欠落 | ナノ

満ち足りない空気の中で


「あぁああああ!!」

リナリー、アレン、ラビ。の上に落ちた僕。の上に落ちてくる数人。


「お、重いぃ……。」





***



「なんだこの町は、」

「…あ!ここ…方舟の中ですよ!」

「ええっ!!」

後ろでメラメラと何かが起こりそうな雰囲気のアレンくんと神田を尻目にスカートをはたいて立ち上がる。


そこは、真っ白で綺麗な町並みの一角だった。


「お、おい!リナリーの下に変なカボチャがいるさ!」


カボチャは目を覚ますと神田とアレンくんの武器に挟まれ、もとい脅されながら喋り出す。

「スパンと逝きたくなかったらここから出せ、オラ。」

「出口はどこですか。」

「でっ、出口は無いレロ。」


『舟は先程長年の役目を終えて停止しましタ!ご苦労様です、レロ。』

伯爵の、声。

『出航です、エクソシスト諸君。』

『お前たちはこれよりこの舟と共に黄泉へ渡航いたしまぁース!』

ぼわ、とレロと呼ばれたカボチャから風船の伯爵が飛び出す。と、同時だった。辺りが大きな音をたてて崩壊していく。


『危ないですヨ。ダウンロードが済んだ場所から崩壊が始まりましタ。』

「は!?」

「どういうつもりだ…っ」

『この舟はまもなく次元の狭間に吸収されて消滅しまス。お前たちの科学レベルでわかり易く言うト………』


あと3時間


『それがお前達がこの世界に存在してられる時間でス!』

「3時間だと…、」


僕は歯を食いしばる。


『可愛いお嬢さん…良い仲間を持ちましたネェ。こんなにいっぱい来てくれテ…。みんながキミと一緒に逝ってくれるかラ淋しくありませんネ!』


リナリーが憎そうに伯爵の名を呼ぶ。


『大丈夫、誰も悲しい思いをしないようキミのいなくなった世界の者達の涙も止めてあげますからネ。』




***





「どこかに外に通じる家があるハズですよ!僕それで来たんですからっ!」

「ってもう何十軒壊してんさ!!」

「無理レロ!この舟は停止したレロ。もう他空間へは通じてないレロ!」

言った瞬間カボチャが殴られた。


「危ない…!」


崩壊が…!


「無いレロ。ホントに。この舟からは出られない。お前らはここで死ぬんだレロ。」


崩壊の耳障りな音がする。足場が……。


「あるよ。出口、だけならね。」


そこに立っていたのはボサボサの……


「ビン底!!」

「え、そんな名前…?」

「ななっ?なんで?なんでここにいんの?」

気づけ、馬鹿。
何故、一般人が…ここにいる。

「おい。…そいつ、殺気出しまくってるぜ。」


男はにっ、と笑うとアレン君の頭に手をおき

「どうして生きてた…?」

と、問い掛け…

「のっ!!」

頭痛………。


アレンくんは痛みにデコをひたすら抑える。

「千年公やチビ共に散々言われたじゃねェかよ〜。」

「何、言って………、」

男の、すがたが……


僕は足にある二丁の銃にマシンガンからマガジンをぶんどると装填する。

「出口、欲しいんだろ?やってもいいぜ。」


……ノア。


「この方舟に出口はもうねェんだけど、ロードの能力なら作れちゃうんだな、出口。」


突如、後ろから扉が出現する。ハート型のメルヘンなものである。

「うちのロードはノアで唯一方舟を使わず空間移動ができる能力者でね。ど?あの汽車の続き。こっちは出口、お前らは命を賭けて勝負しね?」


命か、出口か。


「今度はイカサマ無しだ。少年。」

「ど、どういうつもりレロ、ティッキー!伯爵タマはこんなこと……」

成る程、予定には組み込まれていなかったというわけか。

「ロードの扉とそれに通じる3つの扉の鍵だ。これをやるよ。」

男は器用に指に鍵をなせてみせた。


「考えて。…つっても四の五の言ってる場合じゃねェと思うけど。」

崩壊が……。

「リナリー…、」

「えぇ。」

僕は彼女の手を肩にかける。

「エクソシス狩りはさ…楽しいんだよね。」


鍵は神田に投げられた。


「扉は1番高い所に置いておく。崩れる前に辿り着けたらお前らの勝ちだ。」

「…ノアは不死だと聞いていますよ。どこがイカサマ無しですか。」

新しいイノセンスを身に纏ったアレンくんの言葉に男は笑う。

「なんでそんなことになってんのか知らねェけど、オレらも人間だよ?少年。死なねェようにみえんのはお前らが弱いからだよ!」


男の言葉が終わると同時に崩壊が激しさを増す。


「ヤバイ、走れ!崩壊の弱い所に!」



「行くよ、リナ…」

「きゃ、」

足場が…崩れて……!


顔からさっと血の気が引いた。左手はリナリーを支えてる。右手は使い物にならない。


………まずい、


「捕まって!」

アレンくんは伸ばした手で僕らを掴むとそのまま崩壊のない場所に走り出した。






荒い呼吸が響く。

「どうする。逃げ続けるのも問題だぜ。」

「あと2時間レロ〜。」


「ロードの空間っていうのは僕らも身に覚えがあります。」

「うん。」

しゃーねぇか、とラビは少し考えるそぶりを見せた。


「よし、じゃあいくよー!」

「へ?」

「は?」

僕はわざと大きな声を出した。

「出さんと負っけーよ!ほーい!」



















「こ、このドアでイイんですかね?」

「どれでもイイんじゃね?うん。」

「とっととやれよ。」

「しかしアレン、ジャンケンポン弱ェな。」

ヒソヒソと話す。アレンくんは意を決した様子で鍵を穴に差し込んだ。とたん、それは鮮やかな扉となる。


「…絶対脱出です!」

アレンくんが手を出した。

「おいさ。」

「である。」

「うん。」

「ウッス。」

「勿論!」

ぽんぽんとみんな手を重ねていく。


……………。


「かんだ〜〜。」

「やるか。」

「……ですよね。」

「行くぞ。」



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