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▽絵筆の付喪神(キング/東方→七罪)
※元々長編夢にする予定だったけど飽きたのでネタ帳に供養。


デフォルト名:ルカ・デプレシオン(Lukas・Depression)
 「憂鬱の罪(キャット・シン)のナマエ」。印となる獣は猫。刺青の位置は右腕。
 手配書では壮年の女性の姿で描かれるが、実際は若く整った顔の美しい女性。エプロンドレスとリボンのついたベレー帽のようなもの(ZUN帽)を着用。
 罪状はダナフォール壊滅を傍観していたこと、と云われているが詳細は不明。

 やる時はやるがやらない時はとことんやらない、やる気の起伏が激しい芸術家気質。憂鬱の罪の所以でもある。
 面白そうだと思ったこと、気になったことはとりあえずやってみる。失敗することは考えない。
 表向きの魔力は「想像(イマジネーション)」。その実は「描いたものを実体化する程度の能力」「色で感情を決めつける程度の能力」である。
 メリオダスとは昔からの知り合いらしく、<七つの大罪>メンバーで唯一彼を団長と呼ばない。
 自前の絵筆は幻想郷においてきてしまったので、現在は神器として賜った絵筆<ヴルツァ(ギリシャ語で絵筆の意)>を使用。

 ルネサンス時代に使用されていた絵筆が百年経ち付喪神となったのが彼女だ。付喪神となり幻想郷入りしてから三百年以上経っている。
 絵画を描くことが生きがいで幻想郷を好き勝手移動しては絵に描き納めている。絵画以外にも彫刻や写真、歴史ある町並みなど芸術的価値のある物は大抵好き。
 幻想郷内では香霖堂の隣にアトリエを構えており、併設されているギャラリーでは人間も妖怪も関係なく無料で彼女の作品を見ることが出来る。定期的に人里に赴いては人間相手に絵画教室を開いている。


 髪型は、真ん中分けの前髪兼横髪は顎のあたりまで長く、左右からおくれ毛を出しており後ろ髪は腰まで長い。
 前髪兼横髪の左右、おくれ毛左右、後ろ髪それぞれにの色が付いている(申し訳程度の絵筆感)。
 髪の色(全体): #DDC6C2
 ※このサイト内では「桜鼠」「ピンクミルクティー」と表記します。毛先は赤、黄、青、緑、紫の五色。
 瞳の色:左目 右目 


種族:付喪神
二つ名:極彩色の芸術家(紅、星、輝)、名画の功労者(妖、花)、蓋世之才(花)、万能人の愛用品(文、地)、楽園の偉大な画家(緋、神)、カンバスの先導者(ダブルスポイラー)
能力:描いたものを実体化する程度の能力、色で感情を決めつける程度の能力
危険度:低
人間友好度:極高
主な活動場所:如何なる場所でも


・デフォルト名の由来

ルカ(Lukas):医者および画家の守護聖人。
デプレシオン(Depression):フランス語で憂鬱の意。



▽スペルカード
虹符「七色の大罪」
絵符「ギャラリーフェイク」
色符「極彩色の幻想夢」
絵画「ね、簡単でしょう?」
未完「東方三博士の礼拝」
肖像「モナ・リザはどこにいる?」
名画「最後の晩餐」
個展「ルネサンス情熱」


▽程度の能力

「描いたものを実体化する程度の能力」
 媒体を問わず描いたものを実体化させる程度の能力。他人が描いたものも実体化させることも可能。
 ただし水に弱く、濡れると溶けて無くなる。そのため消したい場合は水に濡らすか、彼女が任意で消すしかない。

