勇人と私の関係は、良く言えば、幼なじみ。悪く言えば、腐れ縁。小さい頃から兄弟みたいに育てられた私は勇人の事を異性として見ていなかった。


「早くしないと遅れちゃうよ!」

『勇人まだ大丈夫だってー』


それは、高校生になっても変わらない。


「もー、そんな事言っていつも遅れるだろ。走るよ!」


『えっ、ちょっと?!』


そう言うと、勇人は私の手をとり走り出した。


「おっと、危ない」


『へ?っぶ!』


走ってる途中、勇人がいきなり止まったせいで、私は勇人の背中に顔面から激突した。

イタタタタ…。何でいきなり止まったりするのさ。

勇人の後ろにいたので、前が全然見えなかった私は、勇人の後ろから顔を出し、勇人の目の前の光景を見た。

そこには、私達と同じように登校してる低学年ぐらいの小学生の子達がいた。
私達は、小学生の子達が前を通り過ぎるまでただ立って待っていた。

その時ふと思ったんだけどさ、勇人の手ってこんなに大きかったっけ?それに、背も私より高くなってる?だって私、勇人の後ろから前見えなかったもん。

…勇人も、"男の子"から"男"になったんだなぁ。

てか、勇人ってちゃんと見たら、結構格好いいんじゃ…。

なんだろ、意識したら急に恥ずかしくなってきた。
手を繋いでいる右手が、どんどん熱を帯びていくのがわかる。私は、恥ずかしさに耐えられなくなり、勇人の手からするりと抜け出した。


「?。どうかした?」


『………何でもない』


私は勇人に顔を見られないように俯いた。きっと顔が紅くなってるだろうから。

少しの沈黙の後、勇人が口を開いた。


「何か考えてる?」


『へ?なんで?』


私は、勇人の顔を見た。


「だってさ、小さい頃から何か考える時、いつも口もと抑えてるから。ほら」


そう言いながら勇人は、私の口もとに指をさした。
どうやらこの行動は、私の小さい頃からの癖らしい。気付いてなかったけど…。


「幼なじみだから大半の事は、知ってるつもりだよ?」


勇人はニコリと笑った。


幼なじみだから大半の事は知ってるか…。

私も勇人の事なら、大抵の事は知ってると思ってる。パワプロが好きな事とか、魚卵が嫌いな事とか、緊張したらすぐお腹痛くなる事とか。でも、それは今までの事で、これからは変わっていくんじゃないかな。だから、私の知ってる勇人じゃなくなるかもしれない。
それに、勇人にも彼女が出来て、その彼女の方が勇人の事を私しより知ってしまうかもしれない。
なんだろ、そう思うと胸がモヤモヤする…。


『…勇人』


「ん、何?」


『勇人さ、私の知らない勇人になっちゃう?』


「なに、いきなり!?」


『だって、勇人に彼女が出来たら勇人変わっちゃうかもしれないじゃん…。私の知らない勇人になっちゃうのが嫌なの…』


あー、言ってしまった…。私は勇人をチラッと見た。

すると勇人は、どうしたことかいきなりその場に、しゃがみこんだ。


『ちょっ、勇人どうしたの!?お腹痛い!?』


あーどうしよー、救急車?!110番?!って、ケータイ鞄に入ってないじゃん!!こんな時に忘れるとかどんだけ役立たずなの私!!

私はあたふたしていると、勇人が顔だけ上げて、私を見てきた。




「腹痛なんかじゃないよ。…その、何かそんな事思ってくれてるなんて、嬉しくて…」


へっ?


「同じ事思ってるんだなーって…」


そう言うと、ほんのり頬を染めた勇人はさっきみたいに笑ってくれた。
そんな勇人を見て、私も顔が紅くなった。



 なんだ気持ちは
   一緒じゃないか




((……。

(あっ、電車!!

(あぁぁ、忘れてた!!乗り遅れるー!!



end


――――――――
君のとなり」さま提出。

結局2人は、電車に乗れなくて遅刻しました(笑)





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