「お、おいおいおい!皆、大変だ!」 「あれ、永倉さん。どうしたんです?」 「巡察の最中、不逞浪士にでも出くわしたか。」 呑気に言う雪村さんと原田さんに永倉さんはやはり切羽詰まったように言った。 「それどころじゃねえ、家茂公が亡くなったらしい!」 「…えっ!?」 部屋の隅で聞いていた私まで驚いてしまった。家茂公といえば徳川幕府の十四代将軍である。 家茂公の存在を私は詳しく知るわけではないが将軍なのだから幕府の象徴とよべる人物であることは確かだ。 「そりゃ、本当か?何もこんな時に……。長州征伐は、どうなっちまうんだ?次の将軍は、もう決まってるのか?」 「その辺りはよくわからねえけどよ。」 「大将なしで戦争するってのは、さすがにな……。兵隊の士気も上がらねぇだろ。」 「なんかよ、いやぁな予感がするんだよな。」 「この前も長州藩を攻めきれないで、帰ってきちまったからな。今度もそうならなきゃいいんだけどよ。」 二人の真剣な会話。その中に雪村さんが入る。 「でも、相手は長州一藩なんですから。」 二人は悩んだように顔を見合わす。 「……三人とも、今ここだけの話では何も起こりませんよ。どうせ土方さん辺りから収集があるんですから待たれては?」 「……だな。」 原田さんは頷いた。 * * * その後、幕府は大軍を率いて、長州へと攻め込んだが戦費の負担が大きかったこともあり各藩から集められた兵士たちの士気は思うように上がらず…それに加え家茂公の死亡に動揺し戦線離脱する藩さえ現れ始めたらしく、第二次長州征伐は幕府軍の大敗北という結果で幕を閉じた。 「世界は、変わっていく。」 戦の世が始まるまで、後どのくらい残されているのか。 未来を思い、瞳を綴じた。 0723 戻る |