「色で感情を決めつける程度の能力」
 相手の肌に直接絵の具を塗り付け、色に応じた感情状態にする程度の能力。


▽東方本作での出演
 紅魔郷:初登場、3面中ボス。霧の湖で紅魔館を描いていたところを勘違いした巫女に強襲される。完全なるとばっちり。本人も不意を突かれてのことだったのでそこそこ弱い。
 妖々夢:6面の中ボスを担当。白玉楼の桜を描いていたところを、幽々子の共犯だと勘違いされ勝負を挑まれる。前回の事もあってか結構本気モードで相手をすることに。
 花映塚:初の自機参戦。紅魔郷、妖々夢と何気に出番の多い付喪神。今回の異常を芸術作品として描き残すことを目的とし、花と人物モデルを探してうろつく。
 吸霊フィールド範囲が小さいが、活性化された霊の自爆による大玉弾に対する当たり判定がないため活性化のタイミングを逃さなければ比較的楽。今回はやる気満々のためチャージ速度も速くゲージも多少たまりやすいため、中々の強キャラとなっている。
 特技は「活性後の霊の自爆による大玉弾に当たっても平気」。カットイン時の四字熟語は「蓋世之才(がいせいのさい)」(やる気に満ちていて、世を覆い尽くすほどの優れた才能を持っている人のこと)。
 文花帖:レベル8に登場。
 緋想天:天候「晴れ」で「テンションが上がる程度の天気」。効果は「スペルカードゲージの溜まりが通常の2倍になる」。
 地霊殿:霊夢の支援キャラとして登場。全方特化型。支援特技は「一定スコア獲得ごとにPowerが0.5増える」。全8方向へのショットが可能。その分Powerは他の支援に比べると劣るのだが、一定スコア獲得ごとにPowerが増える仕様のため落ちなければどんどん強くなる。
 星蓮船:自機キャラとして登場。目的A<お宝鑑賞ツアー>「芸術的にも金銭的にも価値のある物がわんさかある予感。あわよくば持って帰って飾ろう」。目的B<七福神写仏ツアー>「宝船に七福神は付き物。ならばそれらを描くのが私の使命!」。
 ダブルスポイラー:LEVEL EX 9シーンに登場。
 神霊廟:6面の中ボスを担当。青娥、屠自古、布都の三人を描き終え、神子の許へ行こうとしていたところを巫女と遭遇。ナマエのテンションが上がっていたこともあり、そのままの流れで弾幕ごっこをすることに。
 勝負前の霊夢との会話の一部「ナマエ、あんたはまた何でこんな所に?」「偉人を描こうかと思って!」「そんな情報どっから仕入れてくるのよ……」「うーん……芸術センサー?」「相変わらず訳分らんわね」「それが私の個性ってことで一つ」「まあいいわ。じゃあね」「えー、弾幕ごっこは〜?」「私は先を急ぐんだけど……仕方ない」「やった!」。
 心綺楼:人間の里ステージの背景キャラとして登場。
 輝針城:自機として登場。初の武器選択式の自機である。武器は妖器「ペイントブラッシュ(英語で絵筆の意)」を使用。スペルカード妖器「ペイントブラッシュ」は特大筆を振り回して一定範囲の敵弾に色を塗り、弾き返して他の敵弾に当てる技。
 今回の異変に気づいたのは自身の相棒である特大絵筆のペイントブラッシュだった。異変に気付いたナマエは嫌な予感を感じつつも何かに惹かれるように霧の湖へと赴くのであった。中々の強キャラなので打ち出の小槌の影響をあまり受けなかった付喪神。
 勝負前の鬼人正邪との会話の一部「貴女たち、何が目的なの?」「弱者が強者になる世界を作るのだ」「弱者が、強者に……?」「お前も道具なら分かるだろう? 如何に我々道具が虐げられてきたか!」「でも、人間がいてこその道具なのよ。私たちは誰かが使ってくたからここにいれるの」「でも人間に捨てられればただのガラクタだ。お前の持っているその絵筆だってそうだ、使うだけ使えば後はお払い箱だ」「この子は道具なんかじゃない。私の相棒よ」「……よかろう。ならばその絵筆との絆とやら、見せてみろ」


▽二つ名の由来
 極彩色の芸術家:たくさんの色を使って美しい絵を描く画家であることから。
 名画の功労者:名だたる名画を描くために使われた絵筆ということで。つまり功労者。
 蓋世之才(がいせいのさい):四字熟語。やる気に満ちていて、世を覆い尽くすほどの優れた才能を持っている人のこと。
 万能人の愛用品:万能人はダ・ヴィンチの異名であり、その万能人が使っていた絵筆(という設定)が由来。
 楽園の偉大な画家:幻想郷一有名な画家を営んでいることが由来。
 カンバスの先導者:絵筆の先導がなければ画布に色を付けることは出来ないことから。


