『伝えたいことなんて単純だけどさ、なかなか伝えられないよね』
「はぁ?」
机に頬杖をつきながら、宿題をしている目の前の真田が、わけのわかんねーことをぽつりと言い放った。
『まぁ、例えばだけどさ、好きな人に"好き"っていう2文字を言ったらいいだけなのに、なかなか言えないじゃん?』
「…まあな。なに、真田好き奴とかいんのかよ?」
おい!なに俺墓穴掘ってんだよ!?ただ傷つくだけなのに…はぁー。
『私?いやいや、好きな人なんていないけど』
「…いないの?」
『うん』
うわっ、多分俺今、すっげーマヌケな顔してるよ。てか、好きな奴いないんだ?よかったー。
「じゃあ、なんでそんな事言い出したんだよ?」
俺が質問すると真田は、宿題の手を止めて、少し困ったような顔して、俺を見てくる。
『…もういいや、言うわ』
え、何を!?
俺はすごい、ドキドキしてきた。自分でもわかるぐらいだ。
少し、沈黙が流れた後、真田が口を開いた。
『花井、チャックあいてる…』
伝えたいこと
(…え!?)
(早く閉めろバカ!)