我が光よ 左様ならば ある日、平助が持ってきた浪士組募集の話に我々の道場の面子の半数が参加を決めた。そりゃあ武士になるのを夢に見ていた人間にはもってこいの話だろう。 「主は、参加なさるのですか?」 「まあ、仲良かった面子が行くんだし…近藤さんには面倒かけちまったからな。」 「そうですか。」 「お前は?」 「?」 「お前はどうすんだ?」 慧は膝をつき頭を垂れながら言った。 「主と共に。」 主の進む道。私が必ずや支えましょう。 *** 双狐 暗殺などを請け負う忍のような仕事だ。いったい土方さんはどれほど先を見据え、この判断を下したのだろう。 瑠璃崎さんは西条さんを思い、双狐に入るのをとめようとしたが結局は二人で行うと決めたらしい。 二人が出て行った部屋はなんだか神妙な雰囲気だった。 「土方さん、」 私が名前を呼ぶと土方さんは腕を組みながら私を見た。 「何故、忍である私にあの役割を渡さなかったのですか。」 土方さんは小さく息を吐いた。 「それは俺も勿論考えた。だが俺はお前に向かない仕事だと判断した。」 土方さんの言葉にガラになく頭に血が上った。幼い頃から豆ができるほど血の滲む努力をしたんだ。それを………。 「………忍に、忍の仕事が向かないと言うのですか。」 「そうじゃねえよ。」 「なら、何故………」 隣に座る主も不思議そうに土方さんを見ている。 「お前は組織のため、というより原田が動きやすいほうにことを運ぶだろう。」 「それは貴方がたの利益になるかと。」 そうじゃない、土方さんは首を振った。 「……きっぱり理由を言うなら、完璧すぎるんだよ。」 「それ、どういう意味です?」 沖田さんが不思議そうな顔をし、言った。 「お前に任せればあの二人が戸惑う仕事も軽くこなすんだろう。だが、忍なんてものはもともと、書物。または空想の話だ。いくらそれらしい格好をし、それらしい芸当をしようが所詮は人間だ。だがお前を見ている様子では一瞬で着替えたり移動したり……。そういうのとは勝手が違う。」 「……。」 「あまり細かくやってもしばれたとき。幕府から圧力をかけられでもしたら終わりだ。」 土方さんは言った後に井上さんが煎れた茶を啜った。 簡単に言うと、不器用。もっと簡単に、私を含む人間を守るためと言えばいいものを。 主を見ると遠回しだが理解したのか苦笑いしていた。 「…まあ、もしあの二人が戸惑うことがあればそのときは頼んだぞ。」 「私も組織の一員となるのです。なんなりと。」 周りは小さく笑っていた。チュンチュンと小鳥が鳴く。穏やかな風が部屋を抜けていく。 もう少しで旅立ちだ。 小さく、少しだけの思い出を胸に、私たちは進む。 *** 「瑠璃崎さん、西条さん。」 「ん?」 夕日の中。縁側に腰掛ける二人にお茶とツネさんからいただいた団子を渡す。西条さんにありがとう、と言われたときには驚いたがいつも通りの対応をした。 「………ここに、」 「刹?」 「ここに、また…戻れるだろうか。」 西条さんはお茶を飲みながらぽつりと呟くように言った。瑠璃崎さんと私は顔を見合わせた。彼女も、やはり不安はあるのだろうか。 「………忍は、目的の達成は勿論ですが主のもとに帰るのを目標とします。」 西条さんと瑠璃崎さんが私を見ているのを気にせず私は沈み行く夕日を見ながら言った。 「ここを、貴方の原点にする。そうすれば、戻れます。」 「………そうだな。」 「ええこと言うな〜。」 主以外とのこのような穏やかな時間がまさかこの面子だとは思わなかった。 お互い、成長したか。 少なからずここは私に良い影響をもたらしたのだろう。 「では、私は荷造りに行きます。片付けお願いしますね。」 「え!?ちょっ!?」 すくっ、と立ち上がり瑠璃崎さんに言う。 忍術で移動する前見たのは小さく微笑む彼女の顔。 私たちは、時代の中で止まることを許されない。だが、それでいいと思う。私は、忍。ただ、あの方を信じて進むだけ。 夕日が沈み、辺りは暗く静けさを漂わせた。 to be continue... 20101208 わ、中途半端! 史実は藤堂さんが話持って来たんだっけ…。違った!? まあ、夢なんでね。はい。 とりあえず過去はこれでおしまいです。節煙ながら雪子が閉めさせていただきました。 最後に距離縮めた…よね? では、続きは原作編でお会いしましょう! …原作編って、なんだかなあ。まあ、原作で! 今後もお付き合いくださいませ。 執筆者⇒雪子 ⇒芹(従者) ⇒雪子(悲しい人) 戻る |