通りゃんせ | ナノ



ある晩、事件が起きた。それは制札のこと。原田さんたちが待機していたところへ土佐藩士八名がやって来て、立て札を引き抜こうとしたらしい。その後は想像の通り相手との激しい斬り合いが始まる。何人かは生け捕りにしたらしいが、一度捕らえたにもかかわらず、逃げ切った藩士もいたらしい。幕府の為に貢献したということで、後日原田さんたちは会津藩から報奨金を受け取ることとなった。
逃がしたことについて何かあったのかと聞かれていたが彼の答えは何度聞かれても 闇夜だったので、よく見えなかった であった。





そして、私は今の場所にほう、と息をつく。
報奨金をもらった数日後に私は雪村さんを含める皆と角屋へ来ていた。人はここを花街と呼び、遊郭という。


「いや〜!左之、お前は本当によくやった!まさか報奨金で皆に御馳走したいなんて言ってくれるとはな!」

「新八さん、褒めるならそこじゃなくて、制札を守りきったってところじゃないかなあ。」

「いや、そこは勿論褒めるけどな。」

広い部屋で向かいに座り合う二人が会話する。部屋は割り落ち着いているも、辺りの部屋のおかげで賑やかだ。


「それ以上に、ここの勘定を左之が持ってくれるってことに感激して、涙がちょちょ切れそうで…!」


永倉さんは涙を拭うそぶりをしながら、酒を掲げた。


「皆、今夜は左之のおごりだ!目一杯飲んで日頃の憂さを晴らしてくれ!」

「てめぇ…人の金だと思って……」


私は先程の永倉さんの言葉に箸を握った。


口に運ぶ料理は平成より遥かに質素ではあるが、普段の料理よりは断絶おいしかった。

「おいしいね。」

「はい!すっごく!」

雪村さんは生き生きと言った。

「…でも、いいんでしょうか。」

「いいと思うけど。嫌なら誘われないわ。貴方も私もね。」

にっこり笑った私に彼女はやはり申し訳なさそうに笑った。

私はむしろ遠慮なくいただく。せっかくの料理だ、食べれるうちに食べねば。


「でも、やっぱり私女だし…。」

「私だって女よ?」

「………梓さん、まさか。」

「ふふ、」

私はお酒を片手に笑った。

「え、梓ちゃんお酒飲むの?」

「今日くらい無礼講ですよ。」

「…男らしいね。」

私はまた笑ってお酒を飲んだ。

そしてそのとき静かに襖が開く。

「皆はん、おばんどすえ。ようおいでになられました。」


豪華な着物を着た花魁さんが、つやのある笑みを浮かべながら挨拶をした。白く透き通る肌にうっすら差した紅、そして柔らかそうな唇に、絹糸みたいに艶のある髪。花魁、始めて見た…。


「旦さんたちのお相手をさせて頂きます、君菊どす。どうぞ楽しんでおくんなまし。」



さすが、宴会。みんなテンションが高いな。


多分、私も…変。


「……、」

「あれ、梓ちゃん寝るの?始まったばっかだよ。」

「梓、大丈夫かー?」

藤堂さんに揺さぶられ、沖田さんに声をかけられる。


「にしても、」


永倉さんが話すのをぼんやりと聞いた。

「立て札を守っただけでこんだけの報奨金が出るんなら全員捕まえてたら、どれだけの大金が貰えてたんだろうな。…なあ左之、どうして逃がしちまったんだ?八人くらいならなんとかできねえ数じゃねえだろ。」


「あっ、オレも、それが不思議だったんだ!」


くそ…、藤堂さんってばなんで私より酒飲みながらそんなに元気なんだ…。やっぱ歳のせい…?いやいや、うん。

「敵を絶対に逃がさないよう、包囲網を敷いてたんだろ?一旦捕まえた奴もいたらしいじゃん?本当はなにがあったんだよ?」


藤堂さんの問いに原田さんはむっつりした顔で黙り込んだ。



やばい、眠たい。

……そういえばまともにこんなにも強いアルコールを飲んだの初めてだ。


0729

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