私は週に一度臨也の家で家政婦のまね事をし、週に二、三度は理由なしに上がり込み、ごろごろと寝っころがっている。内職はその他の時間。 「臨也ー。」 エントランスの鍵は貰っている。だが自宅の鍵は申し訳なくて貰えなかった。私だって常識人だ。 「やあ、入りなよ。」 お邪魔しますを簡単に済ませるともはや私専用になりはてた可哀相なスリッパを履く。 「あー…。もう新宿遠い。」 「何言ってるんだよ。たった数分だろ?」 「んー…。」 出された紅茶を飲み干した。私の通行手段はバイク。高速も走れるし、二人乗りもできる。まあ、高速なんか乗らないけど。因みにこのバイクは親からの免許取得祝いに。私ってば結構恵まれてる。 「…またネカマ?」 「その言い方は侵害だな。」 「(否定しないんだ…)」 臨也は色々変わってる。中学も同じだけどあの頃はまだましだった。やばくなり始めたのは…あ、静雄に会ってさらに?いや、根本的に臨也は色々終わってるからなー。私が臨也とつるみ始めたのは高校生になって私が自棄を起こした頃から。楽しそうに私に話し掛けて来たあの日のことを私は忘れない。 「面白くなってきた。…藤緒、」 「ん?」 キッチンに立ち、もう一度紅茶を入れ直していたところだった。 「今日は泊まって行きなよ。」 「ん?んー…。」 なんかしなきゃいけないことあった…?思い出しても何も見当たらない。 「うん、いいよー。」 臨也は返事を聞くとまたパソコンに向き合う。私には何が面白くなってきたかもわからない。でもこれからの出来事で臨也の所有する将棋にオセロにチェスを混ぜ合わせたあの意味のわからないゲームが動くのだろう。そして私も、その駒の一部とされているのだろうか。私にあのゲームのルールはさっぱりわからない。むしろわかっていたら気持ち悪い。 ふう、と息を吐いた。 「今日の晩御飯、何にしよっかな。」 今日は家政婦の日だ。 0822 戻る *前 | 次# |