柔らかく華と逝け | ナノ


松本先生が来てから少しして、新撰組の彼らは羅刹と呼ばれるようになり、新撰組は羅刹隊と、そう呼ばれるようになっていた。なんでも雪村綱道の知り合いである松本先生は話を聞いていたらしく…彼によって羅刹について沢山の収穫があったらしい。

例えば、羅刹を作るための材料は変若水という薬で外国でもいくつか出回り様々な呼び名があるらしい。

つまるとこ、驚異的な力をもたらす、不老不死の霊薬である。


まるで、夢のような話…。



そして今日。
隊士らが体調を崩す原因は何か。ずばりここの不衛生さだ!というわけで掃除にとりかかっている。

掃除なんて久しぶりにした、と口々に言いながらも手を動かしていく。埃を落とし、それを箒ではき、雑巾をかける。屯所にいる隊士総出である。これなら巡察のほうがいい。


そしてその翌日、掃除の成果を見るために松本先生が再び屯所に訪れた。


「うん、まあまあ綺麗になったじゃないか。」


彼は豪快な笑顔を見せながら言った。


「そりゃあ死ぬ気で頑張ったからな。」

「でも総司は一日休んでただろ?ずるいよなー。」


得意気に言ってみせる永倉さんに対し、平助はどこかふて腐れながら言った。


「土方さんが過保護なんですよ。」


「うるせえ。お前が変な咳するからだろうが。」


本気で嫌そうな言い方をする沖田さんに、土方さんは苦い顔をしている。まったく…この二人は。


はあ、と無意識なため息。


だがひとつ、気になることがある。沖田さんの咳だ。風邪にしては拗らせてるわりに元気だし声も正常。なのに咳だけが酷くなる。


ひとつ、思い当たる病があった。


土方さんが彼を心配するのはそれで?でも…土方さんはご家族がその病で亡くなっていると聞いたことがある。もしそうならもっと過剰な反応をしそうなものだが…。


よく、わからない。



「しかし、やはり片付くと気分が良い。」


「まあな……見違えたもんだ。これはこれで悪くねえ。」


斎藤さんと土方さんが話していた。


「よし。これからは毎日掃除するか!」


主が意気揚々と言うので私は思わず周りを見てしまった。また掃除!?


「おう、頼んだぜ、平助!」


慌てた私はこの人物、永倉さんを見て微妙な気持ちになってしまった。


「なんでオレだけなのさ!?体力自慢の新八っつぁんが怠けてどうするんだよ!」


ちょっとまじな平助。もっと言ってやれ。


「あ、私も手伝いますよ?もちろん。」


怖ず怖ず、雪村さんが手を上げた。確かに、今日1番の活躍は彼女。やはり普段からやっていると身につくのだろう。誰よりもてきぱきとしていた。


「お、そかそか。じゃあ明日から二人でがんばろうなー!」

「おいおい…ちょってまてぇい!誰もやらねぇとは言ってないだろ?」

「お?……まだごみがあるじゃねえか。ちょうどいい、捨ててこい新八。」

「いや、だから明日からだろ?なあ、平助!」


土方さんも鬼だな。私も周りにつられ、口に笑みを作った。


「片付けたそばから暴れるな。埃が立つ。」


斎藤さんも鬼だった。




0810