未来よ壊れるな ライフルを構え、スコープを覗くがそこには真っ白な雲が広がるだけである。 「アクマめ…。」 上でラビが自分のイノセンスを振り回す。何かする気か。思って見ていれば光を放ったそれ。天判だ。 「やった……?うわぁっ!」 思って肩の力を抜くと一気に攻撃がくる。 「ちょっ、しっかりしてよね!ラビ!」 ラビは下から聞こえた高い声に頭を掻いた。 「って、ひゃっ!」 遅れて突っ込んできた砲弾がユーレンの目の前に落ちた。 「…こわ、」 またもや地声である。 「……、」 ちらり、自分の素足に食い込む木の破片を忌ま忌ましく見つめ抜いていけば血が出る前にそれは癒されていく。 「っ、」 肩に刺さった大きめのそれも、抜けば癒されていく。 「肩は…まずい。」 イノセンスを解除しなければどの程度の傷かはわからないが肩は心臓に繋がる管がある。万が一出血が多ければ…。 「ふん、」 慰め変わりに悪態をつき、空を見上げればズン、と船に何か違和感。 それを感じるのは自分だけでなく周りもらしい。 「っ、船がっ!」 沈む……!? ばっ、と見たのはリナリーがいるであろう方角。 「リナリー、」 しかし、感傷に浸る時間は与えられるはずがない。船は沈み続けるのだ。 「くそ、」 処置として沈んでいない安全な場所へ登って行くと、びしょびしょに濡れたラビとクロウリーがいた。 「何、びしょびしょじゃない。」 「あー…まあ、色々。」 「ふーん。」 「馬鹿もん!お前らいつまでグズグズやっとるか!さっさと敵を倒さんかボケ!このクズが!!」 ブックマンの声が、響く。 「うわ、針山だ。」 イノセンスを守る彼のイノセンス。言葉の通り針山である。 「なぜ木判を使わんのだラビ!!」 響く声にラビは忘れていたことを照れたように頭を掻いた。 「木判とは?」 「雲をどけてくれるの。」 「ふむ、」 「クロちゃん、耳貸して!」 僕と話していたクロウリーの耳をラビが引っ張った。二人はごにょごにょと話をした後僕を見た。 「ユーレンは……、銃で上狙えるさ?」 「……こんだけ揺れるんじゃライフルなんか意味ないわ。」 「だよな。…よし、クロちゃん作戦決行だ。ユーレンは万が一のときのためにライフル構えといてくれ。」 「……了解。」 結局やらされるのかと息を吐き、良い足場を探しにそこを降りた。 僕がライフルを構えるのを見てラビは木判を静かに発動しようとした。 「万が一、ね。」 ライフルをしっかり握り直すと同時。 「うあぁ!」 船が浮上し、間抜けな声が漏れた。 「ちょ、っ!」 ライフルが、がらがらと急に動いた船を転がる。だが急な浮上に揺れる船では体の自由が利かない。 「うっ、」 ライフルより先に壁に行き着いた自分は、頭に鈍い痛みを感じ意識を手放した。 0802 ▽ |