通りゃんせ | ナノ



ここ最近、目まぐるしいほどの速さで全てが過ぎ去って行った。


藤堂さんが隊士の募集に江戸に行って、その藤堂さんの知り合いの伊東さんとその連れが入隊して。しかもその伊東さんは随分と周りを掻き乱しているらしい。最近目にする山南さんはぴりぴりとした雰囲気で近付き難い。だがその雰囲気を感じているのは平隊士もらしい。尾崎くんが言ってた。

雪村さんは山南さんとよく喋ってるのを見かけるけど…私はよく出かけるから山南と会う暇が少ない。幹部の中で一番喋ってないはず。


そして、その山南さんが亡くなったと言われた。

それは屯所でちょっとした騒ぎのあった次の日のこと。皆さん浮かない顔をしていた。私も、やはり悲しかった。


関わりが少なかったとはいえ、仕方ないことだ。


そして、慶応元年、閏五月。屯所が西本願寺に移動した。


そこは広かった。八木さんとは最後の晩御飯をご一緒させていただいた。お世話になった八木家の皆さん。最初から最後までほんっとにお世話になった。貰った着物は今でも大切にしている。そして、部屋を掃除していると遊郭で貰った煙管も出てきた。大事に帯に挟み込んだ。


西本願寺に来てからは、私の部屋も少し広い場所になり、平隊士たちもきつきつな雑魚寝を強いられなくなりのびのびとしているらしい。だがやはり、ここのお坊さんは長州を匿うような人たちだから新選組をあまりよく思ってはいないらしい。


だがここに来て三ヶ月もたてばそれなりに話すというもの。

団子屋のお嬢さんとは家の距離が近くなり、嬉しい限り。


彼女の娘も、すくすく育ち、まだ幼いためおぼつかないペンギンのような走り方ではあるが赤い鞠を持って梓ちゃん!と名前を呼ばれたときには感動した。


一緒に鞠をついて遊んであげた。可愛かった。

因みに名前は幸せと書いてゆき。お幸ちゃん。少し珍しいかな。いや、まあ私の方が、だけど。


お嬢さんはもうお母さんって感じで…。

彼女の名前は、藤って言うんだけど…。看板娘の威厳は消えません。



それから藤堂さんも帰って来た。相変わらず元気。土産話が一日じゃ聞き足りないくらい沢山あって。でも聞くのは楽しかった。あと気になったのは少し伸びた髪。後で少し切ってあげようかな。




0402



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