空を見上げた1 | ナノ
人を殺す覚悟はあるか

雪、冷たい冬の季節。俺達は命令も無視して動ける立場を利用し夜を走っていた。


「刹、ほんまにこっちであってるんか…?」


白い吐息、それだけで寒さが伝わる季節に二人は冷たい体を酷使していた。


「あぁ、合ってる。」


闇に紛れて寒さを省みず、目の前の景色が過ぎ去るのを見ながらの疾走。常人なら倒れているであろう。ただ真っ暗闇の先、刹那として奇妙な笑い声が聞こえる。


赤、白い雪が赤黒いものに染まっていた。鉄とも言える匂いに眉を顰め二人は足跡を追う。追えば追うほど時間もたって雪が足跡を消していく。腹立たしげに舌を打ったときのことだった。


「ギャァァァ!!!」


悲鳴、人を切る音まで聞こえた。駆けつけて斬る。赤い目に白髪、それらは次へと次に倒れていく。細い視界の中で捉えた人影、刹は駆けた。


「…出て来い。そこにいるんだろ?」


問いかけにおそるおそる出てきたのは、まだ年端もいかない少女。男装をしているが上手く隠しきれていると思っていたのか…。


「何か見たか…?」


片付けの終った彼方が隣へと寄る。装束に脅えたのか少女はただ首を横に振った。


「じゃぁ何故そこに隠れていた…?」


「そこまでにしてやれ。」


少女の後ろから見慣れた紫紺が伺えた。そして目の前の少女に向けられる白い刀身。


「歯向かうなよ。お前は屯所に連れて行く。」


一歩後ず去った少女の後ろを取り、素早く手刀を打ち込んだ。小さな悲鳴を残して彼方の肩に担がれる。とりあえずは隊務完了だろうか…?


そんなことを考えている折、近くの影に自分が知る人物がいた。


「気付いていたなら、あそこまでする必要は無かったとおもいます。」


"気付いていた"おそらく男装をしていた少女のことだろう。


「下手に騒がれたり逃げられたら厄介だから、あぁしたまでだ。」


細い視界、日向が笑っていた気がした。


「西条さんらしい答えですね。」


「そういうあんたは付けていたのか…?」


「人聞き悪いですね、ただ見ていただけ。独断の考えです。」


本当だろうか、胡散臭いと思い先に歩いていった二人の背を捜した。

「手は出すなよ。これは俺たちの仕事だ。」


走り去る間際に発しておいた言葉。日向の表情は分からない。


「…心得てますよ。」


「なら、…良い。」


血に染まっている雪を踏みしめて、俺は帰路を辿った。





2010 12 08


やっと原作入り((汗


長かったような短かったような、まぁ何はともあれ過去編は完結しましたのでこれからは原作編"空を見上げた"をよろしくお願いします!!


そして雪子さん、過去編ありがとうございます!!原作編も頑張りましょう!!


では、よろしくお願いします!!






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