▽スペルカードの元ネタ
 虹符「七色の大罪」:虹の色の数である七色と七つの大罪を掛け合わせたもの。
 絵符「ギャラリーフェイク」:細野不二彦原作の青年漫画より。絵画というとこれが最初に思い浮かんだので。
 絵画「ね、簡単でしょう?」:ボブの絵画教室より、ボブの決め台詞。
 未完「東方三博士の礼拝」:ダ・ヴィンチの未完の作品より。博士とは賢者や賢人という意味。ちなみに、幻想郷における三博士は「八雲紫(稗田阿求が妖怪の賢者様と呼ぶシーンがある)」「八意永琳(月の賢者)」「パチュリー(スペカ名の賢者の石から)」の三人だと思う。もしくはパチュリーを外して「月夜見(設定のみ登場している賢者で、永琳と共に月へ移り住んだ月の都の創設者のひとり)」を加えても良い。
 肖像「モナ・リザはどこにいる?」:ヘンリー・ピューリツァーが出版した本のタイトルから。
 色符「極彩色の幻想夢」:幻想郷が見ている色鮮やかな夢、という意味。
 名画「最後の晩餐」:ダ・ヴィンチの作品より。
 個展「ルネサンス情熱」:ダ・ヴィンチがルネサンス期の画家であったことと、ミスター味っ子のOPから。彼女の個展のタイトル。




「<七つの大罪>は全員で八人!」

 <七つの大罪>とは一組織名に過ぎない。そのため組織に属したメンバーが七人だろうと八人だろうと組織名に変更はない。
 むしろ、メタファー的説明をするならば七つの大罪は<八つの枢要罪>が起源であり、罪の数も八つあったのだ。それから何やかんやあって現在の七つの大罪と成っている。
 つまり<七つの大罪>のメンバーが八人いても何らおかしくはないということ。現に豚の帽子亭の壁に貼り付けられている手配書は八枚である。

「つーわけで後七人だな!」
「はい!」


 一方、このお話の主人公であるナマエはというと、自由気ままで旅を続けていた。
 先ほどメリオダスとエリザベスが眺めていた八枚の手配書の内一つ、壮年の女性に描かれたものが彼女の手配書である。
 実際は若く整った容姿をしている。フリルがあしらわれたエプロンドレスに、リボンの付いたベレー帽を着用。全体的に黒と紫で統一された服装だ。
 左右に分かれた前髪、左右と真ん中の三方に分かれた後れ毛と襟足は美しいピンクミルクティー色。五ブロックに分けられた毛先はそれぞれ異なる色に染められている。
 色の異なる左右の瞳は何を見ているのか、
魅了する。
 カラフルだとかごちゃごちゃしているとか。彼女の第一印象は大体それである。



 死者の都に到着した豚の帽子亭一行に遅れること数分。ナマエも死者の都へと繋がる町へと足を運んでいた。
 
 もしかしたら幻想郷、とりわけ冥界に繋がっている可能性がある。
 帰るにはまだ早いが、彼女が消えたことにより心配している人たちがいると思うと無事生きていることだけでも知らせておきたいのだ。



「うーんと……お取り込み中?」

「おっ、ナマエじゃん♪」
「ナマエ!?」

 石化が始まったバンとその傍らにて敵意を剥き出しにしているキングを見ているのは七つの大罪メンバーでもあるナマエだった。
 

「何で君がここに……まさか死んで……!?」
「? 忘れたの? 私は付喪神だから滅多な事がない限り死なないわ」

 額に汗を浮かべるキングとは裏腹にナマエはあっけらかんと答える



「久しぶりね、ハーレクイン」
「オイラのこと覚えて……?」

「当たり前じゃない。忘れるわけないわ」

 柔らかく笑いかけるナマエの姿に、益々頭が混乱する。



「……エレイン?」

 普段は掴みどころのない人物だがナマエだって某妖精のような馬鹿ではない。死者の都と呼ばれるこの場所に、本来要るはずのない人物が現れる意味は理解している。
 ただ、その事実を口にすることで現実を
 幾度となく親しい人間の死を目にしてきたナマエには、



「ごめんね、ナマエから貰った絵、全部無くなっちゃった……」
「そんなの、また描けばいいの。一緒に世界を回りながら、今度はエレインも筆を持って、一緒に描きましょう?」



