欠落 | ナノ

私という名の何か

「……………。」


ぱちと緑の目を勢いよく開いた中性的な男性とも女性とも言えぬその人物。唯一男であるとわかるのは彼が今上半身に何も纏っていないからである。


「………寒。」


雪が降る季節の中、この格好。常識人なら誰もがそう感じるであろう。


金髪の男性にしては長ったらしいその髪をわしゃわしゃと掻き混ぜながらその人物は欠伸をした。



***



それは雪の降る寒い日のことだった。自らが所属する組織の室長である人物から連絡があったのは。ガガガとノイズ入りではあったものの、未だ機能しているゴーレム。そこから聞こえる聞き慣れた若い男の声。


内容は簡単。今、危険な連中がエクソシスト狩りをしてるから気をつけてっていうのと、元帥が殺されたというもの。多少驚いたものの そう とだけ冷静に返した。重要なのはこれから。どうやら伯爵がハートを狙っているということ。そんなのは知ってる。だがどうやら違うらしい。本格的に何かをやらかす気らしい。色々あるものの憶測でしかないから言えない、とかなんとか。そこで、だ。どうやら元帥に保護をつけるらしい。だが生憎自分には師匠がいない。どうしようかと悩めば返事は簡単に返って来た。


『君は、クロス元帥を追っているリナリー達の隊に同行してほしい。』


「………りょーかい。」


『うん。じゃあ彼らとの待ち合わせ場所と時間を教えるね。』


がりがりと言われる場所と時間をメモする。


『よろしくね。』


「あー、はいはい。ま、仕事だからさ。ね?……はーい、じゃあ室長さん!私が可愛いからっていつまでも長電話してちゃダメですよ!ユーレンちゃん怒っちゃいますからね!じゃ、まったねーん。」


向こうが返事をする前にユーレンはぐしゃりともう使い物にならないであろうゴーレムを踏み潰した。


急に声色を変えたユーレンにここが外なら道行く人はさぞ驚いたことだろう。


「……ふふ、さーて。」


行きますか、と呟くとユーレンはふりふりのスカートを揺らしながら軽快に歩いて行った。



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