ガタガタとみんなが新しい席に移動する音が耳に入る。
アタシは移動しなくていいので、机に肘をついてぼーっと、外を見ていた。
『(…そういやアタシの隣りの人誰だろー)』
そんな事を思っていると、隣りの人が来たのだろう。ガタガタと隣りから音がする。その音は鳴り沈み、椅子に座る音が聞こえた。
「ふー、結構いい席だなー」
…この声はまさか……!!
アタシは、バッ!という効果音がついていいほど、勢いよく隣の席のヤツを見た。
「あっ、隣り霜沢さんなんだー。これからよろしくね」
そこにいたのは、アタシの気に入らない笑顔をこっちに向ける"栄口 勇人"だった。
アタシは開いた口が塞がらなかった。
そして今にいたるわけです。
もう、本当に最悪…。
***
…休み時間
『しーちゃん!隣の席が栄口だって事知ってて変わった!?』
「うん」
『……な…んで』
「だって、アンタ栄口くんの事全然分かってないじゃん。隣りの席だったら、嫌でも栄口くんの事好きになるよー」
ニシシと悪戯っぽく笑っているしーちゃんを、この時始めて憎らしく思った。
…これからアタシが"栄口 勇人"を好きになる日がくるのかな…。
しーちゃんごめん…。そんな日来ないかも…。
―――――――
この"好き"は、友達としての"好き"です。