Line 前編







この石灰で引いた様な、白く、くだらない線が、

惹かれあう僕等の事を残酷に切り離し、
その身を抱き寄せる事さえ、許してはくれないんだ。






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「嘘っ!?撫子と団蔵って付き合ってないんだ…」


左吉はいかにも信じられないという顔で私を見る。


「本当だよ、団蔵とはそうゆう仲じゃないってば」

「お前等…他から見たら付き合ってる様にしか見えないって」

「やめてよ〜」


左吉の言葉を笑って受け流す、


確かに、人から見たら私達は付き合っている様に見えるだろう…
そう分かっているので否定はできない。


「あんなに一緒にいるのに…変なの」

「変でも本当だもん、私と団蔵は付き合ってない。…分かった?」

「…まぁ」

「じゃあ、この話はおしまいっ」


ぱんっ、と手を鳴らし、話を終わらせる。

左吉は不満げな顔こそしていたものの、それ以上何か言ってくる事はなかった。













学校から出ると今にも雨が降りだしそうだった。
そういえば、朝から雲行きが怪しかったような気もする。


「撫子、傘持ってきた」


後ろから声を掛けられて振り向くと、ビニール傘を持った団蔵がいた。


「団蔵…ありがと」


私が傘を受け取ると団蔵はニッと笑う。


「まだ降ってきてないけどな」

「だけどもうすぐ降り出しそうだし…助かった、ありがとね」

「ところで…さ」

「うん?」

「付き合ってくんね?」


団蔵が手に持ったファミレスのクーポン券をひらひらと見せてきた


「奢ってよね」

「500円までな」

「けち臭いな、きり丸みたい」

「あいつなら奢ってくんねーよ」

「たしかに」


今頃きり丸はくしゃみでもしているんじゃないか…
そんな事を言って笑いつつも、雨が降りそうなので、私達は足早にファミレスへと向かった。

















ドリンクバーのコーヒーを片手に席に戻ると団蔵が珍しく真剣な面持ちで待っていた。


「どうしたのさ」

「撫子…放課後に左吉と話してたじゃん」

「うん」

「で、帰ってきたと思ったら浮かない顔してるし」

「そう?」


そんなつもりはなかったけれど、
団蔵に分かるくらい顔に出ていたのか…


「で、何話してたの?」

「別に…団蔵には関係ないよ」

「関係ある」


じっと見据えられ、はぐらかす事は出来ないと悟る。


「団蔵と私が付き合ってるみたいだって」


団蔵は、はぁっと息を吐く…


「左吉もかぁ」

「ん」

「みんな…分かってねーのな」

「だね」


少しの静寂、
コーヒーから上がる湯気が窓を曇らす。


「俺達は、さ」

「うん?」

「ゆっくりでいいんだよ…」

「ゆっくり?」

「うん、少しずつ…この境界線…消していこうぜ」


そう言った団蔵は、まるで自分に言い聞かせている様に見えた。


窓の外では既に、しとしとと雨が降り出していた…





少し冷めてしまったコーヒーを口に含む、

苦味しか感じない。

こんなに不美いコーヒーを飲んだのは、何時ぶりだろうか…





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