少女と少年の共生論 「来ないですねー…。」 アレンは呟いた。 「あー…ユーレンって時間にルーズだからさ。」 ラビは苦笑した。アレンはそれに頷くと空を見た。数日前、リナリーが楽しそうに笑いながら言ったことを思い出した。 *** 「あ、ねえねえみんな、聞いて。」 「ん?」 「どーかしたんさー、リナリ。」 食事中だったメンツの中突如飛び込んで来た彼女。それを尻目に茶を啜るブックマン。それにきちんと返事をするJr.。アレンはパンを加えたまま。クロウリーも首を傾げている。 「ユーレンが私たちと一緒に行くことになったらしいわ。」 「お。ユーレンが?」 「誰なんです?ユーレンさんって……。」 話の内容がわからないクロウリーとアレンにリナリーは苦笑しながら謝る。 「本名はユーレン・シュベリア。みんなあいつの年齢は知らねぇけど多分俺らと同じくらい。」 「ふーん。男性、ですか?」 性別を言わないのを素直に疑問に思っただけなのだがラビは鼻を掻いた。 「えっとー…。」 「ま、見ればわかるさ。」 言葉を濁すリナリーを遮りながらラビは言った。 アレンはそれを少し疑問に思ったがあえて何も言わないことにした。 *** 「ラァァアアビィィイイ!!」 それにびくっと肩を跳ねさせてしまった自分を少し恥ずかしく思いながら自分の仲間を呼ぶ声のしたほうを見る。 「やーん。久しぶりー。」 少し背の低いその人物はラビに抱き着いているらしい。だが生憎こちらからはラビの背中が見えるだけで肝心のその人物が見えない。 「あら、意外と早いわね。」 隣にいたリナリーは遅刻した彼女を早いと言った。アレンは思わずリナリーを凝視してしまった。 「さ、行きましょ。」 リナリーは自分の手を握りながらすたすたと進みながらその人物の名前を呼ぶ。 「あ、リナリー!!」 ラビの胸に顔を埋めていたその人物はリナリーの名前を呼びながらこちらに走って来る。 「きゃっ、」 「あー、久しぶりー。会いたかったー。」 リナリーにぎゅーと抱き着きながら悶える、と表現をしておこう。と、ばっちり目があう。 「あ、えっと……。」 「…やだー手なんか繋いじゃってー。」 あはは、と笑いながら自分とリナリーの手を見る。確かにその手はまだ握られたままだ。 「あ、ごめんねアレンくん。」 「いえ、僕こそ……。」 慌てて謝るとちらりとリナリーに抱き着くその人物を見る。リナリーに負けず劣らずな顔立ち。短いふわふわとしたスカートから覗く足にニーハイ。綺麗に施されたメイクにキューティクルのある髪の毛。 女性なら女性と言ってくれれば…。 アレンはじとりとラビを見た。 「貴方、アレンくんって言うの?」 「あ、はい。」 リナリーから離れると彼女は手を差し出す。 「初めまして。私はユーレン・シュベリア。ユーレンで構わないから。」 「あ、はい。初めまして。僕はアレン・ウォーカーと言います。」 お互いに握手を交わす。 ………あれ? 「どうかした?」 す、と自分を覗いて来るユーレンに慌てて何でもないと告げる。 アレンは手を握ったときに感じた違和感に首を振った。 0326 ▽ |