一歳企画 | ナノ
本当に不思議な人だと思った。


斎藤一くん。


彼は硬派で真面目で純粋でイケメン。それが私の第一印象。
彼自身はベラベラと話す方ではないに関わらず、男女問わずに何故か人気がある。
やっぱり世の中顔なのか。
私は顎についた肉を引っ張った。私の体から離れたがらない忌ま忌ましい肉達は私の魅力の妨げであると思う。いや、なくなればモテる、ということは想像できないが。ようは言い訳だ。


斎藤一くんは私の前の席だ。朝練で剣道をしているというのに彼は全く汗をかく様子を見せない。汗かかない体質だなんてうらやましい…。
そして彼はなんだか素敵な匂いがする。女の自分を下に見てしまうくらいに素敵な匂いなのだ。
一体何のシャンプー使ってるんだろ、とか思っても所詮は席が前後だというだけの仲。私が彼に話し掛けるだなんて恐れ多い。



ある日、彼が汗をかいて教室に入ってきた。
よく彼に絡む沖田くんは頑張らなくてよかったのにーと笑っていた。

何を頑張ってたんだろ。


「斎藤くん。」

私は先生が来るまでの間、彼に話しかけてみることにした。
振り向いた彼の頬はうっすら赤く染まり、少しどきりとした。

「いつも汗かかないのに珍しいね。」

やべぇ。ミスった。
これじゃあ私ストーカーみたいじゃん…。

彼は私の方を見て少し笑みを浮かべた。

「土方先生が相手をしてくださったんだ。むきにもなる。」

土方先生…あ、顧問の。

「土方先生好きなの?」

「好き、とは違うが尊敬はしている。剣に感してもあの人以上はいないと思っている。」

憧れだ、と彼は文章をしめくくった。いいタイミングで担任が入ってきたからだ。

土方先生に憧れてるのか…。
なんか、先生の話する斎藤くんって楽しそうだなぁ。

「やけちゃう。」



(おわり)
短いですね、すみません…。もしかしたら最後のヒロインの言葉に沖田さんがニヤリとしたかもしれない。担任の永倉先生もにまりとしたかもしれない。
この度はありがとうございました。また機会があればお願いします。