幻に愛を囁いて
「もし、さ、君が女だったら」
クリスマスのイブイブに、よりによってひとりで会いに来るような馬鹿なガキ相手にしょうもない話だなぁ、と思いながらも思い付いた言葉は勝手に口から出て聞いてるやつに咀嚼されていく。垂れ流してるだけなんだから、そんな講義みたいに真剣に聞かなくてもいいってのに、バカバカしい。
「そしたらもう少し違う展開だったかもねぇ。女子高生ってほら、せっかく綺麗な時期なんだからもうちょっと愛でて可愛がってから突き落としてやれたのに」
「結局殺すんじゃないですか」
「全然違うよ、落とすだけだし」
こーんな血なまぐさい展開にはならないで、どっかのショートショートみたいにあっさり終わってすっきりしたクリスマスを迎えられたかも。
「俺は男ですけど貴方が好きです」
「僕は嫌いだよ、気持ち悪い」
お互いぼたぼた血を零しながら、隠す必要の無くなった本音もぼろぼろ落としていく。不本意ながら背負われているから灰色の髪に血がこびりついているのが見えて、また女だったらなぁ、と惰性のように考える。
イラつくくらい髪サラサラだし、料理出来るし、顔は悪くないし、なかなかな体型になりそうだし、しかも気が利く。こんなんが告白してくれたらそりゃあもう便利なのにな。
「君が女だったら、愛してるって一回くらいなら言ってあげるんだけどなぁ」
「俺も、言われたかったです」
「それはもういいよ」
いじめかというくらいに斬られて殴られて説教されてからさり気なく混じる好意が煩わしくて、銃で殴ってみても楽しそうに笑われて困る。
あぁ、明日からは会わなくて済むのか。
「好きだよ」
踊らされていると分かっていて、尚更大きく手足を振る愚かさが。
少年が息を詰めたのが分かり、滑稽さに声を上げて笑った。
10.06.13(qufa)
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