「生を超越した存在だもの」



「あら、ボムの使用はルール違反だったかしら?」

「貴女、素敵な弾幕を打つのね。気分が高揚してきちゃった」


「貴女、名前は?」
「ギーラと申します」

「私、<憂鬱の罪(キャット・シン)>のナマエっていうの、結構気に入ってるのよね」


「相変わらずテンションの上下が分かんねえ奴♪」
「うん、よく言われる!」


「弾幕ごっこしましょう?」
「“ごっこ”じゃありませんよ。本気の殺し合いです」

「それじゃあ、弾幕勝負しましょう?」



「……豚の毛は油彩用の毛筆として重宝されているの」
「俺の毛はやらねえぞ!?」



「確かに、この絵の君はあまり可愛く描かれていないね」

 本物の君はこんなにも可愛いのに。そう続けようと頬を赤らめたキングをよりも早く、ナマエは口を開いた。

「そうじゃない。この絵にはユーモラスが欠けているのよ」


 画材の一切は豚の帽子亭三階の物置に保管されており、ナマエは見張り台から出入りする。



「<七つの大罪>として会った時、君、“初めまして”って……」

「だってあの時、貴方姿が違ったでしょう? わかるわけないわ」


「私はディアンヌと外で寝るわ。外で寝るのは慣れているし……それに、屋内で一人で寝るより外で二人で寝る方が楽しいじゃない」



「ナマエも飛べるし、仕入れ係兼看板娘ってことで」
「それは絵は描いてもいい仕事?」
「あっ、そだ。似顔絵描いて金稼げばいいんじゃね♪」
「それもいいな……じゃあ似顔絵担当で!」


・闘技場

「おい、お前の名前はどうする〜♪」
「名前……じゃあ、」


「八人揃ったので予選終了!」


「キングは?」
「落ちてないよ!」


「続いて一回戦C組……ケイン対スイカ!」
「スイカって何だよ〜♪」
「食いもん?」
「強そうな名前にしたの!」

 身近にいる物理的喧嘩が強い者と考えた結果、幼い姿とは裏腹にすこぶる力の強い鬼が該当したのだ。
 キングは小さな声で、君が言うならどんな名前でもきっと強そうだよ、と思ったことを口にする。



「メリオダスが何者であっても彼がメリオダスであることに変わりはないわ。」


 
「不老不死に興味はないわ。ただ聖杯が観たいだけ」

 彼女自身が既に不老不死のようなものであり、生命の泉の効果になぞ少しも興味はない。彼女の興味は生命の泉の入れ物である聖杯にのみ注がれている。
 他者の心を読むことの出来るエレインは彼女の言葉の真意を確かめた。
 彼女の心は実にシンプルなもので。ただこの森を、聖杯を描きたいという思いしか存在していなかった。
 珍しい人だと、思った。ここに来る人間は理由はどうあれ例外なく生命の泉を求めていた為、純粋に観光目的であるナマエに興味を持ったのだ。
 信用に足る人物かはまだ分からないが悪い人ではないだろうというのが第一印象である。

「……いいわ。見せてあげる」
「ありがとう!」

 本当に観光だけが目的ならば聖杯を観てもその心内に変化はないはず。期待と不安を胸にエレインは聖杯の下へと案内する。

 結果を述べると、聖杯から湧き上がる不老不死の源を目の当たりにしても、彼女の心中は変わらなかった。寧ろ生命の泉宜しく湧き上がる創作意欲を抑えられない、といった心内である。
 爛々に輝くオッドアイを見て、エレインもようやく彼女の言葉を信じることが出来たのだった。

 許可を取っていないにも関わらず、どこから取り出したのかイーゼルを具合の良い場所に設置しているナマエに。



「貴女に、絵のモデルになって欲しいの」
「わ、私!?」

「これが私!?」
「? 私はありのままを描いたつもりだけど……」
「自分じゃないみたい……綺麗に描いてくれてありがとうっ!」



「エレインは私のお友達だから、特別ね」

 スケッチブックに描いた動物たちが実体化し、エレインを囲むように踊り出した。

「わぁっ! すごいっ、可愛い! ナマエって魔法使いなのっ?」



「また来るわ。次は妖精王を連れて。そうしたら一緒に世界を見て回りましょう?」
「っ、うん!」


・バンとの出会いと仲良くなるまで

 バンが城下町が一望出来るテラス部分に出ると、城から見える町並みを一心不乱に描いている女性を見つけた。
 ナマエがいた。
 聖騎士の鎧は無造作に脱ぎ捨てられ輝かしい威厳は失われている。
 
