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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

▽優介と両片思い(猿藤優介/すもも)
加猫名前(かねこ ー)

 十二神将の行く末を見守り続ける加猫一族の現当主。17歳。身長161センチメートル。6月28日生まれ。かに座。スリーサイズはB84(Dカップ)、W55、H82。B型。2-C在籍。髪型は外ハネショートカット。趣味は居眠り。
 マイペースで、教室ではよく寝ている。一族の特性で身体能力が非常に高いのだが本人はそれを隠し平々凡々と生きている(普通の人間に憧れている訳ではなく面倒な奴に目を付けられたくないという理由)。学力も本来ならば上位に位置するが競争心がないためテストでも手を抜いている。
 自由人ながらに一族の掟はしっかりと守り、犬塚を始めとする十二族の動向には目を光らせている。

 十二神将戦争を機に新たに生まれた加猫一族の現当主。東軍西軍どちらにも属することなく常に中立な立場にあり、十二神将の行く末を記録するのが役目。加猫一族は身体能力が非常に高く、世界で活躍するスポーツ選手を多く輩出している。
 代々当主にのみ受け継がれる特殊な瞳術を用い相手の能力から使用する技の仕組み、果ては弱点までをも見通す。これによりどんな相手にも容易に勝つことが出来るのだが代々の当主となる者は競争心や出世欲といったものを持たずに生まれるため覇権争い参入には至らない。あくまで自衛のための能力である。故に常に中立な立場で在り続けられる。勝負を挑まれても持ち前の柔軟さで相手を受け流す。
 分家は競争心も出世欲もあるのだが闘う術がないため覇権争いには参加していない。


 猫の一族の当主に成り立ての頃。十二族の当時の当主に挨拶へ行かされた際優介と知り合い、同い年ということもあり友達に。二人きりの時だけはお互いただの優介と名前として接しようと約束。それからちょいちょい内緒で会うようになり、お互いへの想いを募らせていく。
 猫の一族は他の十二族の者と結婚してはならない掟がありそれが二人が両片思いを拗らせる要因となる。純愛。
 という話が書きたかった。




「はじめまして。十二神将の行く末を見守りし一族、加猫の現当主加猫名前だよ〜」

「現当主として各流派の当主には挨拶を済ませてるよ〜。君たちの親か祖父母に尋ねてごらん」

「何で当主でもない奴に挨拶しなきゃならないの?」


・虎金井の猫じゃらしの件

「う……」
「?」
「犬塚君それ早くしまってぇ!」
「何でだ……?」

 尚もねこじゃらしを振ってる孝士に名前の瞳は次第にとろけてゆく。もしや名前も孝士に好意を持っているのではと、ももこやいろはや早苗、果ては名前に好意を寄せている男子までもが焦りを見せた。が。

「……」
「あ〜もうだめ!」
「!」

 びょこりと見えざる猫耳が生えたかと思うとそのまま猫じゃらしにじゃれ付く名前。

「そうか名前殿は猫の一族だからその特性が虎金井より濃く反映されるのですね!」
「あーん、体が勝手にぃ〜!」

「何だろうこの沸々と沸き上がってくる加猫を抱きしめて可愛がりたいという感情は……!」
「犬塚、人はそれを萌えと言う」
「これが萌えか……!」




「確かに、我が加猫家には歴代の当主が書き残した十二神将の全ての歴史が記されている書があるけれど……閲覧を許されているのは薬師如来様と歴代の加猫家当主だけなの。だから、他人に……ましてや十二神将の武術家になんて見せられないよ。各一族の色んな秘密が公になっちゃうもの」

 瞳術は犬塚、身体能力は虎金井、経術は猪野上、観察眼は加猫。


「……分かってはいたつもりけど、中立の立場って寂しいもんだなぁ」


「誰の敵でもなければ味方でもないし……仲間にも成れない」

「昔の歴史書を見ていると分かるの。ああ、これを書いた当時の長は酉の長が好きだったんだなぁとか、その次の長は子の彼が好きだったんだ、とか……。涙の跡が百年の時を経ても消えないの。その人のことを書いている時だけ嬉しそうに筆が走っているの」

「私の恋が伝われば、今までの加猫の人たちを否定することになるから、今までの当主と同じように私もこの想いは閉じ込めておかなきゃいけないの……!」

 小さい頃から何をやってもそつなくこなしてしまっていた。猫の一族として生まれたからか、それとも私自身の努力の結果なのか。
 加猫一族の次期当主になるのだから出来て当たり前。
 才能と持て囃してもくれなければ、努力を認めてもくれない、出来て当たり前。出来ないわけがない。




『私の前では本当の優介君でいていいよ。あなたの本音も全て私が受け止めてあげる』

 
 彼女の前だけでは本当の僕でいられた。つらい修行も、大変な勉強も、彼女のことを想えば頑張れた。


「ねえ、名前ちゃんってどんな娘なの?」
「あ、優介殿」
「加猫についてか?」
「うん。単純な興味だよ、加猫一族の当主に対する。あんまり会ったことないし。それくらい教えてくれても良いだろ?」

 嘘だ。名前ちゃんのことなら全部知ってる。誰よりも、どんな事でも。
 ぽかぽかな陽向で昼寝するのが好きで、でも僕と一緒にいる時は僕を優先してお昼寝を我慢する健気な一面も。肉より魚が好きだけど、中でも秋刀魚が好きなことだって。

 全部全部、僕の好きな名前ちゃんのことだから。



「闘争心無く全てを凌駕した一族が“加猫”。最弱であり最強である一族が“鹿御”」




・決闘後

「ゆうずげぐんももごちゃんどげっごんずるんだ……」
「加猫にも協力してもらおうと思ったんだがずっとこの調子で……」
「……」



「(じゃあ俺は何の為に……名前ちゃんを捨ててまで俺は何の為に戦っているんだろう……)」

「……名前ちゃんに会いたいなぁ」



・二度目の決闘後

「名前、ちゃん……俺、おれ……」
「優介君今までよく頑張ったね、お疲れさま……!」

 正面からしっかりと抱き締めれば、優介君もそれに応えて私の背中に手を回してくれた。

「名前ちゃんに情けない姿見せちゃったな……」
「ううん、そんなことない。とっても格好良かったよ!」

 ぼろぼろになりながらも、自分のことより一族のことを大切に思っている優介君が好き。
 優介君がもも子ちゃんと結婚せずに済んでほっとしている自分がいるのも確かだ。

「おれ、名前ちゃんに言わないといけないことがあるんだ」
「……」

「名前ちゃん……好きです」
「!」

 ああっ、幸せとはこのことか。

 でも私の気持ちを言葉にしてしまったらダメなの。
 分かっているのに涙が止まらない。嗚咽が漏れる。
 今までの当主たちを裏切ることになるのに、この想いが止められない。

「わた……私も、優介君が好き」

 ああ、言ってしまった。取り返しがつなかい。

「でも、ダメだよ……優介君は猿の一族で、私は猫の一族だから……」

 猫は十二神将には入れない。十二族と結ばれることは決してないのだ。


「……猫の一族を十二神将に迎え入れてこそ、本当の和平と言えないかの?」
「日光菩薩さま……!」


「ということは……!」
「名前ちゃん!」
「優介君!」




「名前ちゃんは俺と同じ大学じゃなくて良かったのに」
「政治家の嫁になるんだから私も色々勉強しなきゃ! それに少しでも長く優介君と一緒にいたいから、ね」
「え、好き……」
「知ってる〜。私も大好き!」

 というような優介と両片思い拗らせちゃう話が書きたかった。頓挫。
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