そしたら君は笑うだろうか 「離してくださいっ!私、ここで死ぬわけにはいかないんです!」 そんな叫び声にも似た言葉を聞いて、思い切り襖を開けた。目に飛び込んできたのは少女と日向の姿。何故此処に日向が居るのかは分からないが、任務に水をさすような行為に少し苛つく。少女をじろりと見ると覚えていたのか怖いものを見るような目でこちらを見ていた。俺の後ろ辺りに集まってきた土方さん達にあとは任せてその場所から抜ける。 「任務放棄かいな?」 「言い方は悪いがそういうことになるんだろうな。」 ざくりざくりと庭の砂利を踏んで立ち止まった。 「でも、別に構わないさ。俺達は自由な立場なんだから。」 その言葉に彼方は笑う 「そのとおりや。」 ――雪村千鶴。あの雪村綱道の娘。聞いて思わず舌打ちをした。また面倒ごとが増えると。それを聞かされたのは俺達が抜けて一刻ほど経った頃だ。それを知らせに来た総司は何処か機嫌が良い。 「眉間に皺、よってるよ?」 男性独特の骨ばった指が額に当たる。それに余計皺が増えた。 「ねぇ、なんでそんなに機嫌が悪いの?」 「……。」 「あててあげようか?」 気色の悪い笑みを浮かべ、嬉しそうにしている顔に苛々する。次の言葉がくるであろう唇は弧を描いている。 「刹は妬いているんだよ。」 思わずまぬけな顔になったのが自分でも分かる。妬いている?誰が、何に? 「どんどん此処に人が増えて、皆変わって近藤さんは皆のものになっていく。」 目の前の総司の唇が何かを砕いていくようで、ただじっと見ていた。動けない、時間が止まったように総司の唇だけが時を動かす。 「そして君は皆から離れて、孤高を貫く君となって行く。ねぇ、何故って顔してるよ。僕が何故君をそんな顔に出来たと思う?」 ただ見開いて総司の瞳を見れば、見れない顔の自分が映っている。 「刹…?」 総司の手が頬に触れる。ただ、熱い。熱い、あつい、アツイ。ドクリと心臓が爆ぜた。どくんどくんと心臓が生き返った気分だった。凍った物が溶けて、目の前の自分が見える。俺は、あぁ、そうかと口角を上げた。 「総司、この仮はいつか返す。」 それだけ呟いて俺の足はあるところへと足を運び出した。 「意地が悪いなぁ。」 「なんだ聞いてたんだ。」 総司の言葉ににこりと笑う彼方。 「僕からも礼言うで、ほんまおおきにな。」 「なんのことかな。僕は何もしてないよ。」 意味ありげに笑って、ごまかす総司に彼方も笑う。二人で寝転がった場所は何処か寂しく感じる。 「総司。」 「なに?」 「ほんまおおきに。」 「…。」 彼方の言葉に総司は黙った。目を開いて見れば明るすぎるくらいの晴天。 言えるわけ無いよ。本物の覚悟に狂気がついたら君は笑えるよ、なんて。 ただ静かに時が過ぎるのを待つ。 2010 12 09 私的には意味が深かったと思う文でした。 わからない人の為に最後辺りの略を…。 刹には覚悟があってもなにかが欠けていると思った総司はこれからの刹に自分のあり方にヒントを与えた。で導き出された答えが狂気。人をも殺せる無情の心。はっきり言えば強くなれってこと。内面がまだ子供っぽいところがあるから狂気で補えとそういうことです。 本当は慧との絡みをもっと入れたかったのが本音です><でも思いつかずこんな結果に…。……雪子さんに期待しましょうか。はい。 って訳で次よろしくお願いします^^ 芹 - 7 -
← back → |