カッカッカっと、先生が黒板に問題を書いていく。
「じゃあ…真田。この問題解いてくれ」
問題を書き終わった先生は、オレ達を一旦見回してから、真田さんを指名した。
『あ、はい』
ノートを写していたであろう真田さんは、先生に指名されガタッと音をたてて席を立ち、黒板の前に行く。そして、綺麗な字で、カカカッっと答えを黒板に書いていった。
答えを書き終わった真田さんは、自分の席に戻り、座った。
「正解だ」
先生がそう言いながら、真田の書いた文字の上から赤い丸を書いた。
いきなりだけど、真田さんは我がクラブの大先生、西広よりも頭が良い。更に、オレは眠くて寝てしまってたんだけど、入学式の時新入生代表で挨拶してたって巣山が言っていた。
そんなに頭が良いだけあって、真田さんは、いつも1人で机に向かっている。
休み時間だって、朝のSHRが始まる前だって。てか、授業中寝ている所何て見たことがない。
そんな真田さんが、放課後の今、オレの目の前で落とし物をした。
真田さんは、それに気付いてないらしく、スタスタと人混みを分けて歩いて行ってしまっている。
オレは、真田さんが落とした物を拾い上げ、真田さんを呼び止めようとした。
「真田さん、落とし物!!」
結構大きな声で言ってみたが、周りの人の声で、オレの声はかき消されたようだ。真田さんは、止まることなく歩いている。
しょうがない。
そう思い、オレは人混みをかき分けて真田さんを追い掛けた。けど、真田さんは歩くのが速いのか、それともオレが人混みをかき分けて歩くのが下手なのか、どんどんオレとの間がひらいていく。
やっと人混みから解放されたオレは、校門辺りにいる真田さんに向かって走り出した。
「真田さーーん!!」
オレが彼女の名前を呼ぶと、今度は聞こえたようで、立ち止まりこっちに振り向いた。
『栄口くん?どうしたの、そんな慌てて』
真田さんと話すのはこれが初めてだ。どうやら、オレの名前を知っていたらしい。意外って言ったら失礼かもしれないけど、意外だった。
「あの、落とし物」
『うわっ、アタシ何か落としたの!?ありがとう!』
そう言いながら真田さんは、照れ笑いしながらオレが差し出した巾着を受け取った。てか、真田さんって、こんな感じだったっけ?もっとこう、クールな感じだと思ってた。
『いやー、本当にありがとー!これは、私の大事な物だからねー』
「それって何なの?」
無意識に口から言葉がでていた。ただ、真田さんの大事な物に興味があったからだと思う。でも、口に出した瞬間、しまった!と思った。
だって、ただのクラスメート、ましてや、今日初めて喋った奴に自分の大切な物を見せてくれと言われても、あまり気は進まないだろうから。
「あっ、ごめん、でしゃばりすぎた。気にしないで」
オレは、早々と謝った。
『いや、別に気にしてないよ。見たいの?別に見て良いよ』
真田さんは、そう言うと、巾着をオレに渡してきた。
えっ、見てもいいの?
オレは、真田さんから巾着を受け取る。
少しドキドキしながら、オレは巾着を開けた。
そこには、
「…PSP?」
ゲームが入っていた。吃驚した。
え?何でPSP?あの真田さんてゲームするの?
オレの頭の中は?でいっぱいになった。
『うん、PSP。ちなみに中身はパワプロ!』
Vサインしながら、オレに言ってくる真田さん。
「…真田さん、ゲーム好きなの?」
『大好き!!家でゲームしたいから、めんどーだけど学校で勉強終わらすぐらい大好き!』
え?てことは、いつも学校で勉強してるのって、家でゲームする時間を増やすためだったのか…。
「ぷっ、アハハハハハ」
『何で笑うの!?』
「アハハハハ、ごっごめん、ちょっと、意外だなって。アハハハハハ」
『そ、そんなに笑わなくたっていいじゃん!』
そう言う真田さんの顔は赤かった。
その後、真田さんのバスの時間が近くなり別れた。
『ばいばい。また明日ねー』
「うん、ばいばい」
今日は、真田さんの意外な一面が見えて楽しかったな。それに、その一面をオレしか知らないと思うと、なぜか優越感に浸れた。
あっそうだ、明日オレもゲーム持ってきて一緒に対戦しよー。
オレは軽い足取りで教室に向かった。
彼女の意外な一面
(栄口、こんな所に居たのかよ!?早く来ねーと、監督怒ってんぞ!!
(まじで!?