欠落 | ナノ

少年の感情論と結末

あのあと、妙に生々しい光景を見た僕らはまた着々と足を進めていた。ミランダのイノセンスがきれていて、多分みんな体力の消耗が激しい。

ミランダとはここに来る直前に挨拶したが、実におどおどしい様子の女性であった。まあ、心配性は悪いことではないだろう。

………、

ずくりと、肩の傷が疼く。包帯が湿っているのがわかる。足も、痛い。打ち身も、痛い。

「はやく、帰りたいね。」

そうね、とミランダはあまりよくない顔色で微笑んだがここによい顔色の人間なんていない。






「うぁああああ!」


突如サチコ、もといチョメ助が頭を抑えながら声を上げる。伯爵が、日本中のアクマを呼び寄せている。

江戸に、伯爵がいる……。

ゾワリと背筋を嫌な汗が流れる。チョメ助は伯爵からの信号に逆らえないらしくフラフラと歩き出す。


「チョメ助、」

僕が呼ぶと彼女は振り向いた。

「せっかくだ、伯爵の所まで一緒に行きましょ。」

異論はないな、と目線で互いに確認し合った。




***



少しだけ整備された道をがらくたを尻目に歩いた。


伯爵の姿を視認できる位置まで来るとうまく姿を隠す。伯爵の傍にいる数人の人間の姿が元帥を狙うというノアの姿だろう。

「総攻撃ですアクマたチ!日本全軍で元帥共を討ち破れェ!!」

伯爵が声を上げると同時にラビがそのイノセンスを振り上げ、火柱が伯爵を喰らった。

が、それはすぐに弾かれた。


「元帥の元へは行かせんぞ、伯爵!」


千年伯爵、ずいぶんと間抜けな容姿である。
僕は背中にライフルを背負い、太股にホルスターをセットし…。今さらな準備を始める。

チョメ助が死ぬだなんだと騒ぐが、ラビは負け戦はする気はないという。


「でも…。こんなのやっぱり負け戦だっちょよぅ…。」

「ゴタゴタうるさい奴だ。負けるかどうかやってみんとわからんわ!」

「そうそう。もしかしたらすっげーボロ勝ちしちゃうかも…」

しれねーだろがっ!


クロウリーとラビは言うと飛び出して行った。

二人はある男とぶつかり合う。ラビやリナリーに至っては知った口ぶりだ。

僕はそこから少し離れた場所にいた。お気に入りのマシンガンを手に持ち、アクマたちを打ち続ける。

「…減らない。」

いつの間にか戦闘を始めたラビを視界の端におさめつつ、目の前の異様な光景を見る。

「……へぇ。」

また、汗が伝う。

「アクマが、集まって……」

大きく、大きく…。

アクマの融合。人の何十倍もあるそれは動くたびに障害物である建物を破壊していく。

突如、そのアクマの融合体と後ろに光が現れ……。

それは地面を無数に貫く光になった。

「…は、」

うまく、避けたが建物の破片が体に当たり続けた。

「みんなは、」

仲間の方を見るとミランダのイノセンスが発動しており、大丈夫だったようだ。

「……あのアクマを、」

なんとかしなくては。
何回も攻撃されてたまるかよ……。

「イノセンス、応えろ。僕の、声に………。」

手に持っていた銃がどろりと溶ける。それは手に纏わり付くと形を成していく。

「………っ、」

自慢じゃないがシンクロ率が高いわけじゃない。70なんて数字を見たら凄いねと言われるのが僕のレベル。50ありゃ内心上等。そう、なんせ僕はイノセンスが大嫌いなのだ。

「…ぐ、」

イノセンスと融合した腕が、酷く痛い。当然だ。感覚で神経を繋ぎ、酷く思い重火気を身に付ける。


「第二解放、完成だ。」





***

第二解放はブラックロックシューターが持ってるようなあれみたいなのだいいなー。あれが腕にくっついた感じ。

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