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▽後始末する審神者(tukn×dc)
タイトル:シュレディンガーの君

名字名前
 東都大学文学部で歴史を学んでいる大学生。居合道部所属の20歳。
 私服はロングスカートを好み、部屋着は基本的に袴。居合いやら剣道やらをたしなんでいるらしく常に竹刀袋を背負っている。
 運動神経は抜群に良いが推理力は人並み。コミュニケーション能力は高いが気を許せる友人はほとんど居ない。武家屋敷に住んでおり、愛車は日産フィガロ。

 その正体は歴史修正主義者から歴史を守る審神者の一人。住んでいる武家屋敷は未来に在る本丸と一体化しており、刀剣らも生活している。
 普段持ち歩いている竹刀袋の中には数珠丸恒次が入っており、やむを得ず竹刀袋を所持できない場合はスカートの下に博多藤四郎を忍ばせている。

 父親は元審神者。名前が高校一年の時、検非違使に殺され殉職した父親から本丸を受け継いだ。母親は霊力がなかったため専業主婦として夫と娘を支えていたが、夫の死に対する心労も重なって名前が高校三年の冬に病死。
 父親の本丸にいた刀剣たちは殆どが折られてしまっていた為ほぼ始めからのスタートとなった。父の近侍と初期刀は折れた状態のまま鞘に収められ床の間に飾られている。




▼メモ

・初期刀はまんば、初鍛刀は博多
・節約家で何でも経費で落とすのが得意

・居合道殺人事件with数珠丸(オリジナル)
・ミステリートレインwith長谷部(本体は釣具入れに)
・謎解きするバーボンwith博多(本体はテニスバッグに)
・合コンwith大典太

・純黒
・から紅withまんばちゃん
・ゼロ執




▼父親の死について

 父親は検非違使に本丸を強襲され殉職。自宅と本丸が一体となっているので検非違使から妻と娘を護る為に文字通り命を賭して戦った。
 名前と母親が帰宅した時には既に父親は瀕死状態で、二人の無事を確認し安堵して逝った。
 夫の死にショックを受けて母親は体調を崩し、娘が審神者を継ぐことに猛反対する。しかし名前の決意が揺らがないことを悟った母は、あの人の子なのね、と折れる。
 刀剣は、全てが検非違使との戦いで折れ果てており、予備として蔵に入っていた父の数口を使い、それ以外は一からのスタートとなる。
 母と娘が帰った時には父以外の刀剣は壊滅、初期刀兼近侍は最後に相討ちという形で破壊。




 高校一年生の時にカルタ部の大会で優勝したことがあり、程なくして父親が殺されてしまい本丸を継ぐために退部。カルタ界では伝説と語られている。その経歴から皐月杯への特別ゲストとしてオファーが来る。

「行けば良いじゃないか。カルタ、好きだっただろう」
「そうなんだけど」
「護衛ならこの前みたく誰かを付けて……」
「じゃあ国広よろしくね」
「……え」
「というわけだから長谷部、留守はよろしく」
「御意」




 午前の講義が終わり昼休み、次に名前が受ける講義は午後一番の一コマ分を空けて次の講義だ。
 こういう日は大抵愛車で一度自宅に戻って昼食を摂るのだが生憎フィガロは車検に出している上、毎週の癖で弁当を作るのを忘れていた。本日は適当に学食かどこかで済ませるしかない。
 そこでふといつか見た雑誌に載っていた喫茶店のことを思い出したので、スマートフォンを取り出しブックマークから目的の記事を表示させる。
 普段あまり外食はしないのだから、どうせならばこの喫茶店にしようと、彼女は竹刀袋を背負い意気揚々と大学を出た。

 メディアで度々取り上げられる有名な探偵の事務所の下にその喫茶店はあった。
 普段推理小説など殆ど読まない名前だが、店名の由来であろう灰色の脳細胞を持つその探偵の名くらいは聞いたことがある。

