天を見据えて地を蹴った 「なんやて!!どういうことや土方さん!!」 早朝、呼び出されたと思えば幹部に相当する顔ぶれがとある部屋へと集まっていた。その中にはもちろんあの日向慧もいた。 「これから俺達はこの試衛館を改め、"新選組"と名乗る。だが、それには此処に集まっている幹部候補達はそれぞれ組を担うことになる。もちろんお前たちにも組を担ってもらうつもりだった……が、見ている限り団体行動は向いてねぇと俺は判断した。よって、お前たち二人には"双孤"と言う名の元に動いてもらうことにする。内容を一通り言えば"暗殺""監察""隠密"主にこの三つを原則とする。まぁ、組長よりは自由な役柄だ。もちろん個人行動、命令を無視しての行動も認める。」 「近藤さんがいないのはそれに関係ある?」 見据える物は目の前の人物。ただ静かに返された言葉にそっと目を閉じて安心した。 「そうか。なら俺はその仕事を貰う。」 それは罪、重ねて重ねて重くなる――罪。 「ちょっと、まちいや!!わかっとんか刹!?それは何処で死のうがほっとく言われてんのと一緒なんや!!もし仮にそんなことが起こったらお前は!!」 彼方が刹の肩を掴んでまで講義するのは当たり前のことだった。ずっと傍らにいた人物が何時死んでも可笑しくない立場にあろうとするのだ。 ――しかし、彼方は怯んだのだ。刹の並ではないような殺気と心の奥底に眠る激情に気圧されて…。 「彼方、俺は受ける。」 刹の不適な笑みに彼方は苦笑を漏らして思った。 (ほんま、かなわへんわ) 「土方さん、…僕も受けます。」 「全く無茶するで。」 *** 二人同じ部屋で倒れこんでいた。 片手にはそれぞれ"双孤"として貰った色違いのお面を片手に。 「それにしても難儀やな、刹とおったらほんまに難儀なことばかりや。」 「そうだな、悪いと思ってるよ。」 「言葉だけは達者やわー。」 二人で話しているのはもう夕焼けが沈みかけの頃、考えることや動くことが多すぎて忙しい日だった。 そして、この日をきっかけに二人はあることを知った。"羅刹"人間が持っている以上の回復力と力を手に入れる薬。異国では又の名をえりくさ。だが、日の下を歩くのは困難で人間としての心を忘れ化け物とまでなってしまう。恐ろしい薬。 「僕等、やっとここまで来たんやな。」 「あぁ…。」 「長かった。」 お互い大切な人から譲り受けた刀を片手に、二人は立ち上がった。 ――カタリッ。 部屋の戸が開いて刹達を見ている人物は笑った。 「様になってんじゃねぇか。」 2010/12/08 書きたかったシーンが書けて満足です。雪子ちゃんに、後はまかせた!!みたいなコメ貰ったとき焦ったけど。 ちゃんと書けたよ! 過去編、そろそろ終わりだけど楽しかったなぁ!! 雪子ちゃん、次よろしくね!! 執筆者⇒芹 戻る |