欠落 | ナノ

繋ぐ手のひらから、痛いくらいに


扉の先は、子供部屋のように明るく、鮮やかで、夢を描いたような世界だった。



待っていたのは、一人のノア。


「お前ら、先行ってろ。」

「「えっ!?」」

「ユウ?」

「………、」

「アレはうちの元帥を狙ってて何度か会ってる。」

神田は六幻を鞘から抜く。

「か、神田一人置いてなんかいけないよ!」


「勘違いするな。別にお前らのためじゃない。うちの元帥を狙ってる奴だと言っただろ。」

任務で斬るだけだ。



「っ、」

地面が、揺れる。


「地震、」

「やっぱりここはまだ方舟の内なんさ!」

「そうレロ。ここはまだ新しい方舟へのダウンロードが完了してないだけの部屋レロ。ダウンロードされしだい消滅するレロ!」

アレンくんの顔に驚愕と焦り。様々な感情が入り混じる。

「はいっ!僕も残ります神田!」

「アレン!」

「みんなはスキを見て次の扉に……」

アレンくんの声がする。
僕は伸びてしまった髪の毛をしばる。

「ユーレン?」

「うん?何、リナリー。」

「とっととうせろ。それともお前らから斬ってやろうか?」

リナリーの口からユーレンに言葉が紡がれることはなかった。

神田がこちらに攻撃をしかけてきたからである。


「もー知らねっ!神田なんか置いてってやる!」


一同は次なる扉に向かってぷんすかと歩いて行く。

「神田っ!神田っ!ちゃんとあとでついてきてね。……絶対だよ!」

心配そうな表情から一転。

「返事しなさい!」

「わ、わかったから早く行け。」

「おいおい、お前らゴチャゴチャうるせェぞ。」


敵の形が変わった…。


「ユーレン。」

「あ、うん。」



ちらりと戦いを始めた二人を見た。
扉についたのは僕らが最後だった。扉の向こうでは仲間が待っているのだろう。

「行きましょ、ユーレン。」

「……。」

「ユーレン?」

「……ごめん、リナリー。神田の力は信用してる。…でもさ。僕はさ、わかるんだよ自分のことだから。」

「なんのこと?」

リナリーが、困ってる…。

「ここに残りたい。」

「……ユーレン、」




1106


疲れた。