あの日と何一つ違わず 「…………。」 目が覚めると男の人の胸板。顔に目を向けると愛すべき我が主。 「………。」 私は、どうやってここに戻ったのだろう…。記憶が、ない。昨日は平助に酒を飲まされて…それから、それから…………。 「左之さーん。慧ー。起きろよー。」 「…………。」 「…………。」 「……おはよう。」 「おはよ…って、なんで左之の布団の中にいんだよぉぉおお!」 顔を赤くして襖をばたん、と大きな音をたてて閉める平助。随分初と見える。私はもそもそと布団から出て襖をすぱんと開ける。と、いうより昨日のお酒のせいか主が起きない……。これだからお酒は…。 「平助、昨日私は何かしたか。」 「い、いや。何……もしてないわけじゃないけど。」 私の耳がピクピクと反応する。 「ふぅ、」 ため息をつき、ぼふんと服を寝間着から女物の着物に一瞬で着替える。 「……は?」 「…なんだ。」 「いや、おまっ、今の…。」 「忍をなんだと思っている。軟弱な人間と同一視するな。」 「え、いや…ご、ごめん。」 「………。」 「………。」 *** あのあと聞いたら私はどうやらとんでもないことをやらかしたらしい。 「まさかよりによって私が……、」 はぁぁああああ、とため息をつくが何もない。むしろ周りが彼女にあまり態度を変えない様子なので私にはまた罪悪感が募るわけで。 「主、私随分へこんでます…。」 「あー…。まあ、よかったんじゃないか?あれはあれで。」 「そうでしょうか…。」 木の実や山の野菜を採りながら言う。ここは裏山。主人が気晴らしに行くか、と言ってくれたので来たのだが狐からなにから何までが私に木の実などを置いて行く。それならいっそ持って帰ってご飯に出そうじゃないかと人間でも食べられる物を採集中。 「お、あれは?」 「ああ。あれは食べられますよ。」 木の上にぶら下がっている緑色の身。木に登りそれを採る主。 何個か採ったとこで降りて来る。 「どんな味なんだ?」 「梨と同じような感じです。名前までは知りませんが。」 主の腕からひとつ取り、かじる。シャクシャクと音がし、甘い汁が出てくる。 「木の実ってより果物って感じだな。」 主も食べながら言う。そのとき足元によって来た子狐にひとつ分けてやる。 「狐って言や、白狐ってのもあるよな。」 「白狐、白い狐ならともかく妖怪の類もありますからね。…そうですね。私の実家の近くにも祠があり、お稲荷様をを祀っていますよ。」 「ほう、そりゃすげえな。」 感心したように言う。 「白狐は人を騙し、陥れる。まあ、助けたりもするなんて言われていますが。……実際、私なんかも人間に化けられますし妖怪に近い存在なのかもしれませんね。」 「……。」 「どうかしました?」 「いや、いつもいた奴が妖怪とか言われてもなあ。」 「……まあ、全ての狐が化けられるわけじゃないですし妖怪なのかもしれませんが。……蝦夷の狐くらいでしょうね人間の言葉を話せ、化けられるのは。」 「って言うと?」 私たちは沈みかけた夕日を背に山を降りる。 「蝦夷の狐はなんだか知りませんが力があるんですよ。私なんて完璧な血統ですし。……お稲荷様の御加護でしょうか。」 「……は?」 20101128 結局主人公はお稲荷様を敬ってるよって話← 白狐とかは色々調べました。楽しかったっす。 多分あってるはず! 豆知識っすね(多分) とりま更新お待たせいたしました!なんだか柔華よりこちらの慧のほうが色々暴露しとる気が……。 執筆者⇒雪子 戻る |