左の臓器が熱いんだ 「西条、さん。」 現在、乱闘が起きているであろう店の方を見ながら雪村は俺の服を掴んでいた。仕方なく日向にあの場を譲った物の、今となって後悔していた。 「…大丈夫さ、あいつらは強いから。」 軽く笑って雪村を見れば安心したのか雪村も笑っていた。 しばらくして二人が浪士を捕らえて店から出てきた。気色の悪い笑みを浮かべているところを見るときっと総司は色々と満足したのだろう。 「そいつが、例の?」 「おそらくは…。」 ぎろりとそいつらを見れば脚がすくんだのか、ヒッと声を上げて後ず去った。とんだ腰抜けがいるものだと半場、諦めにも似た溜息が漏れた。 「命拾いしたね、千鶴ちゃん。」 俺の隣にいた雪村に総司が絡んできた。申し訳なさそうに雪村は眉尻を下げているが、生憎俺は総司から助けてやるほどお人よしでも無い。とんっと日向の方へ雪村の背を押した。 「西条、さん?」 「俺は先に帰る。」 「任務放棄ですか?」 日向の言葉、忍からすればそれは許されないことなんだろうが…。 「悪いけど、自分の判断で動くのが"双狐"なんでね。それに、彼方と合流する時間なんだよ。」 職務乱用とはこのことだな。と心で笑いながら屯所への道を走った。もちろん、任務があるのは本当だ。これから長州の情報をあぶりだす準備をしなければいけない。 *** 「はよう吐き。それがあんたの為なんやで?」 薄っぺらい笑みを絶やさず彼方は目の前の男に再度問う。今俺達が拷問しているのは先ほど総司達が捕まえた男たちだ。 「誰が吐くものか!!」 だが、かなり強情らしく一向に吐く気配が無い。彼方のやり方が生ぬるいのだろうか? 「あららー、どないしよ?刹。なかなか吐いてくれそうに無いねんけど?」 「やり方が生ぬるいんだよ。変われ。」 はいはい、っと彼方と俺が変わる。もう此処までくればいたぶるしか方法は無い。 「恨むんなら、俺たちじゃなく故郷を恨むんだな。」 「ひっ!!――頼む、それだけは!!!」 俺が笑うのと捕虜の男が悲鳴をあげるのはほぼ同時だった。 *** 「ご苦労だったな。それで、情報は?」 「それが、長州の人等。池田屋か四国屋のどちらかで合会を行うみたいなんやけど…。それ以外の情報は手に入らんかった。奴さんが精神壊してしもて。」 「そうか…。刹は?」 「あぁ、なんや返り血やら色々かかって湯の方に行ってますよ。」 「なにか言ってなかったか?」 「別に何も言ってなかったとおもうんですけどね。」 「なら、良い。ご苦労だったな。」 「これも仕事の内ですよ。あとは土方さんが気張って下さいね。」 *** ―――…ちゃぽーんっ。 「た、頼む!故郷に、娘がいるん、だ。殺さないで…くれ!!」 故郷、家族、死への恐怖。やはり人は愚かだ。精神破壊、別に俺には関係ない。 ただ――その業を、俺はまた一つ背負っただけ。 「心、人であらず…か。」 20110106 久しぶりすぎて書きたいことが多すぎた!!個人的に刹は心が孤独であれば良いと覆います←それが一番彼女らしいですから。 芹 - 13 -
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