今日の私はいつもとは少し違う。
今日は、肩までかかる髪の毛を横でまとめている。
めんどくさがりの私が何故髪をくくっているのかというと、昨日の話しにさかのぼる。


〜昨日〜

「なぁ、泉のタイプの子ってどんなんなんだよ?」

『!?ゴホッ!』

それは、私が友達と一緒にお弁当を食べている時だった。
いきなり浜田から泉への質問が耳に入り私は、食べていた卵焼きが喉に詰まる。

「…いきなりなんだよ」

「いやっ、ふと気になってさ。で、どういう子が好きなわけ?」

『(浜田ナイス質問!)』

私は小さくガッツポーズをする。

「はいはい!俺は、ショートカットの子!髪の毛くくってんのも好きだけどねっ」

『(くっ、田島じゃなくて、泉のが聞きたいの!)』

いきなり話に入ってきた田島に私は、少し苛立ちを感じた。

「あー、俺も髪くくってんのは好きだな」

『(えっ!?)』

「特に、横でまとめてるのが好き」

『(マジっ!?)』


あー、田島この話題にしてくれてありがとう。
さっきの苛立ちは何処に行ったのやら、私は田島に感謝してた。

まぁ、お分かりのとおり私は泉が好きだ。
泉とは、仲が良くも悪くもない。席が隣りでちょくちょく話すぐらいだ。
少しでもいいから、泉の好きなタイプに近づきたくて、今に至る。

『(泉、気づいてくれるかな?)』


期待と不安の中教室に入る。

『おはよう』

自分の席に行き田島達と話している泉に挨拶をする。

「はよー」

それだけ言うと、また田島達と話し始めてしまった。

『(えっ、それだけ!?)』

私が落ち込んでると、

「あっ、咲髪の毛くくってんじゃん!似合ってんぞ。可愛い(ニカッ」

…うん、田島気付いてくれてありがとね。まぁ、気づいて欲しい人に気づかれないと意味ないんだけどさ…。


「なぁ、泉もそう思うだろ?」

『!?』

田島から泉への質問に、私の心臓はドキッと跳ね上がる。


「…別になんとも。ってか、興味ないし」


……少し期待してた。
泉が、お世辞でもいいから可愛いって言ってくれるかもって期待してた。
あー、いくら私が泉のタイプになれたって、恋愛対象にすらはいってないんだ…。そう思うと目頭が熱くなる。涙が止まらない。

『ちょっと、保健室行ってくる』

私はその場に居られなくなり、そう言い逃げ出した。***

『ハァ…ハァ…』

どれだけ走っただろう。もしかしたら、そんなに走ってないのかもしれない。

『ちょっと…休も…』

息をととのえてる私は、徐々に大きくなってくる足音に気づかなかった。

−タッタッタッ

「ハァ‥ハァ…真田!」

振り返ると、そこに泉がいた。

『−っ!?…なんで泉がここに居るの!?』

泣き顔を見られたくなくて私は泉に背中を向ける。

向けたとたん泉に後ろから抱きしめられた。
顔に熱が集まる。

『なっ!』

「…お前に興味無いことなんてないし!むしろ、気になりっぱなしだよ!」



『…うっ、嘘だーー』


「嘘じゃねー!今日だって、真田がこんな髪型で来るから直視出来なかったんだよ!」


衝撃の言葉に振り返ようとするが、泉に強く抱きしめられ振り返れない。

「…こっち向くな」


『なん…で?』


「何でも!」


チラリと見るとあたしと同じくらい顔が赤い泉がいた。


「…好きだ"咲"」


『!? …うん、私も"孝介"の事が大好きだよ』



end


―――――――
泉ぽくなったかな?




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