欠落 | ナノ

夢と暗闇と戦慄を



「きゃぁぁああぁぁあぁぁあああ!」


リナリーが叫びを上げた。アレンが声をかける。ぽつり、とリナリーが言う。


「咎落ち…。」


「!?」


「し、使徒の…なり…そこない…。」


咎落ち、これが…。ユーレン自身咎落ちの話は知っていたが実物を見るのは初めてだ。それに、スーマン、リナリーが呟いたその名前の人物があれならば…まずいことになった。ユーレンは息を吐いた。


「咎落ち…っていうのは…、」


リナリーが話を知らないアレンくんに説明しているのを見ていた。


咎落ち、それは使徒のなりそこない。イノセンスとのシンクロ率が零以下の人間が適合しようとするときに起こる現象だ。


「でもどうして?スーマンは適合者なのにどうして咎落ちに…?」


リナリーの言う通りだ。何故。…いや、簡単か。イノセンスが適合しなくなった、それだけ。咎落ちの人間がシンクロをする、なんて話は知らない。もしかしたらあるのかもしれない。でも表に出ていないということはないと同じなのだ。



「スーマン!!」


リナリーが彼に向け、声を上げる。


攻撃を受けていたそれは彼女が声を上げると同時に…。

一瞬だった。周りが光り、全てが消えた。彼に攻撃していたアクマも。ユーレンたちも吹き飛ばされた。



「……まずいな、リナリーどうす、」


「私は知らない。何も、知らないの。」


リナリーが、泣いていた。


「……助けるの?」


私は二人に声をかけると二人は迷うことなく頷いた。


「わかった。ただ、私は周りのアクマを倒すことにする。生憎今はハンドガンしか持ち合わせていない。」


「わかったわ。」


話がよくわからないという顔のアレンとリナリーに別れを告げるとユーレンは走り出す。ユーレンは空には浮けない。

なるべく高い瓦礫に乗り、アクマを打ち落としていく。


「くそ、ライフルがあったら…。」


スーマンの形をしていないそれはまた攻撃を放つ。辺りが眩しくなる。ユーレンは瓦礫から落ち、背中を打つ。


「ったぁ、」


光が収まり、前を見るとアクマはいなかった。


「…まずい!」


スーマンは村に向かって倒れこんでいこうとしている。


「止まるんだスーマン!」


アレンくんが説得している声が聞こえた。自分には出番がない。…いったい何をすれば。



ユーレンは何をするでもなく銃を片手にそこに佇み続けた。



最後まで。この戦いが終わる、最後まで。



「か、母さん……。」


ぎゅ、と体を抱きしめた。



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