「いらっしゃーい。」 「うん、お邪魔しまーす。」 由美子ちゃんは予定通り9時くらいにやって来た。片手にワインの瓶で。 「今日さ、正臣くんに会ったよ。」 「ああ、藤緒が一時期悩んでた彼?」 「んー…、悩んでた訳じゃないよ?ただ、ねえ?」 ねえって言われてもなー、と由美子ちゃんはチーズをかじった。 「んー…。まあ、普通に暮らしてるみたいだからいいや。にしても、なぁんか臨也が今日ちょっかい出しに行ってさー。」 「折原くん?」 「うん。最初正臣くん出て来たからびびったけどどうやら興味をひいたのはその後ろの男の子。」 「へー。どんな子?」 「ん?んー…。普通の、普通の子のはずなんだけど……。なあんかしたのかなあ。」 由美子はよくわからない様子の藤緒の様子に少し呆れた。すると本人はさらに普通っぽいんだけどなぁ、と呟きさらに悩む。 「もー。いいじゃない、普通だかそうじゃないだとかは。折原くんがわざわざ関わりに行くのよ?考えたらわかるじゃない。」 「え?んー…。由美子ちゃんも会えばわかるよ。普通なのよ。」 「ふーん。」 由美子も藤緒と同様、中学から臨也と知り合いである。知り合い、というほどの間柄ではない。ただ中学が同じだっただけ、の方がしっくりする。由美子はテレビを見る藤緒の顔をちらりと盗み見た。 「ん?」 「あ、なんでもないよ。」 「そう?」 彼女はまた酒を煽った。自分もそれに倣う。藤緒が折原くんと仲良くしているのが由美子にとってここ数年の疑問だった。中学の頃、藤緒が家や学校、友人、色々なことでがんじがらめのような状態に合っていたことは知っていた。多分、折原くんも知っていたのだ。 一時期の彼女は大変だった。頭はぎらぎらで耳は穴だらけで。流石に私もひいた。噂じゃ、夜な夜な歩き回ってたとか…。こう、鉄パイプひきずってずーるずーると。まあ、あくまで噂だけど。噂だけど夜な夜な出歩いていたのはほんとらしい。本人が言ってたから。鉄パイプぶら下げてたかは知らないけど。 「ねえ、」 「あ、なに!?」 「由美子ちゃんさー、」 「ん?」 「んー…。」 ばたり、と横に倒れ…たお、 「え、藤緒っ!?藤緒!寝オチって…私、明日も仕事なんだけど……。」 どうしてくれんのよ…藤緒。 0822 戻る *前 | 次# |