刀剣を一振り目と考えて、その一振り目が破壊や刀解でなどで形を失くさぬ限り同刀の二振り目以降が顕現されていることはない。
 一抹の不安とともにいつもと同じ要領で霊力を注ぐが刀剣男士は顕現されず。

「やはり……」
「……」
「単刀直入に申します。貴方と共に異世界に飛ばされた刀剣は破壊・刀解のいずれにも至っていないため顕現出来無い状態にあります」

 その言葉に、ここに居ない初期刀が無事であることが分かり胸を撫で下ろした。
 もしここで二振り目の山姥切国広が顕現されていたら、一振り目の彼は無かった物とされていただろう。それは俺にとって絶望と同義である。

「異世界に飛ばされてしまった刀剣たちを我々の方で刀解扱いにすることは簡単ですが、飛ばされた刀剣は複製された依り代とはいえ神の宿る刀です。悪用されれば大変なことになります」

 そんなことは幾ら脳天気だ楽天的だと言われている俺にだって理解出来る。何より共に切磋琢磨してきた彼らを手放すなど、例え政府の命令であっても出来るわけがない。
 二振り目を顕現し練度を上げたところでそれは俺にとっての山姥切国広ではない。例え姿形が同じだろうと俺にとっての山姥切国広は最初の一振りしかいない。あいつでなければ意味はないのだ。

「よって、貴方には再び異世界へと赴き刀剣の回収を命じます」

 そもそも一緒に飛ばされた刀剣たちを集めるのが向こうでの目的だったのだ。

「元々そのつもりだったし!」
「つきましてはあちらの世界を調査し定期報告せよ、とのことです」
「それは良いとして、こっちでの仕事はどーすんの?」
「そのことについては本日中に決議いたしますのでとりあえずは現存戦力の把握と異世界へ行ってしまった刀剣たちの生存確認をお願いします」
「へーい!」



「……んで、連隊戦メンバー以外の奴らもいない気がするのは気のせいかな?」

 一瞬だけ一期が気まずそうに表情を歪めたのを俺は見逃さなかった。

「……長谷部殿をはじめとする数名が主を追いかけて門の中へ……」
「わーお……」

 こりゃ予定より長引きそうだな。




 特別措置として小型改良版の時空間転移装置を渡された。
 一見腕時計のようだがつまみと文字盤を回して行きたい時代・場所を設定すれば身に着けている人間と接触している刀剣のみが時空間移動出来るという代物だ。
 ただし現行で製作している試作品なので時代は選べず転移先にも制限があるらしい。

「あくまで急ごしらえの試作品ですのでくれぐれもお気をつけ下さいませ! それとこの装置についてもですが……」
「他の審神者にはご内密にーってやつだろ? 分かってるって」





 試作品ではあるが“腕時計型時空間転移装置”なるものを支給された。
 この腕時計型時空間転送装置、麻酔銃にはならないがなんと時空間を自由に移動できるという簡単に言えば瞬間移動が出来る神アイテムだ。使用者の霊力が込められた神札を貼った場所に一瞬で移動できるのだそうだ。
 ヤードラット星人から教えてもらわずに瞬間移動が出来るようになるなんて、世代だった俺からすればそれだけで感無量だ。
 その上ちゃんと本来の時計の役割も忘れておらず、常に本丸時間を表示してくれるという優れもの。
 通信機も内蔵されているため何処にいても安心して審神者の仕事も熟せます。ブラック本丸ならぬブラック政府だー。うわー、労基に相談だー。

 そんな腕時計型時空間転送装置、通称“審神者ウォッチ”、完全防水機能が付いてお値段なんと……経費です!

