罪悪感なんて何処にもない 「近づくなよ。今の俺は何をするかわからねぇぞ。」 そう言って一人苛立ちながら静かにしている西条さん。山南さんは出ていってしまった。に、しても先程はびっくりした。まさか切り掛かるとは思いもしなかった。彼女の殺気が凄く伝わる。周りも気にしてはいるがどうやらこの威圧感は私だけにらしい。 「……慧?」 かくかくと喋り続ける中、主に呼ばれ俯いていた顔を上げる。 「先程から落ち着きがないようだが、」 斎藤さんが言う。おかげで目線が私に集まった。 「……、」 「体調でも悪いの?」 沖田さんが私の顔を覗きこむように見る。 「いえ、問題ありません。」 西条さんまでこちらを見るから……。ぎゅ、と手を握る。 「ほんじゃま、俺らはこの辺で抜けるわ。どうせこの調子じゃ移転の話も無理だろ。」 主が立ち上がりながら言うと土方さんは悪いな、と言った。 「慧、」 「……はい。」 立ち上がると主人の後をたたた、と歩く。開けた襖を閉めて主を追う。 「慧、何かあったのか…?」 「………。」 だんまりな私に主はため息を吐いた。 「…言いたくないわけじゃないんです。でも私にもよくわからなくて…。」 「そうか。」 「……手、繋いでいいですか。」 彼は頷いて見せたので隣にを歩き、彼の手をぎゅう、と潰してしまわないように握る。 「そういえば昔はよく手、繋いでたな。」 「そうでしたね。」 「お前が手、繋ぎたいって言うからさ。」 「……何処で捏造したんです?私は差し出されたから握っていただけです。」 「おっと、そうだったか?」 「…基本的には。」 素直にならない私に彼は笑った。 *** 夜。 私たち幹部は広間に走っていた。何故か。雪村さんの悲鳴が聞こえたからだ。 私たちが辿り着いたそこには、沖田さん。それから西条さんと雪村さんと…倒れている山南さん。 「……………、」 眉を寄せる。山南さんの傍にはあの硝子の小瓶。 山南さんには注意してほしい、とは土方さんに言われていたがまさか今日だなんて…。やはり伊東さんの存在が最後の決め手となったか……。 足を踏み出すと血がついた。暗い床と同化してよくわからなかった……。 「………、」 「西条さん、邪魔です。」 呆然とした様子で眠る彼を見る西条さんを土方さんに押す。 山南さんの治療は薬を飲んだのだから必要ないかもしれない。だが出血も多い。脈を取り、生きていることを確認すると彼を部屋に運ぼうと脇に手を入れる。 「触るなっ!!」 彼女は突然私に抜刀した。私のクナイと彼女の刀が火花を放つ。 「刹っ!!」 瑠璃崎さんの声が聞こえる。 「……なら、貴方が運びなさい。」 私はクナイをひき、部屋の隅に離れる。 「ごめんな、日向ちゃん。堪忍やで。」 「……日向ちゃん?昔は、もっと普通に…………」 「僕かてお近づきになりたいんよ。」 「はあ、そうですか。」 やるせない返事をする。彼はうんうんと頷く。 「ほんま、許してな。」 「別に気にしてませんよ。八つ当たりもしたくなるでしょう。」 伊東さんとか伊東さんとか伊東さんとか伊東さんとか…………。 瑠璃崎さんはええ子やな〜、と笑っと頭を撫でた。 「………私のほうが年上なんですが。」 「え、」 「「は?」」 ここにいた全員がなんらかの声を上げた。雪村さんと沖田さん、それから西条さんや井上さんはいないけど…。 「もう、とっくに二十歳は超えています。」 人間の歳でだけど。というか話をしながらこっちの話を聞くって…器用だな。 「失礼なこと聞くけど歳いくつ?」 「………おまかせします。」 動物の寿命は短い。だから、私は二十歳なんてとっくに過ぎているんだ。年齢なんてものはあまり重要ではない。だから幼少期も短いし、きっと人間のようによぼよぼになる前に朽ちるだろう。主と、同じ時間を生きられないのだ。 「……内緒です。」 意外なことに興味津々だった瑠璃崎さんは西条さんはいいんですか?と名前を出すとはっ、として走って行った。走って行って土方さんに注意されたのは言うまでもない。 110114 来月の今日はバレンタインですね。 刹や彼方のキャラ崩壊……? 雪子 - 27 -
← back → |