ある赤の憂い 酷く、右腕が痛む。体も辛い。熱があるのか頭がぼーっとしてきた。 「はやく、平和なったらいいのに。」 神田は急な発言に怪訝そうな顔をした。反応してくれるだけまだありがたい。 「…この世界はとても疲れるから。僕は生まれ変わって平和な世界に生まれたい。この戦争を放棄して平和になった世界で生まれて…。そしたら母さんも笑うはずなの……神田、」 「あ?」 「僕昔に母さんの話知ってるのはラビだけだーって彼に話したけど君も知ってたね。」 彼は心底どうでもいいはやく出たいんだよこっちは、みたいなイライラした目で僕を見た。そんな神田を見返したら彼の肩にいるクロウリーに目がいった。 …………。 「神田、体痛い。しんどい。僕も担いで。」 歩く活力もわかなくて、でも歩かなきゃいけなくて。僕はわざと座り込む。 「おい、立て。おいて行くぞ。」 「おいてかないで。」 神田は明らかにイライラしています、の表情をしている。 「…あったかいスープ飲みたい。その後に母さんに会いに行って、母さんに愚痴をたくさん言って……。ルベリエいたらどうしよ。会わせてもらえないかなぁ。」 神田はイライラから呆れに変わったのか僕の使えない右腕を引いた。 「歩け。」 「…はい。」 じゃないとおいてく、とか後ろについてるな絶対。 僕は神田にひかれる腕を見た。すごく、気持ち悪い痣。ほんと、気持ち悪い。お風呂入るたび着替えるたびにこれ見なきゃいけないとかほんとやだ。神田は、よく掴んでくれるな。 「かんだぁ、感動のあまり泣きそう。」 「黙ってろ。」 「……。」 泣きたい。 *** 長い長い道を歩いたのはわかるけどどんな道を歩いたかは思い出すことができない。ひたすらに、はやくゴールにつくようにと足を見ながら歩いていた。 するとひとつの変化が生まれた。どこかからか声がする。 「…馬鹿ウサギか?」 神田は少しだけ顔をしかめた。僕には何を叫んでいるかわからないけど彼には聞こえているらしい。 嗚呼、頭が痛む。 なんかみたらしみたらしと唱えるように叫ぶ声は気のせい?気のせいがいい。 神田がイライラしているのか歩く速度が増す。馬鹿んだめ。こっちは辛いんだよ。鈍感。 「ユウのパッツ…」 「上等じゃねぇか馬鹿ウサギ……。」 バン、と扉を開いた先にいたのは神田の悪口をいいかけていたラビ。と、チャオジーさん。 ユウ!ユーレン!と声をあげ、次には神田が担ぐクロウリーに気付き彼の名前を嬉しそうに叫ぶ。 「それよりこれはどーなってる。」 「オレにもサッパリさ〜。コラーーーッ!出てこいっつのモヤシーー!」 「……もやし?」 さっきも聞いたな。 『誰がモヤシかバカラビーッッ!!』 急に空から聞こえたアレンくんの声に誰もが驚く。 あぁ、モヤシね。うん。 0217 ▽ |