 その絵が完成したのはバンがいびきをかきながら熟睡してしまう程の時間が経った頃だった。
 完成した絵を満足げに見下ろす


 気に入った絵を盗んだことは多々あったが、それらの価値は今となってもまったくもって解らない。暫くすれば飽きて捨ててしまうか売りさばいてしまうことが殆どだったので今さら審美眼を養う気もなかった。
 そんな美意識に欠ける彼にも唯一心を奪われる絵画に出会ったことが一度だけある。それは妖精の森とそこに悠然と存在する聖杯をバックに微笑む少女が描かれた一枚の油絵だった。
 モデルとなった少女は後に、嬉々としてその絵描き手について語っていた。大切な友達が描いてくれたのだと、自分のために旅を続けながら居なくなった妖精王を探して連れてきてくれるのだと、そうしたら一緒に世界を見て回るのだと。
 その時は貴方も一緒に行きましょうと、楽しそうに話す声を聞きながら、他にも貰ったという作品を眺めていた。
 バンにとって見たことのある風景や未だ見ぬ街並みの数々。大胆かつ繊細な筆遣いで描かれたそれらは目で見た景色をそのまま切り取ったようでいて、色調豊かに描き手の主観を尊重されていた。

 今となっては絵に惹かれたのか、絵に描かれている少女に惹かれていたのかは定かではない。
 それらの絵は妖精の森が魔神族に襲われた際に全て燃えて無くなってしまったが、決して忘れることはない。運が良ければ不死の人生でもう一度くらいは拝めるだろうと思っていた。

 バンが現在見つめているカンバスの左下には、彼の記憶に在る少女の絵にあったサインと同じ物が描かれていた。この絵を描いた者、つまりナマエのサインが。


「……風の噂で妖精の森が滅んだと聞いたわ」

「あそこには友人がいたの」

「私はただ、真実を教えて欲しいだけよ」

 バンは直感的に彼女には真実を話さないといけないと感じた。妖精の森を訪ねた日のことを、妖精の森が如何様にして消えていったのかを。



「芸術センサーが……」

「これ見てくれ」

「エールのシールコレクションだ♪」
「……!」

 かつて自分の話を楽しそうに聞いてくれた妖精の少女



「素晴らしいわっ。ラベルのデザインもだけど、それらをスクラップすることで一冊の本として成り立たせている。まさに世界で一つしかない貴方だけの本なのね!」
「カカカッ! お前もこのノートの凄さが分かるのか〜〜♪」
「ええ。この微かに鼻につくエールの香りが何とも言えぬ歴史を感じさせるわ!」
「テンションマックスだな!♪」 


 城下町を描いた作品は王の目に留まり、王室に飾られることとなった。



・聖騎士時代のキングとルカ

 キングはナマエに話しかけようか迷っていた。

 再会したときの彼女の言葉は忘れようとしても忘れられる訳がない。かつての友人にかけるにはあまりに薄情で、恋い焦がれていた女性に言われるにはあまりに残酷な言葉。

『初めまして。キング、これからよろしくね』

 キング、正しくは妖精王ハーレクインとナマエの出会いは数百年前に遡る。
 
 真相は至ってシンプルなもので彼女は彼のことを忘れてはいなかった。しかしそれは元の幼い姿をしているハーレクインであり、現在彼が正装と呼んでいる中年男性の姿は全くもって見覚えのない人物なのである。
 しかも名をキングと偽っていることも彼とハーレクインが同一人物であることを遠ざけている要因でもある。
 そんな真相をつゆ知らず、


