オレはこの世の中で
[可哀想]
って、言葉が一番嫌いだ。
母さんが死んだ直後、よく言われるようになった。
[「栄口くんのお母さん、亡くなったんだって〜。可哀想だよね〜」]
[「勇人くん、お母さん亡くなったんだって?可哀想だね…」]
そんな事を言われたオレは、とにかく精一杯
"笑う"
と、いう行動をとった。
だって
[可哀想]
って、言われたくなかったし、思われたくなかったから。
それに、笑っていないと精神的にキツいし、オレはそんな強い人間じゃない。
だからオレは、
みんなの前で、
家族の前で、
取り繕って笑っていた。
高校生になって、野球部に入って楽しくてほんとに笑う事も多くなった。
でも、心の底から笑った事はまだない。
"笑う"って事が癖になっていたのかもしれない。
癖って気づいたのはここ最近。
[『何かあんた気にいらないんだよね!いっつも、ヘラヘラしちゃってさ、その笑顔が嘘っぽくて本当にイヤ!』]
霜沢さんに、こう言われてから。
"嘘っぽい笑顔"あながち間違ってはいないかもな………。