空を見上げた | ナノ
失うコトが恐い


スタスタスタと、おもむろに歩く。行き先なんて決まってない。俺がこんなに苛付くのは、ほんの少し久しぶりかもしれない。奥歯を噛み締めた時に歯が軋んだ。何に苛付くのかは自分では分からない。ただただ込みあがって来る怒りが心を支配するだけ。自室について強い力で戸を閉めた。ガタンッと言う音に気付いた、所詮八つ当たりだと。ずるりっと背を戸に預けて座り込む。握り締めた手の平が痛い。


「……刹、おるやろ?」


戸越に聞こえた彼方の声に素っ気無い返事を返した。


「なにか用事か。」


「いいや、別に用は無いねんけど。ただ、ちょっと心配しただけ。」


「心配…?」


「せや、昔から嫌いやったやろ?なんて言うんかな。こう、周りの急激な変化って言うんか?」


彼方の言葉に胸の中に溜めていた熱い息を吐き出した。


「図星やろ?」


「図星も何も分かってるんだったら、いいじゃないか。俺を試すようなことはするな。」


「堪忍なぁ、これが性分やねん。」


嫌味ったらしい言葉は逆に皮肉に聞こえて、笑みが零れる。

「ほんと、彼方には叶わないな。」


幾分か気分がすっきりして、部屋から出ると柔らかい笑みをした彼方がいた。反射的にその笑みを気色が悪いと文句を言うとそれが苦笑いに変わった。ふっと耳障りな声が近づいてくることに気付いた。


「ほんとお前は喧嘩っぱやいからな。」


「ですから、喧嘩じゃないです。」


少し遠めな距離だが、向こうもこちらに気付いた。自然と目が鋭くなるのを感じる。一歩一歩とまた近づいてくる足音に舌打ちをした。隣の彼方が心配そうに眉尻を下げているのが見える。通り過ぎに、目があった。軽い殺気を放ってしまったのに、彼方がそれを制す。……が、日向と言った奴は殺気を俺に返してきた。それにザワリッと身の毛が騒ぎ立った気がする。刀に伸ばしかけた手を彼方に掴まれて、


「我慢し、今はまだ早い。」


戦意喪失、……通りすぎて行った背を見た。壊れていく何かが許せない。




2010/11/08


あ、あぁぁぁっ!


なんか刹が暴走してる!!
やばい、やばい出番の出し方が分からない!

すみません、よろしくおねがいします!!


執筆者⇒芹


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