「いらっしゃいませ。一名様ですね、カウンター席へどうぞ」

 浅黒い肌の金髪の男性店員に促されるままカウンター席へと腰を下ろす名前。
 昼時だからか雑誌で取り上げられたからか、店内には孫くらいの歳の子供らを連れた老年の男性の他は若い女性客が多く、彼女らの視線は専ら名前を案内した男性店員へと注がれている。
 彼女が店に入った一瞬、竹刀袋に視線を感じていたが、女性客の場合は物珍しさからですぐに店員へと移っていた

「ご注文はお決まりですか?」
「えっと……アイスコーヒーとハムサンドください」
「かしこまりました」

 スマートに注文を取って調理を開始した彼は確かに人目を引く容姿をしている。雑誌でもイケメン店員と記載されていたのを思い出したが生憎彼女は美丈夫を見飽きているため他の客のように熱視線を送ることはない。
 先に出されたアイスコーヒーを飲みながら、スマホを取り出しメッセージアプリのアイコンをタップする。近侍が送ってくれた自宅兼仕事場にいる彼らの昼食風景の写真が載っていて、思わず笑みが漏れる。
 いつもならばその輪に名前も加わっているのだが

「何か良いことでもあったんですか?」

 お待たせしました、と出来上がったサンドウィッチを名前の前に出した先程の男性店員が話しかけてくる。
 名前は自身でもコミニュケーション能力の高さを自覚しているが、彼はそれ以上かもしれない。

「すみません、急に話しかけて。幸せそうにスマホを見詰めているので気になってしまって」
「いえいえー。っていうかそんなに幸せそうな顔してました?」
「ええ」
「うわ恥ずかしー。まぁ特別良いことって訳じゃあないですけど、癒やされる写真を見たもので」

 そう言ってサンドウィッチを頬張る彼女に、店員も貼り付けた営業スマイルを返す。
 サンドウィッチは評判通り美味く、雑誌で見つけて立ち寄ったのたがこの店は当たりだ。

 しばらくして、サンドウィッチを食べ終えた名前は腕時計を見て次の講義までまだ余裕があることを確認してアイスコーヒーを一口啜る。
 もう少しゆっくりしていこうと考えていた時、老年男性と共に食事をしていた少年の一人が名前に近づいてきた。

「ねえねえお姉さん、背中のそれって居合刀が入ってるの?」
「これコナン君!」

 老年男性の制止を無視しコナンと呼ばれた眼鏡の少年が名前の隣の空席に座ると他の子供たちも彼女の周りに集まってくる。

「ん? 君たちは……?」
「僕たち少年探偵団なんです!」

 そばかすの少年が高らかに答える。いつの間にか店内にいた女性客の殆どは退店しており多少騒いでも文句は言われない状態になっていた。
 彼ら少年探偵団の自己紹介のよると、眼鏡の少年が江戸川コナン。そばかすの少年が円谷光彦。カチューシャの少女が吉田歩美。体格の良い少年が小島元太。老年の男性は阿笠博士という発明家らしい。

「本当はもう一人、灰原哀ちゃんって子もいるんだけど今日は来てないの」
「へぇ。探偵団ってことはみんな探偵さんなのかな?」
「ええそうです!」
「博士が作った探偵団のバッジだってあるんだぜ」
「おー、かっこいいねー」
「で、お姉さんの名前は?」

 にこにこと無邪気な笑みで聞いてくるコナンに名前も人当たりの良い笑みを浮かべて対応する。

「ああ、言ってなかったっけ。おねーさんは名字名前っていうの。よろしくね小さな探偵君たち」
「ちなみに僕は安室透といいます。こうして出会ったのも何かの縁ですし、ぜひ仲良くしてくださいね名前さん」
「別に貴方の名前は聞いてないんですけどね。まぁよろしくお願いします」

 名前の笑みが苦笑に変わったタイミングでコナンが思い出したように彼女の背を指差す。上手い具合に躱したつもりが彼には通用しなかったらしい。

「それ、居合刀だよね?」
「おおっ、その通りだよ。でも竹刀袋なら剣道や木刀かもしれないのに、何で居合いって分かったの?」
「名前さんの左手の親指と人差し指の間の所、居合いをやってる人はよく怪我をする場所だって聞いたことがあるから名前さんのもそうなのかなって」
「ご明察。さすが探偵さんだねー。いやはや、これ未熟な時のだから恥ずかしいんたよね」

