譲れない未来の為に 「……。」 目を空ければ気持ちよさそうに眠る総司の寝顔。動こうにも腰をがっちり寄せられているので動けない。結論、大人しくしていることにした。 「…。」 それにしても綺麗な顔つきだなと思った。幼い頃から一緒だがこうしてまじまじと相手の顔は見たことが無い。唯一動く手を相手の頬へと持っていく。ぺたぺたと触れてその手が唇へと当たった。ふっと笑ってもう一度目を瞑る。温かさ欲しさに擦り寄れば、頭上から小さく笑う声が聞こえた。 「人の顔を見たり触ったり、楽しい?」 「狸寝入りか。」 顔をあげようとすれば、逞しい腕でぐっと頭を押さえつけられた。びくともしない腕にむっとなりながらも、抵抗は無駄だと諦めた。 「あったかいね。」 「俺は苦しい。」 不機嫌丸出しな俺の声にまた総司が笑った。なにがそんなに面白いのか、訳がわからない。 「やっぱり刹刹は小さいね。」 「…。」 鳩尾に一発お見舞いしてやろうかと思った。小さいのは当たり前でそれは俺が気にしていることだからだ。 「いい加減離してくれないか…?」 「それは無理かな。」 強い力で引き寄せられるとさらしを巻いている胸がさらに苦しくなった。 「ねぇ、もし僕が。君に女の子らしくして欲しいって言ったらどうする…?」 「女装とかじゃ無くてか…。」 「うん。」 刹は急に黙り込んで目を瞑った。それは総司に苦笑いを浮かべさせる。 「無理だ。俺はそんな道を捨てた。武士道に女々しい考えはいらない。俺はただ剣に生きていつかあの人を守る為に死にたい。それだけは譲れないんだ。」 「やっぱりそうだと思ってた。」 ゆっくりと解かれた腕の力に刹は総司を一度抱きしめて言った。 「でも、総司には感謝してるから。」 「うん。知ってるよ。」 薄い袴で外を出歩くのは少し寒いと思った。さきほどまでいた布団が恋しいと思う。縁側を歩く。ひたひたと足の裏を伝わる冷たさに感覚が麻痺していた。ちょうど近くに座っている彼方と藤堂を見つけた。 「わっ!なんや!?」 気配を消して彼方にもたれた。気付いてなかったのか、えらく驚いているのに少し笑った。隣の藤堂は目を見開いている。 「……こんな所にいて寒くないのか…?」 声で何者か気付いたのか彼方はへらりと困った顔をして笑っていた。 「お前らいつもそんな感じなのか…?」 ふとした声に目を見開いて藤堂を見る。わからねぇとでも言いたげに首をかしげているのが同じ歳には見えなかった。 「こんな感じだよ。いつも。」 素っ気無い返事にも藤堂は嬉しそうだ。そんなに口数少なくにでもみえるのだろうか。 「まぁ、刹は気分と本能に生きてるからなぁ。」 意味のわからない言葉にまた首を傾げる藤堂に俺と彼方は笑った。 「まぁ、そういうことだよ。」 「よくわかんねぇよ。」 「平助にはわからへんかもなぁ。」 「なんだよ。それ、」 不機嫌な藤堂に彼方はまた笑う。俺は二人が座っている間に腰掛けて解けてしまっている髪を編み出す。 「そういえば、刹っていつも髪を編んでるよな。」 「…別に意味なんてねぇよ。」 「教えられない秘密とか…?」 藤堂の一つ一つの言葉に彼方が隣で笑っている。そんな姿を一目みてから俺も笑った。 「じゃあ、その質問をいつか話せるようになった日まで覚えてたら教えてやるよ。」 「うし!!じゃぁ約束な!!」 元気一杯に嬉しそうに笑う藤堂に少し驚きながらも、軽く笑って答えてやった。 「その時まで平助が覚えていれば、な。」 そう言って、俺は自分の部屋に歩いていった。 (な、なぁ!今さ、刹が俺の名前呼んでくれた!!) ((よかったなぁ、仲間やて認めてくれたんちゃう?)) (ほんとかよ!!すっげー嬉しい!!) (((元気やなぁー。))) 2010/11/28 なんか疲れました。とりあえず刹が認めてくれてよかったね。平助!! 執筆者⇒芹 戻る |