荒い呼吸を繰り返す。 夢だ、夢なんだ…! 何度思ってもその塊はなくならない。消えない。 「……あ、…あぁ…。」 なんて物を受け取ったんだ、私は! 起きてからの行動はすぐにその塊を押し入れの奥の奥に隠すことだった。 「……。」 きゅっ、と胸が閉まり喉が無音の悲鳴を上げる。 「あの、子…。」 息が、荒い。鼓動が、激しい。 「私に…彼女を、」 殺せって…。 あえて言葉にはしなかった。それが抗いだった。どこで、狂った。私は、彼女に何の感情を抱いてる?嫉妬か、それとも憎悪?嫌悪?ああ、嫌だ…。狂っているのはいつからか、なんて…。そんなの、私がここに来たときからに決まってる…! 汗がぽたり。 「……ご飯、作らなきゃ。」 寝巻きから着替えると部屋を後にした。いつもと同じ様子に、誰も彼女の様子に気付かない。 朝ご飯を食べ終えるとごろごろと自室で転がった。最近、ろくな生活してないなあ。 「なぐも、かお…る。」 綺麗な、響き。 風鈴の音が聞こえて来た。 どんどん近づいて来る。 涼しい、な。 でも、でも…!それを持つ貴方は…誰? 目を開くと風鈴の音はしなかった。ただ、太陽が眩しいのに雨が降っていた。 「どんな夢よ……。」 そんなに暑くないよ、今日は。 はあ、とため息。 「……。」 帯に手を入れるとそこにはいつぞやの煙管。 「ボロボロだ。」 そりゃあ、大分昔だもんなぁ。ほう、とそれを見つめた。 「…お姉さん、」 無性にあの寂しそうな笑顔に会いたくなった。でも、随分前。あのお姉さんも良い歳だからもういないだろう。 時代は、流れている。私の身近な知らない場所で。物語には関わりたくないのに居場所はここしかない。でも…、最近は。 「…はあ、」 っとに、なんとかしたい。この頭。 確かに私が何もしない間に彼女がして彼女の居場所ができるのは当たり前。まあ、彼女はただの善意だろうけど。 ありがた迷惑である。 でも、助かるのも事実。私が体調悪い時、とか。ああでも、彼女のほうが手際いいよな。 「も〜…、」 まただ。嫌だな、私。 「…嫌な、女。」 何が正しいのかわからない麻痺した脳内。でも、無性にあの子に会いたくなった。 「…薫くん。」 貴方に会えば、私の道がわかるのだろうか。貴方と同じ思いなら私の居場所も、見つかるだろうか。 0717 戻る |