 もううっすらとしか見えなくなった古傷を庇うように右手で覆う。

「本物?」
「まさか。練習用の模造刀だよ」
「見せて見せてー!」



「お姉さんも安室さん目当てで来たの?」
「いんや。私はここのサンドウィッチが美味しいって聞いたから来ただけー。で、アムロさんって誰?」
「金髪の人」
「あー、確かにありゃあイケメンだねー。でもイケメンなんて見飽きてるから別になんともなー」




「当たり前のことを当たり前に感じられる幸せを噛み締めているところです」
「“当たり前”、ですか?」
「ええ。こうして美味しいサンドウィッチを食べられるのだって生きているからこそです。死んでしまってはこんな当たり前のことでも出来ませんからねぇ」


 名字家に在る通信機器類は名前の持つ物と近侍である山姥切国広が持つ物と本丸用で購入したスマートフォン計三台分と、タブレット一台である。

 山姥切が持つ物は主に名前が自宅に居ない場合に本丸の様子を伝える用で、彼女からの緊急連絡が来ても対応出来るよう初期刀であり近侍の山姥切が携帯している。
 本丸用は山姥切のとは別に、彼以外の誰もが好きな時間に利用出来る端末である。言ってしまえば予備である。が、山姥切以外が人の姿で、本丸外において名前の護衛をする場合に限り本丸用スマートフォンを携帯することがこの本丸のルールである。
 タブレットはインターネット用に購入した物で、男士らにより大量のアプリがインストールされ最早ゲーム機と化している。




・居合道部殺人事件(オリジナル)

 部長が真剣で殺された事件。被害者は居合道部の部長。名前がロッカーに置いていった道着を着て殺害し道着は女子トイレのゴミ箱に捨ててあった。第一発見者は居合道部の副部長。
 部費を横領していた会計係が、そのことを問い詰められて部長を殺害。真相を暴かれ逆上した会計係が名前に斬りかかるも数珠丸に止められ、いなされる。



「六段です」
「この部では一番上なんですよ」
「ということは錬士の資格がお有りで?」
「いえ、六段になったばかりなので……」
「では今後錬士をとるんですね」
「あー、いえ……」
「名前ってば錬士になるつもりないんすよ!?」




「お前のせいだああぁぁっ!!」
「は?」

 蘭の悲鳴が空気を割いた。

「なっ……!」

 会計係が振り下ろした真剣を、同じく真剣で軽く受け止める数珠丸がいて。突然現れた存在に、その場にいた名前以外の人間が驚きの声を上げたのは言うまでもない。

「お前は何なんだ!?」
「……主に刃を向ける者は例え人の子であっても容赦は致しかねます」
「あ……ああ……」

「恒次。それくらいでいいよ」
「己の過ちを悔い改めなさい」


「名前さんの危機と知りこの場に踏み込んでしまいました。すみません」
「誰なんだね君は!?」




「安室さんは過去を変えたいと思ったことはありますか?」

「後悔は数え切れないほどしてきた。死なせたくなかった仲間も、沢山いた……」

「もし過去を変えられるとしたら、安室さんはどうする?」

「でもその人が死ななかったことで他の誰かが不幸になるかもしれない。生まれるはずだった子供が生まれてこなくなるかもしれない。死ななくていい人が死ぬかもしれない」

「それでも過去を変えたい?」


「“バタフライ・エフェクト”って映画、知ってます?」





「名前姉ちゃんって何者なの?」

「正義の味方だよ」




 今回の騒動も名前の暗躍により正しい未来へ是正され、ようやく彼女の肩の荷も下りる。審神者の間では“後処理”と呼ばれている作業だ。

 審神者並びに刀剣男士の活躍によって歴史は凡そ正しい未来へと修正されるが、稀に“歴史のズレ”が在る。その時間軸ではほんの些細な違いであっても遥か未来からすれば大きな齟齬と成り得るそれを元ある形に正すのも審神者の役目である。
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