「こんな凄いのタダで貰っていいのか……?」
「玩具じゃありませんから、くれぐれも悪用しませんようお願いしますよ!」
「はいはい、分かってるって」

 試作品だけあって登録出来る神札は三枚までと結構ギリギリ。
 本丸の俺の部屋に一箇所と、メリー号に一箇所あればとりあえずは大丈夫だろう。三枚目は予備で。



「主よ! 刀集めなら俺を連れてけ!」
「いやいや、お前デカすぎて俺持てねーよ!」

 一度振るってみようとしてバランス取れずに倒れたのを忘れたのか。人の姿のままだとしても岩融はデカ過ぎて連れて歩くには目立ちすぎるから却下。


「海賊とは……些か心配ですな」
「一期は心配性だなぁ。多分悪い奴らではないぜ!」
「いや海賊という時点で相当悪い奴なのでは!?」
「……じゃあ一期も俺と一緒に来るか?」
「なっ……」
「と言いたいのは山々なんだが、俺が居ない間誰かがここを仕切んなきゃいけねーんだよ。んで、こういうのはお前にしか頼めねーんだな」

 消去法になってしまって申し訳ないが今ここにいる奴らで代理を頼めるのは一期しかいない。比較的古参である石切丸もいるが粟田口が多く残っているこの本丸でのまとめ役は一期が適任だろう。
 本人は俺に振るわれたかったのか捨てられた子犬みたいな顔をしている。

「帰ってきたらいっぱい振るってやるからさ、ちょっとの間よろしく頼むな」

 俺と同じくらいの位置にある一期の頭を撫でてやればすぐに顔を赤くする。前の主は女好きで有名だったのにこいつはなんて初な奴なんだ。

「あっ、主……その、弟たちが見ておりますので……」
「一兄顔真っ赤〜」
「っ、鯰尾!」

 横から茶々を入れる鯰尾を咎める声に怒気はなく単なる照れ隠しであることが伺える。そりゃあ遥か年下の男に頭を撫でられるのは羞恥しかないか。

「はは、ごめんごめん」
「……いえ。くれぐれもお気をつけて」
「おう!」




▽戦う審神者の清掃録(→MHA)

 後処理として雄英高校の清掃担当として潜入し、生徒たちと仲良くなりつつ任務をこなす。


 戦う審神者。ライダーズゴーグルと防毒マスクを着用しているため容姿的には謎多き男。顔を隠しているのかと思いきや単なる花粉症対策だったりする。素顔はそれなりに良い方だと思われる。
 服装は作業着(ツナギ)を下半身だけ着て、袖を腰に巻いて縛っている。上半身は黒Tシャツ。
 25歳。身長180cmくらい。蛍丸を片手で振るえるくらいにはしっかりとした筋肉がある。
 顔が見えないため警戒されやすくクールだと思われがちだが実はそこそこお馬鹿な楽天家。でもやる時はやる、根は結構真面目。間延びした口調が特徴。
 審神者になる前は清掃業者に勤務。



 世界は常に選択を迫られいくつもの未来に別れている。ここはその“未来”の一つ。超常能力が“個性”呼ばれ当たり前となった世界。

 今回の騒動も名前の暗躍により正しい未来へ是正され、ようやく彼の肩の荷も下りる。審神者の間では“後処理”と呼ばれている作業だ。
 審神者並びに刀剣男士の活躍によって歴史は凡そ正しい未来へと修正されるが、稀に“歴史のズレ”が在る。その時間軸ではほんの些細な違いであっても遥か未来からすれば大きな齟齬と成り得るそれを元ある形に正すのも審神者の役目である。

 潜入と一言に言っても始めから“そうである”よう時の政府が根回ししてくれている訳ではなく、普通に履歴書を書いて普通に面接を受けて普通に採用される、というただの就職活動だった。
 多少は時の政府の力が働いて採用されやすいようになっているのかも知れないが、やったことは審神者になる前の職探しと何ら変わりなかった。



「あ、大丈夫っすよー。血汚れは慣れてるんで!」
「血汚れに慣れてるって君どういう……」
「あー……それはあれ、うちの会社、特殊清掃も請け負ってるんで」
「なるほど」

 上手く誤魔化せた。まぁ孤独死から殺人現場まで自殺他殺問わず死者の後始末などを請け負っている会社であることもまた事実である。
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