・聖騎士時代

「ボク、ナマエが絵を描いているところを見てるが好きだなぁ」



「人間は悪い生き物じゃないわ。決して良い生き物とも言えないけれど……」


「そう言えばナマエって人間じゃないの?」
「私? 人間じゃないよ」

 第一、飛んでる人間なんていないでしょ、と言いかけて彼女は口を噤んだ。一人知っているではないか、空を飛ぶことのできる人間の巫女を。



「私は付喪神っていう……所謂神さま? みたいな感じ」
「神さま!?」
「じゃあナマエは女神なの!?」
「女神族じゃないわ。大切にされた道具に命が宿った者のことを付喪神って言うの」



「思い出せそう?」
「そうだ! ナマエの描いた絵を見せてあげれば良いんじゃない?」
「絵……?」
「ナマエは世界を色々と見て回って絵を描いてるんだよ」

「と言っても油絵の方はモデルの人にあげちゃうことがほとんどだから……手元にあるのはこの五枚と、スケッチブックとクロッキー帳くらいね」

 本来ならば幻想郷にある自身のギャラリーに飾りたいのだが、それは帰ってから描けばいい。描き方は手が、情景は目と脳が覚えている。
 彼女は絵を描くことも好きだが、絵を受け取った人の笑顔を見るのが何より好きなのだ。絵画は心を豊かにし、笑顔は心を暖めてくれる。
 それ以外の風景画などは妖精の森に立ち寄った際エレインに殆どプレゼントしてしまった。
 彼の記憶戻しの手掛かりになりそうな物はあまり残っていないと彼女は言うが、出されたスケッチブックの数は残った油絵の数より多く、全項水彩で色付けまでされている。クロッキー帳は四冊ともモノクロのスケッチで埋まっていた。

「気になる絵があったら言ってね、些細なことでも記憶を取り戻すきっかけになり得ると思うわ」



「貴方は見ちゃダメ!」

 ナマエは即座に絵筆を一振りし、ハーレクインの目元に絵の具をかけ視界を封じる。
真っ赤に染まった目元を拭おうと


「ナマエが絵を描いたら一瞬で服になってたの!」
「君の魔力かい?」
「……みたいなものよ。この能力は雨に弱いから早めに服を作ってあげましょう!」

 制作意欲が沸いたのかテンション高めに洋服のデザインを開始する。


 ディアンヌが床についても作業は続いていた。ハーレクインはいつか盗み見た人間の作業工程を思い出しながら皮を鞣す。
 ナマエはその様子に興味津々といった様子で、彼の作業風景をクロッキー帳に描き留めていた。


「今日の作業はここまで。あとは乾燥させるだけ」
「貴方はまるで魔法使いね」



「こ、こうしてると、ま、まるで……ふっ、夫婦、みたい、だね……!」
「……そうね」

 柔らかく微笑んだナマエに、気をよくしたハーレクインは話を続けた。
 オイラが父親で、君が母親、ディアンヌがオイラたちの子供さ。のんのりと頬を熱くさせながら自らの理想を語る彼を優しく見つめる

 幻想郷の人里にいた家族も、この世界にいる家族も、だれもが暖かく豊かな心で暮らしている。
 絵筆として生まれ、付喪神として第二の物生を生きているナマエにとって、その暖かさは羨ましくもあった。
 人間と同じような姿形をしていても所詮は物に過ぎない自分に、


 人間の見よう見まねでキスをする

「〜〜っ!?」
「人間たちがしているのを見て、どんなものか気になってたの」
「っ! そ、その“思い立ったら即行動!”な性格どうにかした方がいいよ!」
「貴方は嫌だった?」
「〜〜! い、嫌じゃない! どちらかとしては驚きの方が大きかったけど決して嫌ではない!」


「こういうこと他の人にしたらダメだよ!?」
「分かった。ハーレクインだけにする」
「そ、そういうことじゃなくって!」



「貴方が全てを思い出して、いつか私を忘れても、私は覚えている」

「私は思い入れの証だから、貴方を忘れたりしない。例え貴方が私のことを忘れようとも、他の誰もが貴方のことを忘れようとも、私は貴方のことを忘れないわ」
「ナマエ……」




▽番外編

 画家を欠いた楽園、改めナマエが消えた幻想郷では一つの異変が起きようとしてた。


「妹紅、とりあえず落ち着け」
「これが落ち着いていられるか!!」



「そのうち戻ってくるわよ」
「そんな保障あるのかよ!」
「だって私たちは幻想郷(ここ)でしか生きられない」
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