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「#幼馴染」のBL小説を読む
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▽稀代の音楽家(YOI)
 25歳。O型。幼い頃体が弱く二十歳まで生きられないかもしれないと医者に言われていたが普通に快復して元気に。自分が生きていた証を残したくて、誰かの記憶の隅にでも覚えていてほしくて作曲を始める。
 動画投稿サイトにインストゥルメンタル曲を投稿し始めるとすぐに再生数が伸び、14歳で作曲家としてデビュー。現在は様々な分野に貢献する名音楽プロデューサーとして音楽関係の事務所に在籍。
 勇利同様メンタルは弱く人見知りのため極力仕事は自宅のスタジオで済ませ、必要な時だけ対面するスタイル。名前が人見知りと知らない世間はストイックな一面と都合よく勘違いしている。
 すぐに帰りたがるが仕事で人と会わなければならない時はそれを悟られないよう振る舞う。
 酒好きで酔うと多少気が強くなるので酒に頼ることもしばしば。
 優子とは小学校らの付き合いで彼女を通して勇利と知り合い、メンタルの弱い者同士ですぐに意気投合という名の傷の舐め合い。

 ヴィクトルとは彼がシニアデビューしたての頃にリリアの伝手でフリー用の曲を作ったことがある程度。お互い特に認識してない。
 己の幅を広げる為に食わず嫌いはせず様々な分野、作品を見るようにしている。
 ヴィクトル落ち。




 彼女は仕事を選ばないことでも有名だった。ゲーム音楽からオペラの曲まで。依頼されれば全てきっちり仕上げる。

「カツ丼下さいな」
「大盛りにする?」
「いや、私頭脳労働だから大盛りは無理」
「ははは。だよねー」



・優子と話す

「私より優子の方が何百倍も凄いよ。結婚して子供三人も育ててんだもん……」

 創作物にも生みの苦しみと呼ばれるものがあるが実際に子供を産んで育てるのは、音を出す作業とは比べられない程の痛みと苦しみだ。それを初めての出産で三つ子なのだから、三倍。経験の無い名前には想像もつかない。未知への恐怖よりも母という在り方への尊敬の念を抱いだ。



・謎のプレッシャー

「はぁ……私も結婚したい……」
「だったらまずその人見知りを直さないとね」
「うぅ……」

 西郡ファミリーを見る度に思うことだが、思っているだけでは意味がない。行動に移さねば。
 しかし夢見る少女が語るそれとは違って名前は現実を見据えての発言だ。このままパートナーも居らず子供もいない状態で年老いていくと思うたけでぞっとする。引きこもり体質の名前が今の生活を続けていけば待っているのは孤独死しかない。
 だからといって誰でもいいという訳でもなく、しかしこれといった相手はいない。多少なりとも理想はあるがそれを語ってしまえばただの夢見る少女と変わらない。願望という域を出ない現状でどんな言い訳を立てようと結局同じだ。

 同い年の優子の娘たちはもう六歳になる。その事実がまだ若いと鼓舞しようとする自分を一層老いさせる。とどのつまり名前はよく分からない焦燥感に駈られていた。

「婚活しようかな……」
「えっ!?」

 まさか名前の口からそんな言葉が出てくるとは思っても見なかった優子が目を丸くする。



・自分の声が嫌い

「名前は自分で歌ったりしないのかい?」
「……私、自分の声が嫌いなの」

「だから、デモ用に仮歌いれるの、一番苦手、ほんと苦痛」



・ジンクス?

 フィギュアスケート界では密かに名前・名字が流行っていた。
 始まりはとある女子スケーターが自身の応援しているアーティストの楽曲を使用しその年の女子シニアの女王に輝いたことだった。彼女が選んだその曲を作ったのが名前だった。
 翌年に男子のジュニアで優勝した選手が使用したのはとある映画のBGMで、それも名前が作ったものであった。
 ヨーロッパ、四大陸、世界ジュニア。優勝した選手が使用していた曲は歌手や使用映画の監督、主演俳優、曲調、テンポ、何もかもがばらばらの中唯一の共通点が“作曲家が同じ”ことであった。


 いつしか名前の曲を使うと優勝出来る、なんて下らない噂がネットからじわじわと広まったのだ。


「ただの偶然だって。そのあたりの年は国内外で私の作った曲が増えてたから」

 当時は本当に忙しかったと記憶している。有り難いことである。多忙を極めると一種のランナーズハイに近い状態になり食事はおろか睡眠すら忘れて仕事に没頭したものだ。


「やっぱり、その人の努力だよ。私の曲はほんの少し、その手伝いをしてるだけ」




・作品集について

「ここにあるのは、殆ど私のじゃないの」

 音楽CDを始めドラマや映画、舞台にコンサートのDVD、ゲーム。女の関わった作品が上から下までびっしりと並べられている。

「曲は私が作ったけど、私のために作った訳じゃなくて、誰かのために作った曲だから。その人の曲なの」

 ヴィクトルはその中から不織布のCDケースに入れられたそれを見つけ。

「それは……それだけは唯一、私の。そんなとこに押し込んでたんだ……」
「聴いても?」
「……。別にいいけど、私のいない所で聞いて」


 そこに在ったのは他の誰も居ない、名字名前ただ独りの世界だった。



・ドキュメンタリー(本篇後予定)

 某ドキュメンタリー番組から取材のオファーが来たので引き受ける話。

 やっぱり、人前に立つのは苦手だ。
 ネットでは引きこもり作曲家と揶揄されるが本当のことだ。
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