いつまでも


先程から背に感じる微かな気配。
長屋にある私の部屋は剣呑たる雰囲気に包まれていた…。


「そろそろ姿を現したらどうです?」

「……っ」


気配の主は大体予想がついている。


「気付いてますよ、尊奈門さん」

私が名を呼ぶとスッと姿を現す。

「流石だな…気付いていたか」

緊張の糸がふっと緩む。

「えぇ、もちろん」

と言うと

「くのたまに気付かれるようでは私もまだまだだな、組頭になんと言われるか…」

と、彼は苦笑する。


「それよりも……大人の男性がか弱きくのたまの部屋にいるというのはどうかと思いますけど…?」

「か弱い?冗談はよせよ」

「冗談じゃありませんよ!まだ四年ですよ!!」

「くのたまの四年じゃ十分か弱くなんてないさ」

そんなことはない、と私がむっとすると彼は慌てて

「すまない!気を悪くしないでくれ!!」

なんて言っている。

私が

「で、今日は何用ですか?」

と、問うと

「いつもの如しさ…タソガレドキ忍軍にこないか?」

「ははっ……やっぱり…」

乾いた笑いで返すと

「気は変わらないよなぁ…」

なんて言っている。



「尊奈門さんは本気でないでしょうに…」

「そうだな…私は良く思っていないよ」

尊奈門さんは続ける

「ただ……こちらにきてほしいというのは思っている」

「お誘いは嬉しいんです…だけど、今はまだ駄目です」


私はそう言いつつスッと煎餅を差し出す…
すると尊奈門さんはそれに手を伸ばす。


「今は…か……いつになったらきてくれるのさ」

「私が…私が、自分で自分の身を守れるように…尊さんの足手まといになっては困ります」

「尊さんか…久しぶりにその名で呼んでくれたね撫子」


尊さんはそう言うと楽しげにぱりぱりと煎餅を食べる。
しかし、私がその名で彼を呼ぶ時は必ず真剣に話す時かプライベートな時だけだと彼は知っていた。


「だけど、その口ぶりではやっぱりうちの忍軍に入るつもりか?」

私は頷く。

「その為に忍を学んでいるんです」


すると尊さんは黙り込んでしまった。

しばらくして溜め息を一つつくと

「いいか、今から言うのはあくまでも私個人の言葉だ…」

「はい」

「私は…私は撫子を今すぐにでも妻にしたいと思っている」

「…はい」


尊さんの声色はいつもより真剣なものだった。


「だからさっき言ったこちらと言うのもタソガレドキではなくて…その…えー…私の所に」

「尊さん…」

「駄目…か?」

「……私は…」

「うん」

「私は…幼い頃からタソガレドキに入ると決めております」

「…ああ」

「それは…ただ私の我が儘かもしれませんが…かの城の方々には私だけでなく……」

「家族か…」

「……はい」


私のまだ幼い頃、私の家族は戦に巻き込まれそうになったところを救われたのだ…タソガレドキに。


「それに…」

「ん?」

「今は…タソガレドキにいきたい理由が増えたのです」

「え…?」

「お慕いしている方がいるんですもの」

「なっ」

尊さんの顔が一瞬で赤く染まる。

「尊さんと共に働きたい……たとえ…それが…非情の道で……学園の敵にあたる城だとしても」

「…正気じゃないな」

「土井先生に何度も挑む尊さんも正気じゃありません」

と私が笑うと

「うっさいなぁ!!」

と怒る尊さん。

「あははっすみません」

「まったく…土井半助のせいで私がなんと呼ばれてるか…」

「簿っちゃんにチョー君…それから「やめてくれよ!!」

「うふふっ、なんだかやっといつもの尊さんにもどったみたい」

「まったく…」

尊さんはぷくっと膨れてそっぽを向いてしまった。

「尊さん」

「……」

「尊さん…もし私がタソガレドキ忍軍に入ったら…その時はずっと一緒にいましょう……?」

すると、尊さんはばっと振り向く。

「当たり前だっ!!早く卒業してうちにこい!そしたら…」

「そしたら?」

「そしたらっ…撫子を絶対に守ってやるから!!」

「!…はい」

「それで仕事に慣れたら…」

「?」










「結婚しよう」





「はい…!!」










いつまでも貴方と共に…




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