−…ダダダダダダ
足音が、どんどん近づいてくる。
「あっ、来た…」
−バンッ
扉が勢いよく開いて、咲が来た。
『勇人ーー勝負だーー!!!』
「はい。じゃあ、やろうか」
―――…
「はい、オレの勝ちー」
『くっそー。…覚えてろー!』
いつものように捨て台詞を吐いて、咲は帰って行った。
ここ最近、幼なじみの咲が毎日のようにパワプロ勝負を挑んでくる。でも毎回オレが勝つ。当然だけど。
まぁ、それがいつの間にかオレの日課になっていたわけで。
−…次の日
『いざ、勝負勝負ーー!』
いつものように、咲が来た。今日もオレが勝って終わり。だと思っていた。でも今日は、少し違った……。
『やったー!勇人に初めて勝ったー!』
「うわー、咲に負けたー。てか、何か強くなったね?なんで?」
『ふっふっふ。実はね、毎日勇人と勝負した後、しょうちゃん家でしょうちゃんと特訓してたんだよ!!』
……しょうちゃん家でしょうちゃんと特訓?
なんだか知らないけど、咲がしょうちゃんの家に毎日行ってるって聞いて無性にイライラした。
笑顔で言っている咲の顔を見たら、余計にイラっとした。
「……ねぇ、今日はもう帰ってくれない?」
『えっ?なん「いいから、帰ってくれよ!!」』
オレは咲に怒鳴っていた。自分でもビックリした。
急いで咲を見ると、驚いていて泣きそうな顔をしていた。
「えっ、あっ、ごめん。今のは」
オレが「今のは違う」(何が違うのか分からないけど)と言い終わる前に咲はオレの部屋から出て行った。
追い掛けようとも思ったが、追い付いたところで何を行ったらいいの分からなくて、追い掛けなかった。
まぁ、咲だったら明日になったら何事も無かったかのようにパワプロをしに来るだろ。と、思ってもいたから…。
けど、一週間経っても咲は来ない。学校も、咲は、しょうちゃんと一緒の狭山高校だから会ってもいない。
「勇人、最近咲ちゃん来ないけど何かあった?」
「アニキ、オレ咲ちゃんと遊びたい!」
咲が一週間も来ないと、ねーちゃんは心配するし、弟は人の気も知らないで咲と遊びたいとか言うし。
「なんもないよ」
もう、そう言うしかなかった。
−…
「……咲来ないかな」
オレはポツリと零した。
それは、誰もいない寂しい部屋を一層寂しくした。
咲がいないと何か……
その時、
『たのもーー!!』
部屋のドアが勢いよく開き、一週間前からずっと聞いていなかった彼女の声が、部屋いっぱいに響いた。
「咲!!」
オレは、嬉しさのあまり咲に抱きついていた。
それに当然驚く咲。
『ちょっ、勇人どうしたの?』
「なんでもない。…それより、パワプロでもしよっか(ニコッ」
『うん!』
やっぱり、
キミがいないとつまらないね。
それと、咲がしょうちゃん家に行って、イライラした理由に気付くのは、また別の話。
end
・おまけ・
「…咲、この前はゴメンな。怒鳴ったりして…」
『ふぇっ?あー、あの事か。全然気にしてないよ?』
「えっ!どーゆうこと!?怒鳴ったこと怒ってないの?」
『うん。あれは、勇人が私に負けて悔しかったから、怒鳴ったんじゃないの?』
「…うん、そう(なんか違う気が…)。じゃあさ、何で一週間も来なかったの?」
『それは、勇人特訓する時間欲しいかなー。って、思ったから』
「あっ、そうなんだ。…ありがとう?」
『いいえ。どったまして』
「(…うーん?)」
―――――――
栄口とパワプロをやる、のほほんとした話にするつもりだったのに、全然違くなってしまった(´∇`;)
ついでに"しょうちゃん"とは、11巻に出てくる、栄口のシニアの時の友達です。