振り回される



「ちょっと勘ちゃん」

「んー、なあに?」


私が彼に声をかけたのは構って欲しくて、なんて可愛らしい理由ではない。


「食べにくいよ」


そんなに見られていたら、そう言っても彼は私から目を離そうとはせず、にこにこと私を見つめるだけ

誰が茶屋の団子一つ食べるのにこんなにも苦労すると思うだろうか…、私だって気にせず食べてしまえば良いのはわかっている。
しかし、あまりにも近い
何て言ったって彼は私の隣にぴったりと体を寄せて私の食べる様子を楽しそうに見ているのだ。


「か、勘ちゃん…近いよ」

「あ!今撫子赤くなった」


うふふ、と彼が笑う。
顔が赤いのは自分でもわかっている、だってこんなにも顔が熱いのだ、赤くないはずがない。

せめてもの抵抗に私はふんっ、と彼から顔を背けて団子を一口含む。すると、それの甘い味が口いっぱいに広がった


「あっ、ちょっと!」

「ん〜おいしい!」

「なんで背けちゃったの!?」

「恥ずかしいもの」


そう言って向き直ると、唇を尖んがらせて不満げな彼の顔が目に映る。


「……のに」

「えっ?なに勘ちゃん」


ぼそっと呟かれた言葉が聞き取れず、聞き返す。


「撫子が食べてる姿…好きなのに」


今度はハッキリと聞こえたが、あまりにも真っ直ぐに紡がれる言葉に怯んでしまう。
彼の素直過ぎるくらいの言葉は何度聞いても慣れることが出来ない…
こういった事は言われる度に恥ずかしいような嬉しいようなそんな気持ちにさせられる。


「からかうのはやめてって、いつも言ってるのにっ」

「本当だよ、何かを食べる時の撫子って幸せそうで、なんか見ているこっちまで幸せになるんだ」


惚けて口をぱくぱくさせる私を見て彼はふっと笑う。
そして私の顔にずいと近づくと口の端をちゅっ、と啄まれた。


「ついてた、おいしいね!」

「てっ、手で拭うとかでいいじゃない!」

「あはは」


ああ、きっとこれからも
彼にこうして振り回される。

しかしそれも悪くない

と、そう思ってしまうのは

多分彼にかけられた魔法のせい。















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亜由未様のみ
お持ち帰り可です。

相互ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!!




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