空を見上げた1 | ナノ
化けの皮

「金糸の男。そいつは俺のことを"山犬"と言った。」


今思えば、別に特定の相手に隠すほどのことでも無い。ただそう言われただけだ。大したことなんてないはず。


「それと、今俺がお前のことを聞いたのにも理由がある。……俺は自分のことを異端だとは思いたくない。でも、ここ最近自分の体が可笑しいのは理解しているつもりだ。」


「……何が言いたいんですか。」


「…俺は、異端なのかもしれない。そして、似たような気配を持つあんたのこともそう思ってる。」


そう。ずっと気に掛かっていたこと。日向慧からは異端の感じしかしないのだ。それは自分と同じようで違う。


「…もしも、私が西条さんの言う異端だったとして貴方はどうするんですか?」


今度は日向から質問の番だった。聞かれても言えることは一つだけ。


「ただ、すべてを明らかにしたいだけ。深い意味は、ない。」


「そうですか。…残念ですが、私では力になれません。…失礼します。」


隣を擦り抜けて行く日向の瞳が凍り付いていたのは、きっと気のせいだ。そうだと思いたい。




◇  ◇  ◇




木々がざわめく中、何処にもやれない感情が嫌にまとわりつく。


「真実は、遠い。」


ただの独り言がこんなにも遠い。こんなことを他の奴等に言うのもまた嫌だ。仲間には人間だと思ってもらいたい。


…なら、お前は何を信じる。


「?」


不意に聞こえた声。どこかで聞き覚えがあった。


お前は山犬、その真実は変わらない。


多分、いつもの空耳。それか何らかの空想が聞こえただけだろう。


「お前は、山犬か。」


真実かも怪しい言葉。だけど、この変な感覚を説明するには丁度いい様にも思える。


「………ッ…。」


見え隠れする何か。


こんにちわと言った所だろうか。




110329


お久しぶりです。皆様
そして雪子さん

長いこと書かなかったくせにスランプなので凄く短いです。でもきっと雪ちゃんなら許してくれる!…はず!!次は書くから!久しぶりだから感覚が鈍っただけなんです!





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