万事は君が為 ぶらりぶらりと人間の知識を学ぶため、修業をしながら旅をしていた。そんな時、どこぞのあんちゃんに届けられたのは主人である原田左之助からの手紙だった。 試衛館という道場にいる と書かれたそれ。つまりは帰って来いということ。そうして私は試衛館という少し古い道場にやって来たわけだが。 近藤さんという方を筆頭にあれよあれよという間に話が進んでしまい、今では新人だ!なんて言われている。中には女が?なんて視線もあるが気にしない。 「土方、さん…でしたか?よろしいのですか?」 「まぁ、近藤さんがあれじゃ仕方ねぇだろ。」 彼は眉を下げながら苦笑いをした。 「…そんなものですか。」 「そんなもんなんだよ。」 と、会話をすると横からここの門下生であろう人間が沢山質問してくる。 出身は? 蝦夷です。 歳は? お酒は飲めます。 剣使えるか? 自分は忍ですんで。 「「………忍?」」 顔を合わせる者からぎょっとする者まで。何かまずいことでも言っただろうか。もんもんと頭を巡らせる。 「慧。」 長年共にしてきた赤髪の彼が私を呼んだ。 「主、」 呟くと周りがまたぎょっとする。なるほど、となっている者ばかりだ。そんな周りは結構単純なのかなんなのか、忍なのかー、と既に受け入れている。近藤さんは感動していた。そうすると今度は私と彼を囲い、周りが雑談を繰り広げる。久しぶりに会ったのにまともに挨拶も出来ない自分にため息をついた所で周りに道が出き、一人の少年が前に来た。 「…あんた、誰?」 明らかに警戒、敵意を含んだ声。その声は男にしては高く女にしては低い声。だがやはり男と女では体臭というものが根本的に違うため彼が彼女であることがわかる。 「聞いてる?」 苛立ったように私に問いかける彼。 「聞いています。私は日向慧。忍を生業としていますが、今日からここでお世話になります。失礼ですが…貴方は?」 私の問いかけに彼女は西条刹だと答えた。 「あんた、女がここで暮らす気?」 「はい。よろしければこちらで剣術でも習おうかと。基礎的なことしかできません故。」 私がそう言うと彼女は何処かつんつんしたように言った。 「剣術でもって、剣なめんな。」 いや、これは怒っているのかも知れない。まぁ、確かに剣術"でも"は悪かったかな。 「はーい、お二人さんそのへんにしときや。」 ぽん、と私と彼女の頭に手が乗ったのは同時だった。手を頭に乗せたまま上を見ると綺麗な顔と目がばちりと合った。 「うわー。なんかめっちゃ綺麗な顔してんなー。」 ぷにぷにと頬を揉まれる。綺麗な顔、とは私だろうか。とりあえずそこそこの美人といえる擬態を持ってはいるつもりだが…。 「……離せ。」 ぺい、と頬の手を投げ捨てる。お、と反応した後敬語が崩れた私に周りはまたぎょっとした視線を向けた。 目の前ではなんだか馬鹿らしいとでもいいたげな西条さん。 「………。」 「………。」 しばらく視線がばちばちと絡み合うが私は視界に入って来た手に目を遮られる。 「お前なぁ。何喧嘩ごしになってんだよ。」 彼の声が頭上から響く。 私はぐりんと上を向くと 「喧嘩じゃありませんのでご安心を。万が一喧嘩だとしても全て私の方で処分しますので。」 と言うと彼がなんだが口角をひくりと上げた気がした。 前では 「あの子忍なんやろ〜。そら長刀なんて持たんねんからしゃーないわ。」 と慰める彼。 私の視線に主人は彼の名前が瑠璃崎彼方という名前だと私に教えた。 「俺は、認めない。」 彼はそう言って去って行った。 堪忍な、と言いながら瑠璃崎彼方も後を追った。 私はもんもんと考える。数年間、主の元を離れ相手の感情を取り入れる努力をしてきたつもりだが、イマイチわからない。何を認め、何を認めたくないのか。その基準もわからないし何かが何かもわからない。 「……どうやらまだ修業がたりないようです。」 「慧?」 「…人間とは、面倒ですね。」 主人を見るとぐじゃぐしゃと頭を撫でられた。 20101107 お、おおぉぉ! 刹が悪役じゃないか!なんか捨て台詞みたいな、ほんとださくてごめんなさい。 どうか繋いでください! 因みに慧は今はまだ感情が豊かでないということで。これからです! 執筆者⇒雪子 戻る |