聞こえないふりのふり 伊東参謀、彼は先日の山南さんの件を疑っていた。因みに山南さんは事実上死亡ということになったが裏では新撰組を束ねていくらしい。 そして、西本願寺への移転が決まったのはそれからすぐのことだった。 *** 「で、今日はなんのようだ。」 「と、言われましても……数年ぶりなんです。ただ顔を見に来ただけですよ。」 そう言って志乃はにこっと笑った。 「……上がって行くか?」 「いいえ、ここで結構です。今日は簡単なお話をしに来ただけですが……新選組も、随分と厄介な種を持っているらしい。」 志乃はぽつりと言い、睨むように新しい新居を見た。 「慧様、風間家はご存知です?」 「まあ、な。」 風間と言えば西国で最も大きな鬼の一族。 「それはそれは。数年前に頭首が変わったのは…?」 「いや。私が山を下りて以降のことは知らない。」 そうですか、と志乃は呟くように返事をした。 「実は風の噂ではありますが風間の頭首が女鬼を探している、と耳にしました。」 ――慧様、気を付けてくださいね 「…何故私が気を付ける。」 「え、」 「…?」 志乃はうーん、と悩むそぶりを見せた後自身の長い髪の毛を後ろにやりながら言った。 「そう、ですね。貴方は鬼に会ったことは一度も………、」 「…何が言いたい。」 志乃は一度周りをキョロキョロと見渡して誰もいないことを確認すると言った。 「新選組に女性はいない、と聞いていますが…。」 「私を含め三人だ。」 志乃はふむ、と頷いた。 「どちらか片方が鬼です。」 ざっ、と不思議な風が舞った。 「貴方ならわかるでしょう?あの不思議な雰囲気と、どこか違和感のある空気。」 私の頭には西条さんと雪村さんが浮かんだ。 「……雪村、千鶴。」 「はい?」 「雪村千鶴と言う不思議な空気を纏った少女がいる。」 志乃は雪村の名を聞くと目を細めた。 「雪村は数年前に……まさか、生き残りとでも?」 「さあ。」 志乃はまたいつもの微笑みを作ると頭を下げた。どうやら帰るらしい。 「雪村のことは志乃めが調べてみせましょう。」 「頼んだ。」 志乃は顔を上げると微笑むがその笑みが凍ったようになる。 志乃の目線の先には、沖田さんと西条さん。否、西条さんだ。二人は階段座り話しているらしいが私たちの視線に気付いたのかこちらに手を振る。先程まで気配はなかったことから今こちらに来たらしい。 「……慧様、何故あのような者が…。」 「……あのような、者?」 志乃は少し戸惑うような雰囲気を出した後なんでもないと言った。 「なんでもありませんが、気をつけるべきは雪村さんより、彼女かもしれませんね。」 志乃は小さく焦りのようなものを浮かべながら私に笑った。 「……何か、知っているのか?」 「何も知りませんよ。ただ、我々もそうですが彼女は異端だ。」 「異端、」 「慧様、貴方にないのは学でも経験でも武術でもありません。」 志乃は突然語り出す。 「この、私たちの世界の知識です。」 「……。」 「人間の知識は有り余るほどあるでしょうが、貴方にはこちら側の知識が乏しい。」 「らしいな。」 志乃は失言お許しください、と頭を下げると主によろしくお伝えくださいと言い姿を消した。 …………。 「さて、」 小さく呟くと私は歩き出した。 110116 やらかした。 多分めちゃ繋げにくいでしょう、すみません(土下座) 申し訳ない。 雪子 - 29 -
← back → |